都合のいい女 エピソード5
《インストラクターとの行方は・・・》
艶子25歳。
もはや焦るというよりも、疲れ切っていた。
考えるのも億劫になっていた。
仕事も、そこそこ忙しい毎日ではあったが、残業にまで至ることも月に何度かしかないし、このままこの毎日を送ってもいいのかもな・・・
そんなことを思い始めていた。
何しろ前回の『恋』は、あまりに艶子にダメージを与えていた。
徹のときよりも大きかったのかもしれない。
三日三晩寝込んだぐらいだ。
殆ど水しか摂らずに。
その後、カウンセラーを紹介してくれたチサトにある程度のことを説明した。
すると、チサトは、
「ちょっとー、酷くない? それって、カウンセリングじゃないでしょうよ。先輩はそんなことなかったよ。 10回ぐらい面談しただけだって言ってたもん。」
「うん・・・でもね、しょうがないよね。 もう過ぎたことだしさ。」
「あんた、悔しくないの?」
「悔しい・・・か。 そうだなぁ、どっちかと言うと、哀しいかな。 案外、雅人さんのこと好きだったんだろうね、きっと。」
「・・・でもさ。」
「うん?」
「先生もあんたのこと好きだったんじゃないかな。 受付の子、かなり先生に迫ってたみたいだしさ。 積極的だったんだよ、きっと彼女。」
「ま、しょうがないよ。事実は、終わったってことだけだもん。」
そう、終わったんだよ。
もう、次行こう!艶子。
あれれ・・・
そうでもないみたい。
「もうさ、恋愛はいいかな。 私も、何でこんなに恋愛恋愛騒いでたのかなって、ちょっと思い直してるところ。 チィに相談してさ、その前にはミナミって子にも相談したんだ。 でもさ、それって違うよね。 自分で考えなきゃいけないことだったんだって気付いたよ。」
「ごめん、艶子。」
「違うよ。 だから、自分なんだよ。チィのせいじゃない。ミナミのせいでもない。誰のせいでもないの。 私が何かに気付かなきゃいけないんだよ。 でも、まだわかんないけどね。恋愛はしばらくいいや。」
「うん・・・でも、いい人見つけてほしいけどな・・・」
[ありがとね、チィ。 今は、いいよ。]
それから、艶子はぴったりと恋愛というものに封印した。
相変わらず、言い寄って来る男性はいる。
職場の先輩。
システムエンジニアの彼。
大学生と思しき男性は、サラリーマンになっても尚。
それも、艶子が27歳になる頃には、音沙汰なくなって行った。
職場の先輩は結婚し、システムエンジニアの彼は、部署の担当を外れ、大学生と思しき男性はサラリーマンになってしばらくしてから姿を消し・・・
そう、それぞれの日常はそれぞれにあるものだ。
若干の寂しさを感じなかったわけではない。
でももう、同じことを繰り返したくない艶子がいた。
27歳になった艶子は、それほどアクティブではないが、ゴルフスクールに通い始めていた。
上司から勧められたこともあるし、俊敏な動きではないスタイルであればなんとかなるのではないか?という安易な気持ちから。
例えば艶子が、
はい、ワントゥー、ワントゥー!
などとエアロビしてしまっても驚くし、かといってフットサルやバレー、テニスなどした日にゃ、
『それ、違うでしょー』
って突っ込まれるでしょ。
ってぐらい、運動に関して長けてないのだ。
で、だからゴルフ。
カツンカツン打っていけばなんとかなる?みたいな。
そんなノリで始めたってわけ・・・・みたいよ。
「艶子さん、筋いいですね。 何かスポーツしてました?」
「スポーツ・・・・あ、まったくしてなかったですね。どちらかと言うと、インドアです。」
おずおずと艶子が言葉を返したのは、ゴルフスクールのコーチだ。
「そうなんですか?筋がいいですよ! どんどん上手になりますよ、きっと!」
「はぁ・・・」
[それほど、上手くならなくてもいいんだけどな。 上司とある程度廻れればそれで。]
そう思いつつ、一生懸命教えてくれるコーチの言う通りにした。
すると、メキメキ上達し、コースを廻るのも難なくこなすようになっていた。
何度もコースを廻りつつも、特にすることもない艶子は、スクールには相変わらず通っていた。
バンバン打ちっぱなしているだけだが、それが案外合っているようで、楽しみに感じるようにまでなっていた。
「艶子さん、上達しましたね。」
コーチが言う。
「ありがとうございます。ゴルフは、合ってるみたいですね、私に。楽しいです。」
艶子が答える。
「今度、僕のオフの日に、一緒に廻りませんか?」
「え?コーチと? そんな・・無理に決まってるじゃないですか!!」
「そんなことないですよ。艶子さんは、上達が早い。一緒に廻ったら、きっともっとアドバイスできるし、上手くなりますよ。」
「はぁ。じゃ、お願いします。」
そうして、二人はコースを廻る約束を交わした。
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