第二十五話「久しぶりに」
「倉本さん、色々話聞いてくれてありがとう」
雨音は言った。
「どういたしまして。水音こそ本当の事話してくれてありがとうな」
揺も言った。今二人は病院の玄関前に居る。
雨音はちょうど帰るらしく、そこを揺が見送るところ。
あの後病室でも色々話したらしい。お陰で雨音は少々楽になる。すっきりした感覚だった。
『じゃあね、倉本さん。また』、そう言って雨音は病院を出て家に帰ろうとした。
「……雨音、無理…するなよ…?」
ぼやきながら振り向いて病室へ戻ろうとしたその時。
「揺!」
「! 桜花…?」
後ろから誰の声がしたかと思えば、それは桜花の声。
揺の親友である香咲 桜花だった。笑顔で嬉しそうに揺と桜花は話し合う。
「久しぶり! …元気に…してた……?」
「ああ。してた。桜花は?」
「あたし? あたしは元気よ。相変わらずね。揺」
「桜花もな」
次に『アハハハ!』と二人は声を出して笑う。
周りの目線は全く気にしないでただ楽しそうに笑うだけ。
ここじゃなんだから病室へ戻る揺と病室へ行く桜花。
そして病室。
「そういえばさっき……水音さんでしょ? さっき居たのは」
「そうだよ。久しぶりに会ったよ、水音とは」
「そっか……。あたしは…」
「喧嘩、してるとこなんだろ?」
「!!」
『なんで知ってるんだろ?』。そんな目で揺を見る。
揺は『水音から聞いたよ』と言った。桜花は『なるほど…』と返事をする。
「水音、言ってたよ。『早く桜花ちゃんと仲直りしたい』って……」
「そう…なんだ……。あたし知らなかったよ。水音さんがそんな風に思ってたなんて…。悪い事しちゃったかな?」
悲しそうな表情で言うと揺は『悪いのは桜花じゃなくて都子だ…』と優しく言う。
桜花は『そうだよね…』と言い返す。少々空気が重くなった感じ。
「! あれ? 揺、これなぁに?」
「ああ、これ? 水音から貰ったクッキー」
「へぇ…。水音さんって料理上手いのね」
「一人暮らし……らしいからな……。料理も家事も何もかも、全部一人でやってるみたいだよ」
「そっか……(そんなこと知らなかった……)」
何時の間にやら雨音のことの会話になってしまっている揺と桜花。でも雨音は二人にとって“友達”。だからついつい話してしまう。
その頃雨音はくしゃみをしていた。
誰かが噂してるのかな? と思う雨音。でも本当は違った。
本当は噂ではなく“雨音のことの話”だった。けれどこれも噂の一部かもしれない。
「水音は……さぁ…アタシが来るまでと桜花が友達になるまで独りだったんだって……」
突然揺が言い出す。
「独りで一生懸命頑張って、無理して……。それでも立ち直って学校へ行ってる……。凄いよな、水音は……。
その上幼い頃に両親を亡くしてしまって……。多分、かもしれないらしいんだけど……。
亡くなるといわれる前に両親が離婚続きだったらしくて……。誰が本当の両親かも分からないんだってさ……」
長い台詞を揺は悲しそうな表情と声で言った。
桜花は何も言えなかった。
そのまま揺は雨音のことを桜花に話した。桜花はただ聞くことしか出来なかった。揺も……――。
――1時間後。
「あ……。すっかり話し込んじゃったね? 揺」
桜花は揺にそう言う。
「ああ、そうだな…。もう一時間くらいは話してる…な」
揺は返事をする。
「あたしそろそろ帰らなきゃ……」
「見送るよ」
「いや。大丈夫! 揺は休んでなきゃね! 久しぶりに沢山話したね。早く治るといいね、怪我。そして“アレ”も……――」 |