第三十六話「自殺」 5
何故か、雨音は寂しくなってそっと涙がポロリ、と落ちてゆく。
泣いていた時だった。
ザァアア!!
突然だった。かなりの大雨が降ってきた。
その雨は虹ノ空色町では始めての大雨。今までこんな大雨来たことがない。
が、『虹ノ空色町』の名の意味は
『雨あがりに虹が空に浮かぶ』。
と言う意味で『虹ノ空色』。
雨が降るなんて、しょっちゅうあることだった。でもこんな大雨は振った事がなかった。
硝子窓から見える雨をじーっと見つめる雨音。
何故見つめているかと言えば、外に居る者達が
『うわー雨!! やだ!!』。
『どうしよー。あたし傘持ってないよ』。
『俺も持ってない』。
『やば! あたし服ぬらしたり汚したりしたらお母さんに怒られるんだよ!』。
『私も』。
『俺もー』。
『雨かよー。最悪じゃん』。
『本当』。
『でも虹ノ空色町って雨振るのしょっちゅうだけどさ、こんな振ったことあるっけ?』。
『ああ、たしかに』。
『でもさー、振るとなんか迷惑』。
『はは!! たしかにー』。
『雨……。まったく! 最悪。今日は野球の試合なのにねぇ?』。
『うん。そうだよおかあさん。雨の所為で台無しだ……』。
『せっかくあんな練習したのにね』。
『うん……』。
『お母さんがなんとかしたげるから! 雨なんてどうもないわよ!』。
『うん、そうだね…!』。
『ちょっと! せっかくのデートが最悪じゃないのよ!』。
『うぜー。なんで振ってくるかな』。
『嵐寸前の雨じゃないのよォ〜!』。
等、色々雨の悪口が雨音の耳に入り込む。
家は何処も開いて居ないのに、どこか隙間から聞こえてくる雨の悪口。
まるで――。
雨音は悪口を色々言われている、そんな雨を見ながら
『私と……同じ…?』。
とぼやく。
「貴方……、私と、同じなの…?」
意味の分からないことを言い続ける雨音。
だがこれは意味分からなくなかった。
悪口を言われている雨を見る雨音は
“私と同じなのね”。
そう雨に言い伝えている様な事。
それに同じ『雨』。心が通じているのかもしれない。
雨音は、雨を見ながら、既に零れていた涙を更に流す。
「同じなのね。同じ“馬鹿にされている者”なのね??」
ザァアアア……!!
「同じなのよ、きっと。私と貴方は同じ。
互いに触れることは出来ないけれど、会話できないけど。“姿”は見えているのよ。貴方は“ここ”に居る。
貴方はここに居て動物たちの役にたっているの。雨がふれば貧しい国の人たち、生き物たち。水が飲めていきていれるの。
貴方はここにいればいいのよ。居るだけでちゃんと人の為になっている。
そして……ここに居場所が――」
ザァアアアアア……!!!!!
雨音が『ここに居場所がある』。そう言うと雨がさっきより多く降り始めた。
きっと、喜んでいるのだろう。
「――よかったね。居場所、できて」
笑顔で雨に言った。こんなことをしたら、他の人には笑われてしまうかもしれない。
雨音はそう思っていたが、なんだかどうでもよくなったと思いながら会話したとの事。
それだけじゃない。
“雨が喜んでくれればいい”。
その思いもあった。だから、雨音はこう言えたのだろう。
自分が始めて誰かの役にたった瞬間。
「これからはここが貴方の居場所よ。でも……、私は居場所がないの。貴方はあるの。だからがんばってね…」
涙を流しながらぼやいた。
そして川原。
雨音は、人影が全くなさそうな川原の横あたりに居た。
そこは崖になっていて、森っぽくなっている。
ここで何をするか。そんなの雨音にも誰にも分かっていることなのかもしれない。
「……さようなら――」 |