第二十二話「揺に出逢う」
雨音はそのまま走り続けた。
大体のことは分かっていた。いつかこうなるという事を。
何時もいじめられていて、逃げ出している。勇気のない自分が大嫌いになった。
「……そうだ…、倉本さんのところ……行こう……」
雨音はぼやいた。
「行っても…話してくれるかな……?」
続けていった。けれど今は午前中。学校の制服を着ている。
流石にこの服装だと何かとまずい気がしたので雨音は一旦家に戻って着替えた。
手ぶらで行くのは失礼かな…と想い、雨音は素早く手作りのクッキーを作って、それを出かける時用の鞄へ居れた。一応、飲み物も入れておく。
「これで……いいかな……?? うん。大丈夫」
勇気を出した雨音は玄関へ向い、靴を履いて外に出ると病院へ向かった。
昨日、揺が居る部屋の前まで行ったのだから、今日こそは中に入れる。そう思った。
そして病院。
「失礼しました」
と言いながら一人の看護婦が出て行った。雨音は「なんだろう?」と思った。
その看護婦はすれ違うと「こんにちは」と挨拶をしてきた。雨音も「こんにちは…」と暗い声で返事をした。
「失礼しまーす……」
ドキドキと緊張しながら雨音は扉をカチャっと開けた。
「! 水音!」
「……くら……もと……さん…。元気にしてた……?」
「………うん…まあ…」
『元気にしてた?』。雨音がそう聞くと揺はテンションが少し下がった。
そのことに気付き、雨音は「どうしたのかな」と思ったが聞かないでおく。もしかしたら気を使っているかもしれないからだ。
「…………。ごめんなさいっっ!」
「え…?! 何…? どうしたの…?」
突然謝られた。揺は驚く。
「…だって……、倉本さん怪我したのは私の所為……。だからっ…謝らないといけないと思って……!」
「………そっか…。でも…あれはアンタの所為じゃないと思うよ」
「え…? どうして?」
自分の所為じゃないと言われ、雨音は少し……。かなり驚いた。
今まで攻められていたのに、本人からは「アンタの所為じゃない」と言われたんだ。そうとなれば誰だって驚く。
「水音は……、本当に自分が押したと思う?」
揺は訊いて来た。
「……おもわ…ない……」
雨音は答える。
「だろ?」
「うん……」
「他にあの時の寸前に感じたっていう事は?」
「……あ…。誰かが……後ろ…。背中押してきた感覚があった……」
あの時、揺を怪我する寸前のことをよく考えてみた雨音。
よく考えると、あれは躓いたりして転んだんじゃない。誰かに押されて転んだ。
その事を雨音は思い出す。そして揺に話す。
「やっぱりな……」
「え? “やっぱり”ってどういうこと…?」
「あの時な…水音の通った道に一本の電柱あっただろ? アタシもそこを通ったんだ。
そして通ったら古河達が居たから、また水音に何かするんだろうって思った」
「!」
――嘘……。倉本さんは全部全部知ってたの……? なのに言ってくれなかったの……?
古河さんたちをとめようとしなかったの……――?
雨音は混乱してきた。
『あの時古河達が居た』。そう思えば思う程混乱してきた。やったのは、都子達なのに攻めてくる。
だから本気で自分の所為だと想いこみ、自分も自分も責めていた雨音。
すっきりした様なしない様な。そんな感じだった。
「じゃ……じゃあ……っ。倉本さんは知ってたの!? 古河さん達の考えた事とっ…。私がやったわけじゃないって事……を!」
「……ああ……知ってたよ…。ごめん……」
「っ……!」 |