第四十六話「激しい現実が」 2
揺は、自分の身体を引きずるかの様に雨音の家まで向かった。
そして……。
気の所為か、身体が重いだけでは無かった。吐き気や目眩もやってくる。気付けば顔色も悪くなっていた。
ふらふらした身体は、倒れそう。もう限界と言ってもいいところ。
そんな事を、揺は耐えた。
「(くそ……、こんな痛み…)」
いや。
耐えているのではなく、無理をしていた。
その頃、雨音は。
「倉本さん、まだかな。待っておこうかなぁ?」
お茶を飲みながらぼやいた。今は揺を待っていた。
しかし、揺はなかなか来なかった。
と、思っていた。まだかなと思っていたその時
ピンポーン。
呼び鈴の音がした。
雨音は「はーい」と言いながら、玄関へ向い、扉をあけた。
「! 倉本さん!」
雨音は驚いた。
自分の視界に入った揺の姿。
今、虹ノ空色町は大雨が降っているらしい。そこで揺は雨に打たれ、びちょぬれになっていた。
雨音は、そんな揺を見て驚き、焦った。ドタバタと脱衣所へと行き、タオルをニ、三枚取り、揺にタオルを渡す。
タオルを渡すと、揺の口が開いた。
「……ありがとう…」
たった一言だけの言葉が聞こえた。
「倉本さん、どうしたの?」
「………」
揺は、事実がいえなかった。
桜花の突然の死。
揺の病気。
手術をする事。
真実。
全てが、いえなかった。
いや。
言えるが、怖くて言えなかった。
それだけではない。
さっきも考えていたことだが、今、辛い思いをしている雨音に、更なる辛さを与えたくない。
そんな理由もある。
それに、桜花が死んだのがもし雨音の所為となれば、雨音はまた、自殺を、してしまうかもしれない。
だから、揺は全て……。全てのことがどうしても言えなかった。
「……くら…もと…さん……?」
恐る恐る、雨音は声をかける。
が、揺の反応はこれっぽっちもなかった。黙ったまま。
「…アタシ……帰る…」
「えっ」
「ごめん……」
フラフラしながら、揺は病院へと向かった。そんな姿を、雨音は心配そうに、切なそうに見つめていた。
――私は……倉本さんの力にはなれない……。
分かってるよ。そんなことは――。
雨音は玄関の扉を閉めた。
――次の日。
ピピピピピピピピピピ! ……カチ。
目覚まし時計を止めた。それは雨音。
「ふわ……ふわぁああ…」
珍しく早く目が覚めた雨音。布団から出て、ベッドから降りた。
そして制服へと着替えた。
学生鞄を持って、下の階へ降り、朝食を済ませ、学校へと向かった。
「(よーし! 桜花ちゃんに謝らなきゃね、昨日のこと)」
桜花が、突然の事故で突然の死を知らない雨音。ルンルンと通学路を通る。
虹ノ空色町学園高等部女子部 校舎前
「(今日もいじめられるんだろうけど、大丈夫。私には心強い仲間がいる…!)」
いじめられる。ということは、雨音の経験上分かり知れた事。
ここ二日三日程学校を休んだが、きっと大丈夫だろう。桜花がいるのだから。
そう思っていた。
それは“桜花の突然の事故死”を知るまでのことだった――。
雨音は学校に足を踏み入れた。その瞬間……
バシャァア!!
「……」
雨音の身体に水が大量にかかった。お陰で服がビチョヌレだ。
「バーカ!」
「最低っ!」
「学校来んな!」
「消えちまえ!」
「人殺し!」
他色々いわれた。
その場で、雨音はパタン…と座り込む。
「ひ…とごろし……?」
『最低っ!』
「……」
『学校来んな!』
「……」
『人殺し!』
「わ……たしが…ひと…ごろ……し…?」 |