第四十五話「激しい現実が」 1
桜花は、そのまま息を取り留めた。揺の側で。
医者の話によれば、桜花はやはり猫を助ける為にトラックにひかれたとの事。
その時の桜花はかなり焦っていたらしく、猫を助けること以外、何も考えてなかったらしい。
この事を今知っているのは、揺と、医者だけ。
桜花の両親にも知らされているかどうか、分からない。雨音はまだ知らない。
後日、桜花の葬儀がある。揺はまさかこんなことになるとあ思ってもなかった。
「くそっ……。桜花、ごめんな。誕生日祝いしなければよかったよ……、こんなことになるんなら…っ……。! そうだ。雨音。雨音に教えておかないと……」
ぶつぶつぼやきながら揺は携帯を取り出す。携帯を開くと画面には「不在着信」と言う文字があった。
数は数件。揺はカタカタと手を震えさせながら不在着信の内容を開く。
不在着信の内容は
『水音雨音
2/19 ○時×分
水音雨音
2/19 ○時×分
水音雨音
2/19 ○時×分』……。
全て雨音からの着信。
その内容を見た揺。携帯をグッと力強く握り締める。
何故気付かなかったのだろう?
簡単なこと。マナーモードにしていたから。
マナーモードとは着信音は聞こえずに携帯がぶるぶると震えるだけのもの。
揺はずっとマナーモードに設定していた。通常モードにせずに居た。
「くそっ……、くそっ……なんで…………っ」
今の揺から出る言葉はなかった。
後悔していた。
外出したこと。
誕生日祝いしようとしたこと。
雨音を探そうしたこと。
これら全てを、揺はかなり後悔した。
しなければよかったと思うしかなかった。
しかし、後悔しても桜花は戻って来ないということは、揺は分かっている。
それでも、後悔してしまう。
プルルルルル……。
電話の音。着信音。携帯の画面には『水音雨音』という文字。
電話をかけたのは雨音だった。揺は即刻電線に出る。
「み、水音!?」
『倉本さん。ごめん、勝手に店出ちゃって……』
「……いや、いいんだ。出ても………。水音の所為じゃないから」
『え?』
「!(しまった…)」
うっかり出てしまった。
『水音の所為じゃないから』――。
言ってはいけないことだったのかもしれないが、思わず出てしまった。
揺は誤魔化した。『なんでもない』、と。
これでなんとかなるかと思っていた揺。『そっか』、と返事をする雨音。揺はほっとなる。
――もしも、桜花が死んでしまったことがバレれば、大騒ぎになるかもしれない。
雨音なら言わないと思う。
そういう問題じゃなかった。
現に辛い思いをしている雨音。そんな雨音に更なる辛さを、揺は与えたくなかった。
だから必死に言わない様、雨音と会話する揺。
焦っている様子もバレない様にする。
「み、水音……今、何処に居る?」
『え? 家だけど?』
「分かった。今家行くから…」
『? うん、いいよ。着替え取りに来るんだ?』
「……ああ…。じゃあ、来るから…」
ピッ。
会話し終わったので、揺は携帯のボタンを押す。
そして病院から出て走り出した。雨音の家まで――。 |