林檎熱唱
ふぅ・・・
一頻り『林檎』を熱唱した後、ため息をつく艶子。
「シュータくん。」
「はい?」
「二つ質問。」
「ハイ!ナンでしょう?」
「一つ! 適材適所の意味を述べよ。」
「あ〜、お昼のときの話しですね。 あれはですね〜、仕事でも合う合わないってあるじゃないですか〜。 事務系がばっちり!の人もいれば、力仕事がばっちり!の人もいるでしょう?営業マン命!みたいな人もいれば、お医者さんみたいな人もいる。 だけど、力仕事が合う人が会社の方針などで事務系になってしまったら、ね〜。 大変でしょう?」
「・・・・・そんなことは分かりきってるでしょ!」
「まぁまぁ、続きを聞いて下さいよ〜。」
「う・・・うん。ごめん。」
「艶子さんはね、酔ったときに僕にすごい態度を取るんですよ。」
「あのときの話しは・・・!」
キーッ!って顔で艶子は言う。
「だから〜、聞いて。ね?」
「ごめん・・・」
「あの姿は、ぜーったいどSだと思うわけです!」
握り拳をぎりぎり言わせる艶子。 なんとか抑えることはできたが。
「でね、それを出したほうが艶子さんらしいんじゃないかな?って。」
「ちょっと! 冗談じゃない。私はSじゃないわよ。どっちかと言えば・・・いや、完全などMよ! これまでの恋愛なんて全部そうだもの!」
「あ〜、徹くんに、文彦くんに、鉄也くんね〜。 うんうん、そうね〜。」
「ちょっとー!! なんで知ってるのよ? あんたもしかして、調べたの?私のこと!」
ぎりぎりしていた拳は、シュータを襲う勢いだ。
しかも、シラフなのに『あんた』呼ばわり。
「艶子さーん。僕はそんなにマメな男じゃないっす。 駄目なら、ま、いっか〜って男なんっすよ〜。 っつーか、艶子さんぜーんぶ俺に言ったんじゃないですか〜。これまでの恋愛・・・・いや、恋愛にも満たない話しまで全部ですよ!?」
[な、なんという恥を!! 私が、このシュータに?考えられない・・・]
艶子は、言葉を失っていた。 口を半開きにして。
続けてシュータが言う。
「その3人の後の男の話も延々してましたよ。 僕、酔いもすっかり覚めちゃってたから、全部憶えてるんだけど・・・」
「もぉいい。何も言うな。」
「う、うわぁ。 艶子さん、いい。すごくいい。」
何がいいと言うの?シュータくん。
多分、だーれもその意味わからない筈だけど・・・・・
すくっと立ち上がる艶子。 まっしぐらにインターフォンまで行き、受話器を取る。
「すみません! 紺碧の『ぺき』に、『ことぶき』と書いたお酒を持ってきてください!」
[えー!艶子さん、それやばいっす! 非常にやばいっすーーーー!]
「何〜? く、くぼ?ん?わかんない。私が知ってるのは紺碧の『ぺき』に『ことぶき』・・・は?ないんですか? え? はい、はい、ふうん。じゃ、それでいいです。」
[な、なかったんだ・・・ほっ]
「なんなの?あの紺碧のぺきにことぶきのお酒が無いって。 しかも『くぼ』なんとかって言うし。意味わかんない。カラオケ屋さんには普通は置かないと思いますだって。 当店は、緑桜をお勧めしてます、だって。」
[よし、よし、ぃよーし!! 艶子さん、銘柄わかってないのね。]
「なんで、小さくガッツポーズしてるの?」
「あ、なんでもないでーす! 緑桜、超美味しいっすよ!」
「ふうん。 ま、いいか。」
艶子・・・・
また、あんたは飲むんだね。 |