第四十三話「少しの会話」
何処からか、声がした。
その声を揺は訊いたことのある様な、ないような。桜花もだった。
声は何処から聞こえるかと言えば、頭の中に響いてくる。
少しだけ不自然な感覚だったがだんだんと慣れて来たらしい。
「……誰」
小声で揺はそう訊いて見る。声の返事は
『まあまあ落ち着きなよ、揺と桜花』
だった。
何故自分たちの名前を知っているのだろう?
何故呼び捨てているのだろう?
何故自分たちを知っているのだろう?
何故声がぼんやりとしか聞こえないのだろう?
疑問は沢山あった。言いきれない程。
いちいち気にしてちゃきりがないと思った揺は、話しかける。
「お前、名前は?」
公共の場だ。大声で言うのもなんだから小声で言う揺。桜花も小声で言うことにしている。
『僕? 僕の名前? そうだなあ』
名前を名乗るのに迷っている声。続いて桜花が
「自分の名前に悩むのはおかしいと思うわ」
そう言うと声はニヤリと笑うかの様に言う。
『僕は、ユウでいいんじゃないかな』
と。
揺と桜花は『何がいいんじゃないか、なのだろう』と疑問を持つがあえて気にせずに次の話へ進もうとする。
だがその声は話しを進ませようとせずに。
『雨音の場所、知りたい?』
「「!」」
驚く揺と桜花。
「あ、雨音の居場所? ユウ……だったっけ。知ってるのか?」
「勿論…。居場所だけじゃないよ。雨音のことも揺のことも、桜花のことも全部、知ってる………」
ユウがそう言うと、揺と桜花はシーンとなる。台詞を言った時ユウの表情は少し不気味になっていた。
これには特に意味はないが、とにかくシーンとなる二人。
それだけじゃない。
“ユウ”という少年が何者なのかもよく分からない。
ただ会話を続けていた。
『おっと、それじゃあ僕はこれで失礼するよ。じゃあね』
そう捨て台詞を言うと、ユウはさっさと何処かへ去って言った。
一体何者だったのだろう。
揺と桜花にはそのことしか心になかった。
あまり気にしないほうがいいが気になるものは気になるで仕方なかった。
「………っ! 桜花、早く雨音探さないと!」 |