第三話「いじめから助けてくれた“初めての友達”」
「ちょ……古……河…さん、風樹…さん…秋背…さん……。一体なんなんですか………? 屋上でわざわざ話さなくても…教室でもい…」
「っさい!!」
と都子は雨音に怒鳴る。雨音は「ひっ…」と声をあげる。その声を聞いた都子の後ろに居る空来と麻子はくすくす笑っている。
雨音は三階に繋がる階段へ行こうとする。
そしてその階段と屋上の間にあるドアノブに触れる事すら出来ない。何故なら都子と空来、そして麻子の三人組に囲まれているからだ。
もう雨音はこの状況から逃げられない、そう思った。とにかく変な事だけはされないように願う。
ひたすら雨音は願い続けた。だが、もう既に「変な事」――“いじめ”をされかけている。
というかもう屋上に呼び出しされた時点でもう“いじめ”は始まっている。
雨音は物凄く焦っている。
「………あの……私用事が…」
雨音は言った。今言った事は“ウソ”だ。ただこの“いじめ”から逃げ出したくてそう言っている。“いじめられっ子”の誰もが考えそうな事。
すると都子が
「“ウソ”は駄目よねぇ? 本当は用事なんかないんでしょ? 知ってるわよ!」
この“いじめっ子”から逃げ出そうとする、雨音の作戦は失敗した。「もう駄目だ!」、雨音は思った。
「ちょ…本当に用事があるんです!! ウソじゃありません!!」
作戦が失敗してしまったが雨音はまだその“ウソ”を言い張る。必死に…。
すると麻子が
「アンタの作戦なんかバレバレなのよ!! 逃げようったって無駄!! 転校して三日目のクセに!!」
そう、実は雨音は虹ノ空色学園に転校してきてからまだ三日という数日しかたってなかった。なのに今日転校してきたばっかの揺と仲良くしているから、いつも在る“いじめ”がさらにひどくなる。というか一番の“いじめっ子”に目を付けられただけ。
するとおびえた声で雨音は“いじめる理由”を聞き出す。
「あの…なんで“いじめ”なんてするんですか…?」
この質問の返事は空来が「そんなの決まってるじゃない、あんたが気にくわないからよ!」と返す。
それを聞いた雨音は「――え…?」と小声で呟く。その表情を見た都子、空来、麻子は「あははははははははっ!!」と同時に大声で笑う。
「――おい!! お前等!!」
「「「!!?」」」
その声に都子、空来、麻子は驚く。雨音は「………あ……――」と呟く。
雨音の視界に入った者の姿、それを見た雨音は少しほっとしてうれしそうな感じを現す。その雨音の顔を空来は目にしたが、目の前に“ある人物”が居るから何も言えない。
“そのある人物”とは……――
「よ……う…? ……揺!?? どうして屋上が…?」
実は今屋上にあがってきたのは揺だった。だから雨音はうれしそうな顔をしたのだ。
雨音が屋上に呼ばれたのが分かった理由を訊かれた揺は答える。
「教室で読書してたら廊下側の窓から水音がコイツらに無理矢理つれていかれたトコを見た」
――と。その揺の台詞にさっきまで雨音をいじめてた“いじめっ子”の三人組は「うっ…」と逆らえない状況に入っていた。
「で? お前等はなんで水音をイジメてた訳? コイツがお前等に何かしたのか?」
“いじめっ子”の三人を睨みながら揺は質問する。三人は「ご…ごめんなさいーー!!」と質問に答えず謝っただけで屋上を去る。
「ありがとう…倉本さん」
雨音は揺にお礼を言う。小声で「別に…」と揺は呟いた。
なんとか“いじめっ子”から逃げられた雨音。それを助けたのは揺。
雨音はなんだか嬉しく感じた。そして二人は教室へ戻る。
――放課後、午後六時 全ての授業が終わり、家の近い生徒達は家に帰り、寮が帰る場所の者は寮へ帰る。
“虹ノ空色学園”は有名だから初頭部から高等部まで寮がある。
雨音と揺は家には歩いて帰れる距離なので、家まで帰る。
「ねっ、倉本さん。一緒に帰らない?」
と、帰ろうとする揺に雨音は後ろから声をかける。
その雨音の声に気付いた揺は後ろを向き
「ん……別にいいけど……」
OKした。雨音は嬉しい表情をする。雨音にとって揺は“一番の友達”、そう思い込んでいる。
だがその影で雨音を憎む者も居た……。
「何よ水音の奴!! やっぱムカつく!!」
「へらへらしちゃってさ!!」
「もうちょっといじめときゃよかった!!」
昼間の“いじめっ子”の三人組がいつも通り 都子、空来、麻子の順番で雨音の悪口を言う。
すると都子が
「……この手も有りよね…? こうしてやろう!」
そういうと、その三人組は下駄箱がある場所まで行く。そして雨音の下駄箱を開けた。
「――くすくす…痛い目にあうといいわ!! 水音 雨音!!」
と、都子は言う。その後ろで空来と麻子もくすくす笑っていた。
――その頃、雨音と揺は家に向かって帰っていた。
空はもう夜空へと変わっている。綺麗な沢山の星、その中心に輝いている女王的存在の月。
暗い夜空になっていても、月と星が出ているからまだ明るかった。
雨音と揺は会話しながら帰り道を歩いている。殆ど雨音が揺に質問をしている。
「倉本さんって前の学校何処?」「前の家って何処?」「好きな食べ物、嫌いな食べ物は?」
「好きな科目、嫌いな科目は?」等との質問。揺は全てそれに答えたらしい。
すると雨音が「倉本さん、趣味は?」と揺に訊く。
「……――と…」
「え?」
一応答えたがその声は凄く小さな声だった為、雨音は上手く聞き取れなかった。改めて揺は普通の声で言う。
「“星”……見ること……かな…。そういう水音は?」
「自分も質問しよう」と思った揺は、雨音に訊く。
「私……? ……私も実は“星”、見るのが好きなんだ…。同じ…だね」
偶然かもしれない、二人は“星”が好きなのだ。お互い喜ぶ。そして次は“星”の話しに入る。
「――あ、喋ってる間に家についちゃった…ね?」
気付けばもう雨音の家の前。喋ってる間についたみたいだ。
すると雨音が「倉本さんの家ってどの辺り?」と訊く。揺は「アンタの家の隣だよ」、と返す。
それを訊いた雨音は少々驚く。家が隣というのは逢いたければいつでも逢えるようなもの。雨音は嬉しそうに
「家…隣だったんだ…。いつでも逢えるね…」と呟く。次に揺が
「あ、そうだ水音、明日、一緒に学校行かないか?」
と雨音に訊いた。雨音は「え?」と小声で言う。――いや、吃驚している。自分から誘う時ならあるが断られてるのがいつもの事な雨音だ。
だから「一緒に学校に行かないか」、と誘われたんだ。嬉しくてたまらない表情を雨音は出す。
少し間をあけ、揺が
「駄目…か?」と言う。雨音は一旦眼を閉じ――
「もっ…勿論だよ! 明日絶対一緒に行こうね!」
大声で言った。その声は少し近所に響いているかもしれない。だが雨音は全く気にせずに出している。
少し早歩きで揺は自分の家の鍵をあけ家に入る。こう言いながら…。
「……じゃ…また明日な……雨音…」 |