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超電脳のユニバック 作者:@IngaSakimori

第三章『世界で最初、と呼ばれなかった者たち』

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第三話『英国的一夜一夜物語』(3/3)

「僕の名前はフェランティ・マーク・ワン。
 イギリスのフェランティ社が造りだした世界で最初の商用コンピューターだ。
 この南多磨高校では夜制の生徒として通っている。
 フェランティと呼んでほしい。どうかよろしく」
「……私は」

 紳士じみた上品さで差し出されたフェランティ・マーク・ワンの右手を、しかしユニは取ろうとしなかった。
 その瞳は迷っていた。ゆらゆらと揺れ、傍らにいる現人を見た。

(……なんだろう?)

 ユニは何を迷っているのか、その理由が津瀬現人にはわからなかった。
 ただ、少なくともこの状態でユニを放っておくのは良くないと、彼は考えた。

「僕は津瀬現人だ」

 割り込みをかけるように自分の右手を差し出すと、現人はフェランティと握手を交わした。
 驚いたようにユニが目を丸くする。ニューニが感心したようにヒュー、と息を漏らしている。

 そして、フェランティ・マーク・ワン自身は、特に驚いた様子もなかった。

「よろしく、現人くん。女性を適切にサポートをできる人は、紳士だと思うよ」
「別に深い意味はないけれど。
 ユニ……その、ユニバック・ワンと僕は一応、なんていうか」
「ああ、ユニバック・(ツー)から聞いている。
 君は魂の次元でユニバック・ワンとリンクしているそうだね」
「あ、ああ。そうらしいんだけど」

 イギリス生まれだからきっと紳士的な相手なのだろう、と。

 そんな淡い先入観を抱いていた、現人の期待はあっさりと崩壊した。
 フェランティ・マーク・ワンは握手を受けた。しかし、まったく握り返そうとしない。さりとて、敵意を感じるわけではない。

「そうか……君が。津瀬現人くんか」
「………………う」

 ただ、心の奥底まで見透かそうとするような、黒い瞳で現人をじっと見つめるだけだ。

「それにしても、しっかりと挨拶してもらえないのは少しショックだね。
 ユニバック・ワン?」
「あ……え、と。その。はじめまして」

 たどたどしくそんなことを言いつつ、ユニは現人の背中に隠れてしまった。

(どうしたんだろう?)

 現人はそんなユニの様子を見て、弥勒零にはじめて会った時のことを思い出す。
 しかし、今のユニは恐れているわけではない。怯えているわけではない。

「えーっと……フェランティ……マーク・ワン?」
「ただのフェランティでいいよ」
「それじゃあ、フェランティ。ユニが少し困っているから、なんていうか。
 あんまりじろじろ見ないであげてほしいんだけど」
「それは失礼。下品な視線をむけたつもりはないんだけど」
「ほら、ユニ」
「……ウツヒト。手、握って」

 現人が挨拶を促すと、なぜかユニは自分の右手を差し出してきた。首をかしげながら現人が応えると、ぎゅっとかわいらしい握力が伝わってくる。

「ん、落ち着いた」
「まあ、ユニがそれで落ち着くなら」
「君たち2人は本当に仲がいいんだね。ヒトと顕現存在セオファナイズドなのに。
 もしかして、恋人同士なのかい?」
「な━━」
「違いまーす!!」

 さらりとフェランティはとてつもない質問を口にした。
 そして、現人が唖然としながら赤面する前に。ユニが頬を染めて下を向く前に。
 音速の間合いで割り込んだのは、ニューニだった。

「はい、フェランティ。ユニ姉様あんど現人さんとの挨拶はこれでおしまい!
 この2人はいろいろあって、魂の次元でリンクしていますが、そーいうのはありません!
 なぜなら! ユニ姉様が本当に大切に想っている相手は、実の妹であるワタシだけだからです!」
「ユニバック・ワン、そうなのかい?」
「別にニューニだけということはない」
「がーん!! 衝撃の事実! ワタシ、大ショック!!」

 オーバーアクションな仕草で頭をかかえるニューニに現人は溜息をつく。
 相変わらず騒がしい。そして、そんなニューニの振る舞いは自分たちの前だけでなく、フェランティという夜制生徒をまじえても変わらないところから、筋金入りなのだと分かる。

(それにしても……夜制の生徒とこうやって話をするのは初めてだな)

 南多磨高校・夜制。
 かつては定時制と呼ばれていた、夜間授業クラスであるが、その生徒数は昼制に比べて勝るとも劣らないレベルである。

 夜制を選ぶ理由としても、必ずしも働きながら高校に通っているから、というわけではなく、純粋に日中の時間帯を別の活動にあてている生徒も多い。

(……どうしてか、外国人の生徒が多いっていうけど)

 遠い時代の全日制と定時制がそうであったように、両者の交流はほとんど無きに等しい。
 これは校舎の使用時間が昼制と夜制で厳密に分けられており、日が沈む頃になると昼制の生徒は強制的に退去させられるという事情もある。

 このため、運動部の練習時間などは強い制限がかかっており、わざわざ近隣の体育館施設まで移動して、夜間練習を行う例もあるという。

「……ええっと。それでフェランティ。僕たちを呼び出した理由なんだけど」
「ああ、そうだね。いい加減、本題に入らないと。
 僕は夜制の生徒だから、本来は━━そう、たとえ顕現存在セオファナイズドが関わっているとしても、昼制の問題には口を出すつもりはなかったんだけど」

 問題。フェランティはそういった。つまり、これから彼は何らかの問題に関する話をしようというのだ。

「ユニバック・ワン」
「……なに? フェランティ・マーク・ワン」

 凜とした声がユニに向いた。それを恐れるように、ユニは再び現人の背中へ隠れる。正確には、半身だけを現人の背に。片目だけで相手を見るように。
 津瀬現人の右眼にある単眼鏡モノクルを第二の目とするような位置に、ユニは体の半分を隠してしまう。

「君は狙われている。君を亡き者にしようとするものがいる。
 それは世界で最初の商用コンピューターだ」
「……えっ」
「ち、ちょっと待ってくれ」

 フェランティ・マーク・ワンは意味の通らない警告をした。少なくとも、津瀬現人にはまったく意味がわからなかった。

(なんなんだ、それ……?)

 ユニバック・ワンが狙われている。
 彼女を狙う相手は『世界で最初の商用コンピューター』である。

(そう呼ばれるのは……)

 もちろん、ユニ自身。そして、先ほど目の前にいる少年が名乗ったところでは━━

「くす」

 とはいえ、からかうように現人を見て笑ったフェランティの表情をみれば、現人が危惧している可能性は無いことがわかる。

「津瀬現人くん。混乱しているね」
「……当たり前だろ」
「世界で最初の商用コンピューター、ユニバック・ワン。
 そのユニバック・ワンを亡き者にしようとする者。それは世界で最初の商用コンピューターがいる。
 そんな話を、世界で最初の商用コンピューターである、この僕━━フェランティ・マーク・ワンがしている。
 さぞかし意味不明だよね……くっくっくっ、まるで僕がユニバック・ワンを狙っている、そんな説明になってしまう。
 君みたいに『世界で最初の商用コンピューター』で混乱したヒトは、過去にたくさんいたと思うよ」

 愉快そうに笑うフェランティ・マーク・ワンを見て、底意地の悪い奴だな、と現人は思った。
 ヒントを求めるようにニューニを見ても、彼女はあからさまに知らぬふりで口笛など吹いてる。

(……うざい)

 ユニバック・ワンの妹。
 すなわち、ユニバック・(ツー)の29号機は、こういうところも相変わらずだ。どうやら詳しい事情を知っているようだが、自分の口から教えるつもりはないのだろうか。

「……フェランティ。それは彼女(・・)のことでいいの?」

 そして、現人の背中に半分隠れたままのユニもまた、既に答えへ行き着いているらしい。
 何もわからぬのは現人だけだ。

(僕は何にも知らないんだな……)

 15歳なら無理もない。高校生なら無理もない。
 そんな慰めをかけてくれる大人はここにいない。ただ、無知で無力な少年が、顕現存在セオファナイズドの世界に両足を深く突っ込んでしまっている、その現実があるだけだ。

 今、この場には顕現存在セオファナイズドが実に三名。そして、ヒトたる存在は現人のみ。

 三対一。その孤立に、悔しさに少年は拳を握りしめることしかできない。

「大丈夫だよ、津瀬現人くん。僕は君を(なぶ)るつもりはない」

 とはいえ、英国の少年は意外にも早く種明かしをしてくれるようだった。

「これはつまり、名誉と主張の問題なんだ」
「名誉と主張?」
「君は空母というものを知っているかい?
 航空母艦。エア・クラフト(航空機)・キャリアー(運搬船)
「あ、ああ……」

 2085年の現在も海上における空母の覇権は失われていない。
 たとえ高校生の少年であろうとも、巨大で平たい甲板を持った核融合動力の艦艇について、いくつかのニュースを読むことはある。

「それはとても━━うん、そうだね。君の認知レベルに合わせると、だ。
 とても強い。空母はとても強いフネだっていうことも知っているね?」
「バカにしないでくれ。そのくらいは分かる。
 潜水艦とかもあるけど、一番強いのは空母なんだろ?」
「まあ、日本人なら海軍力に関する理解は、その程度でいいと思う」

 いちいちトゲのある言い方だった。
 もっとも、まだ悠久たる世界史の薄皮一枚すら学んでいるとは言えない高校生の少年に、英国が海軍力という概念に持つ思い入れの深さなど、想像できるはずもない。

「では、次の質問だ、津瀬現人くん。
 世界ではじめて空母を造ったのはどの国だろうか?」
「……え?」

 その質問は突然すぎた。
 現人は世界で最初の商用コンピューターについて考えていたのに、いきなり軍事クイズである。もちろん海軍のことなど、現人にはさっぱり分からない。

(……でも、京の奴ならすらすら答えるんだろうなあ)

 頭の中で憎たらしい微笑みを浮かべた悪友が、悠々と扇子を仰いでいる。

「……わからない。知ったかぶりは好きじゃない」
「賢明な態度だね」
「でも、フェランティ。君がわざわざそんな質問をするっていうことは、イギリスが答えなんじゃないか?」
「いや、日本なんだよ」

 えっ、と現人は意外そうに目を丸くした。
 そして、その瞬間を見計らったようにフェランティは第二の矢を放つ。

「でも、イギリスなんだ。世界で最初に空母を造ったのは、僕の国なんだよ」

 ニューニがこらえきれずゲラゲラと笑い始める。ユニは現人の背中に隠れたまま、不満そうに頬を膨らませている。

「……え、えーと?」

 そして津瀬現人にできるのは、苦し紛れにも似た質問だけだった。

「日本=イギリス……とでも言いたいのか?
 イギリスに占領されてた時代とかあったっけ? アメリカなら知っているんだけど」
「正確にはあるよ。
 日本の占領軍、つまり連合軍にはイギリスも含まれるからね……まあ、それはいいんだ。
 簡単に言うと、はじめて空母を造り『始めた』のはイギリスなんだけど、はじめて空母を造り『完成』させたのは日本なんだよ」

 フェランティは続けて、ハーミズと鳳翔という艦名を口にしたが、これは覚えなくてもいいとも付け足した。

「じゃあもう一度質問。
 津瀬現人くん、この場合はイギリスと日本、どちらが世界で最初に空母を造った国になると思う?」
「それは……どっちとも言えないんじゃ?」
「そういうこと。
『完成』した時点に重きを置くなら日本だけど、造り『始めた』時点を見るならイギリスになる。
 ただ、それだけの話なんだ。見る場所の違いさ。
 コンピューターにも同じような話があってね……はじめてパーソナル・コンピューター用に1GHzのプロセッサを出荷したメーカーは2つあるんだけど、その『発表』日時はほんの数日しか違わない。
 まして、実際の製品がユーザーに届いた日時……工場で組み立てられた日時……おそらくバラバラさ。
 どちらも世界最初と名乗っていいレベルなんだ」

 フェランティは|Pentium IIIペンティアム・スリーAthlon(アスロン)というプロセッサ名を口にしたが、再びこれは覚えなくてもいいと言った。

「ここまで話せば、津瀬現人くん。大体、想像がつくんじゃないかな?」
「……つ、つまり。
 ユニとフェランティ……そして、もう1人。
『世界で最初の商用コンピューター』と名乗っていいほど、近い時期に生まれた━━第3の商用コンピューターがいるってことか?」
「パーフェクトだね」
「そして、その第3の『世界で最初』がユニの命を狙っている、と……」
その通り(イグザクトリィ)、津瀬現人くん。
 ちょっとニューニ先生、あんまり笑っていないで。彼はこれでも真剣に考えているんだから」
「いやいや……これは失礼。
 本気で混乱してる現人さんの顔があんまりにもおかしくて……ひー。いひ、ひっひっひ……」
「……ニューニ、すこし笑いすぎ」

 笑いすぎて涙まで流しているニューニの様子に、ユニが厳しい声でそう言った。

「あぁん、ユニ姉様に怒られてしまいました!
 しかし、そこにいけない悦びを感じてしまうワタシの罪! ギルティ!
 ━━仕方ないので現人さん、代わりに罪深いワタシを慰めてください。赦しを与えてください。
 なるべくユニ姉様っぽく!!」
「お前さ、一回死んだ方がいいんじゃないか?」
「何ですかその言い方は! いくらなんでもひどいですね!
 ふぁっくとかさのばびっちとか、もう少し優しい言い方があるでしょう! これだから21世紀の若者は!!」
「ニューニ、すこしふざけすぎ」
「ううう、ふざけてなどいないのですが!
 ユニ姉様を悲しませたくないので、ここはお口にチャックするとします!! ああ、なんて健気なワタシ!!」

 指2本を使って、口元で×の字をつくりながら、ニューニは『この仕草、可愛いでしょう?』と訊ねるように現人を見る。

(知るかよ……)

 心底どうでもいいと。
 そして、心底可愛くないと思いながら、現人は場の空気を整えるように大きく息を吸い込んでみせて、口を開いた。

「なんとなくだけど、状況は分かったよ、フェランティ。
 とにかくユニは何者かに狙われている。だから気をつけろ。そういうことだな?」
「極限までシンプルに理解するならイエスだね。
 暗殺者(アサシン)の正体は彼女自身から聞くといい。僕などよりよっぽど詳しいだろうから、ね」
「……別に詳しいというほどじゃ、ないから」

 ユニはどこかフェランティ・マーク・ワンに対して苦手意識でもあるのか、正面から視線を交わそうとすらしない。

「ふふふ、嫌われているのかな、僕は」
「……その、聞いてもいいかな」
「いいとも、津瀬現人くん」
「ユニ━━つまり、ユニバック・ワンと君━━つまり、フェランティ・マーク・ワンは、その……なんていうか、コンピューターの歴史の中ではどんな位置づけになるんだ?」
「……津瀬現人くんは『コンピューティング史』の授業を受けているよね」
「ああ、そうだけど」
「その中に僕、つまりフェランティ・マーク・ワンの名前は?」

 無い、と答えようとして津瀬現人は一度思いとどまった。
 自分はコンピューターではないし、京のような抜群の記憶力があるわけでもない。
 ついでに言うならば、志保のように丁寧に教科書やノートにチェックを入れるタイプでもなかった。

「無かった……と思う」
「その通りさ。世界で最初の━━いや、違うな。最初期のコンピューターとして、ユニバック・ワンの名前が載っているだけ。
 そもそも、ENIACやEDSACのような有名人の方が、歴史的にも遙かに扱いが大きいからね。
 まったく妬けることだよ」
「その件について、分かったようなことを言えるほど僕は勉強できていないけど、つまり君ともう1人の誰かは、ユニほどには『世界で最初の商用コンピューター』として有名じゃないんだな?」
「まったくもって。その通り」

 妙に自嘲的なトーンでフェランティ・マーク・ワンは言った。
 あまり名声を気にするタイプには見えないのだが、それなりのプライドがあるのだろうかと現人は思う。

「そんなものさ。歴史上にどれだけのコンピューターが生まれたと思う?
 成功したコンピューター、失敗したコンピューター、名前すら世間に知られなかったコンピューター。
 ……軍事機密の元で闇に葬り去られたコンピューター」
「軍事機密?」
「いや、僕の国の話さ。これは覚えなくてもいい」

 三度その言葉をフェランティ・マーク・ワンは使った。

(言われたことを覚えるか、覚えないかなんて……こっちで決めることだろう)

 津瀬現人は反感にも近い疑問を抱いたが、それを突き詰めることはしない。今はもっと追求すべき本題があるからだ。

「津瀬現人くん。僕はこれでも幸運な方なんだ。
 最初の商用コンピューターとして、世界でもっとも知られているのはユニバック・ワンだけれど━━少なくとも僕の母国、イギリスにおいてフェランティ・マーク・ワンは十二分に広まっている」

 フェランティ・マーク・ワンは大切なものを抱きしめるように、自分の胸へ手を置いてそう言った。
 まるで乙女のような感傷的な仕草だった。

「こういうことはしばしばあるんだ。
 君の国、つまりこの日本でも多くの国産コンピューターが━━そう、欧米ではほとんど知られていないとしても━━名誉と共に記憶されているようにね」
「………………」

 正直なところ、津瀬現人にはさっぱり分からなかった。
 FUJICやFACOMといった和製商用コンピューター、そしてNEC PC-9800シリーズを筆頭とする百花繚乱の国産パーソナルコンピューターたちを彼はまだ学んでいなかったから。

「けれど、世界で最初の商用コンピューター3人……その最後の1人は母国であるアメリカですら、ほとんど知られていない」
「……それは。その、すこし……かわいそうだね」
「かわいそうというだけなら、まだいいのさ。
 そこにはおよそ名誉というものがない。不遇は苦悶に……届かぬ栄光は憎悪に変化するものなんだ。
 その顕現存在セオファナイズドが僕ではなく、ユニバック・ワンを狙っていることにも、ちゃんと理由がある。
 つまり━━」
「私が、もしいなければ」

 その時、ユニははじめて自分からフェランティ・マーク・ワンを見た。

「私、ユニバック・ワンが生まれていなければ。
 彼女が……バイナックこそが、世界で最初の商用コンピューターになっていた」
「ユニ……」
「……それは分からないけどね。
 君がもしいなければ、その時は別の歴史が……合衆国のコンピューティング史が、そして企業としてのユニバック史があったはずだから」
「ううん」

 ぷるぷると首を振る仕草は、突然の雨に濡れた子猫のようでもある。
 ユニは決意の光を瞳にたたえて、フェランティ・マーク・ワンを見つめる。

「これは本質的に私の問題。ユニバックの問題。
 エッカートとモークリーによって産み出されたモノ達の問題だから」
「そうか」

 フェランティ・マーク・ワンは何も言わなかった。
 傍らでは自分も自分も、という顔でニューニが笑っていた。

「ウツヒト」

 そして、ユニは津瀬現人を見た。

「ウツヒトはバイナックのことを知ったら、私を世界で最初の商用コンピューターじゃないって思うかもしれない。
 ひょっとすると、私を嘘つきだと思うかもしれない」
「そんなこと……」
「それでも、私はウツヒトと一緒にいたい」

 胸の中で確かにトクリ、と。
 強烈なものが鳴った音が、津瀬現人には聞こえた。

「私を助けてほしい、ウツヒト。私は狙われている。私は戦わなければいけない。
 だから……ウツヒトの力を貸してほしい」
「……当たり前だろ」

 15才の少年は右手を握手の角度で伸ばした。

「ウツヒト」

 世界で最初の商用コンピューター、その1つは少年の手を取り。

「私はとても嬉しい」

 愛おしむように。慈しむように、自らの頬にすりつけた。
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