第二話「転校生は…!?」
「(――え? 嘘……なんで? あの人、転校生だったんだ……。てっきりどこかのクラスか別の学年かと思ってたのが………転校生!?)」
雨音は一人心の底で叫ぶ。すると担任が
「倉本の席は、水音の隣だ」
そう言いながら雨音の座ってる席の空いてる席を指差す。雨音は心の中で「えーー!!!???」と叫んでいた。
だが廻りの視線や口から出る台詞は……
「なんだ…水音の隣かよ」
「あんな子よりあたしの隣になる方がいいのに」
「大体水音さんって長年のいじめられっ子なんでしょ?」
「その内にらまれてくるわよ…」
「にらまれろって感じぃ〜」
と言ういつもと同じ台詞だけ。その台詞を言う者は雨音にわざと聞こえる様に言っている。その言葉を耳にした雨音は今朝と同じ様に暗くなる。
――ガタ……。
倉本 揺は言われた通りの席に着く。雨音は横に来た揺に反応する。
「あ、宜しくね。揺さん。私の名前は水音 雨音。今朝、会ったよね?」
と、挨拶をした。だがその揺の反応は………。
「………アンタ……誰?」
「――え……? ちょ……あの…今朝会った…んだけどな…。覚えてない?揺さん」
「初対面に名前で呼ばれる覚えはないけど?」
「あっ…」
「初対面に名前で呼ばれる覚えはない」、と聞いた雨音は「そっか…」と心の中で思う。
「(だよね……初対面で名前で呼ばれるなんて嫌だよね…)
あ、ごめんね、初対面なのに名前で呼んで……。じゃ、倉本さん、宜しくね。それから私の事は好きに呼んでね」
雨音は改めて揺に挨拶をする。そして揺は「宜しく…」と小声で言った。
「じゃ……アタシは水音で……」
「あ、うん」
二人はお互いに挨拶し合う。仲良くなれた感じがして雨音はうれしそうな顔をする。
“友達”が出来たのなんて初めてなのだから 雨音にとって一番うれしい事。
「……何よ、水音のクセに……!」
と、一人の女子 古河 都子。
「生意気にも程があるわよ…!」
と、もう二人目の女子 風樹 亜来。
「ちょっと|痛い目にあわせてやろうか?」
と、三人目の女子 秋背 麻子。
実はこの三人、雨音をいじめてる三人組。だから雨音を三人で睨む。だが雨音は視線に気付いてない。すると担任が
「さ、皆静かにしろよ〜。授業始まるから。あぁそうそう。水音は倉本に教科書見せてやれよ〜」
と言った。「倉本に教科書見てあげろ」といわれた雨音は素早く揺の席に自分の机をくっつけて教科書を開き見せる。
「はい」
雨音に声をかけられたが揺はだんまりのまま。実は揺、意外と無口な方なのだ。
「……(倉本さんって無口だったんだ…。なんか今朝会った時と人が違うような…)」
と、雨音は揺を見つめながら心の中で思った。
――しばらくして、揺は雨音の視線に気付く。そして小声で
「何?」
と言う。雨音は見つめてた事に気付かれ少し焦る。
とりあえず無視してノートに黒板に書いてある事を写し始める。
――授業が終わった。雨音は「ふぅ…」と溜息をする。
「あ、あの…倉本さん」
「??」
「昼休み、校内案内してもいい?」
「……いいんじゃない?」
「じゃ、昼御飯食べ終わったら教室で」
雨音は揺にそう言い、さっさと席に着いて弁当を広げる。そして食べ始める。
今は十二時三十分。昼休みは十三時から始まる。雨音は急いで食べた。
――十分後、雨音は弁当を食べ終わった。弁当箱を片付け、揺が居る空き教室へ行く。
「えっと…倉本さん待った?」
「……別に……」
と話しかけた雨音に揺は言う。雨音はとりあえず校内案内。
「ここが保健室。こっちが理科室で……。あれ? どうしたの?」
「いや…ただ――」
「ただ?」
「虹ノ空色学園って、アタシが前に通ってた学校より少し小さいな、と思って…」
「揺が前に通ってた学校」――、雨音はその学校を知らない。というか聞いてない。だが雨音はきっと「答えてくれない」と思っている。
そんな事は気にせずに雨音はさっさと校内案内を済ませる。揺は多少焦っていた。
校内案内が終わり、雨音は椅子に座り「ふぅ…!」とうれしそうに溜息をつく。普通なら疲れるだろう。
逆に案内された揺は疲れ気味。雨音の素早さに着いて行けずに疲れているのだ。
すると雨音の廻りの女子の都子、空来、麻子の三人組が雨音に近付き声をかける。
「ちょっといいかしら! 水音 雨音!!!」
いつもどおり最初は都子が言った。その次に
「あたし達と屋上に来てくんない?」
空来が言う。そのまた次に
「話したい事があってさぁ…、正確には質問?」
麻子が最後に雨音を睨みながらそう言う。三人同時に言うものだから雨音は
「え? な…何?」
とおびえた声で呟く。三人は同時に言うだけでなく睨んでも居る。
すると都子が
「バン!」と物凄い音をたてた。
その音は、雨音の顔近くの壁を叩いた音だ。
「きゃっ……」
雨音は小声で呟く。というか吃驚している。
「『きゃ…』じゃないわよ!! そうやって可愛子ぶっちゃって!」
都子の台詞に雨音は少しショックを受けた。続けて空来がこう言う。
「そんな悲鳴あげたって倉本さん来るわけないじゃん!!」
と。その次は麻子が「そうそう!」と空来に賛成した。雨音は少々焦って廻りを見回す。だが廻りに誰も居ない。
心の中で雨音は「大声だそうかな…」「でも誰も来ないし…来る筈ない…」等とこのいじめから逃げる事を考えていたのだ。
「さっさと屋上きなさいよ!!」
都子は雨音にキツく言う。雨音は「は…はいっ…」とビクビク震えた声で返事をする。
「――…(水音……?)」
教室の窓側、揺は読書をしていた。そして自分が今居る席は一番すみから二番目。
その反対側――廊下が見える窓を見ていた。そう、雨音があの三人組にいじめられているとこを揺は見てしまったのだ。
――そして屋上、雨音は反抗出来ず、そのまま着いていってしまう……。
屋上――“いじめっ子”がいつもいじめている“いじめられっ子”をよく呼び出す場所。
それを雨音は知っている、――過去に何度か在り、今、恐怖心を抱えている。
「あ…あの…古河さん、風樹さん、秋背さん………? えっと……なんですか? 屋上なんかに呼び出して……。“内緒話”――ですか…?」
雨音は質問する。都子は返す。
「ほんっと『緊張感』ってモノがないのねあんたは!! これから何するかは……今体験するといいわ……」
「え……――?」 |