挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
超電脳のユニバック 作者:@IngaSakimori

第二章『コンピューター・アーキテクチャを造りし者』

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

12/62

エピローグ『新たな敵意は来る』

 それから梅雨が来て、夏がその姿を現し始めた頃。

「はーい、はっじめましてー!
 ワタシが本日からこのクラスの副担任となりました、エッカート・モークリー・ニューニ先生でーす!
 よろしくよろしく~!!」
「はあぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁぁっ!?」

 今日から担任が増える、と里沙先生が日常の口調で告げた次の瞬間。
 学生の目には毒としかいいようのない、異様に体へフィットしたスーツを着て、現人達のクラスに入ってきたのはニューニだった。

「ちょ……え……あ、あれっ、ニューニだよな?」
「うん、そう」
「そうじゃなくて……」

 問いかけてみても、ユニは事前に知っていたのか、当たり前の顔をしてうなずいている。

「うむ、どうやらこれはお姫様の親族といった手合いのようだな」
「あれっ、あの人って……ねえ、現人。ニューニさんって、ユニちゃんの妹さんだよね?」
「いや……そのはずなんだが」

 面識のない京は当たり障りのない理解をしていたが、一度会ったことがある志保が問題だった。

(あのあと、姿を見せなくなったと思ったら……)

 現人はニューニがアメリカへ戻ったのか、あるいは全く別の活動で忙しいのではないかと思っていたのだ。
 ユニも何も言わなかった。だから、詳しく訊ねることもしなかったのだが……。

「ま、まさか教師になってやってくるなんて……」
「ねーねー、現人。ニューニさん、どうしてなの?」
「シホ。私の妹はとても優秀。
 優秀だから、とっくに飛び級で学校は卒業して、もう働いてる」
「あ、そうなのね! アメリカだもんね! そういうこともあるよね!
 もう、現人もそうなら教えてくれればよかったのに~!!」
「ぼ、僕だって今の今まで知らなかったんだよ……」

 明らかに無茶のあるユニの説明に、あっさり納得している志保の笑顔。
 頭を抱えたい思いと戦いながらも、人を疑わない奴でよかったと現人は安堵していた。

「おやおや~」

 ふと、気づくと、ダークブルーのスーツに包まれた豊満な胸元が目の前にあった。

「えっと、あなたは津瀬君、でしたっけ?
 副担任が自己紹介してるというのに、ずいぶん私語が多いですよねえ~。生徒としては、そういうのいけませんよ~?」
「………………そう、ですね。
 生徒としては、ですね」
「ええはい、まあ。そういうことで今後ともヨロシク」

 してやったりと笑うニューニと、降伏宣言するように溜息をつく現人。

「うむ、どうやら我らが日常はますますもって楽しいことになりそうだな?」
「ケイ、私もそう思う」
「みんな仲良く楽しければそれでいいもんね! 現人もそう思うでしょ?」
「まあ……確かにそうだけどな」

 京の悪巧みするような微笑みを。志保の太陽のような笑顔を。
 ユニの優しげなまなざしを。そしてニューニのからかうような目線を。

「……これが楽しいって言えるなら、な」

 それでも不快にはほど遠い感情に心を委ねながら、津瀬現人は右眼の単眼鏡モノクルへ指を当てた。

~~~~~~UNIVAK the zuper computer~~~~~~

 その日、その時の南多磨高校生徒会室。

「System/360にとっては不満な結果だろうけども、これはこれで良かったのかもしれないね」
「ええ、ハジメ様。原子力発電所のセキュリティを脅かすのは、私もやりすぎだと思います」
「彼女にとっては手痛い敗北……少しは頭を冷やしてくれるといいのだけれど」

 円卓を埋めるには、そこに在る影は少なすぎた。
 久礼一くれいはじめ古毛仁直こもに なおし。そして、つい先ほどまでそこにいたはずの弥勒零みろくれいは、何か思うところがあるのか、屋上に一人佇んでいる。

「さて、現状はこのような結果だ。
 その上で君に訊ねたいのだけど、自分がユニバックを……彼女たちを打倒できるという根拠は?」
「決まっているだろ」

 スピーカーから流れるのは、やや幼い感のある少女の声だった。
 もっとも、おとしやかさにはほど遠い。悪戯小僧をそのまま性転換させたような、無意味な自信に満ちあふれている。

「アタシこそが『世界で最初』だからだ」
「それは君の自称に過ぎないだろう」
「なんだと!? 訂正しろ! 自称じゃない! こ、ここっ、これは事実だだだだ」

 通信の輻輳と言えばいいのか、音声データによほどのエラーが含まれているのか、少女の声は時折、遠い昔に『音飛び』と呼ばれたような調子で、久礼一くれいはじめ古毛仁直こもに なおしの耳に届いた。

「……ハジメ様、こんな不安定な顕現存在セオファナイズドで大丈夫なのですか?」
「彼女の方からコンタクトしてきてくれたのだし、一度やらせてみるとしようよ」
「おい、き、きっ、聞いているのか!! アタシが!!
 最初だ! 世界で最初だ!!」

 久礼一くれいはじめはわかったわかった、とでも言うように片手を挙げ、
 古毛仁直こもに なおしは、不安を表すように溜息をついて、モニタに映るオッドアイの少女を見ていた。

「このアタシこそが! アタシこそが、ががかがっ!!
『世界で最初の商用コンピューター』なんだ!!」

 少女の瞳はいささかの狂気をはらんでいた。

(超電脳のユニバック 第二章・了)
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ