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艶子
作:春晴秋明



都合のいい女 エピソード4の2


《カウンセラーとの成れの果て》

ひょんなことから受けたカウンセリングの後、特に何も変わらない艶子がそこにいた。

だから・・・そりゃそうでしょうよ。
ただ単に寝不足だったんだから。
それに、男運が悪いって言われただけなんだから。
運は、カウンセリングなのか?
もしかしたら、風水とか厄除け大師とかさ、そっちなんじゃないの?

でも・・・
それでも変わるのかな? 男運アップなんて、有得る?

まだ、次回のカウンセリングまで3週間ある。
忘れてはいなかったが、艶子はキャンセルしようかどうしようか迷っていた。

冷静に考えれば、

[男運でカウンセリングって、おかしくない?]

そう思ったから。

でしょー?
艶子さーん。
気付くの遅すぎだよ〜

仕事帰り、駅に向かう途中、携帯の着信音が鳴った。

リン リン リン リン リンリンリンリン リリリリリ・・・・・

[あー、朝を思い出すじゃないの。 うるさいな・・・]

えー。
じゃ、着信音変えればいいんじゃないかな〜。
アラームと一緒にしてるあんたが悪い!

「はい。 あ、こんにちは。先日はありがとうございました。」

誰誰? 友人関係じゃなさそうだぞ。

「どうですか?その後?」

カウンセリングの先生だ。

「あー・・・そうですねえ。 えーっと、きゃ、きゃ、キャン・・・」

何が言いたいの? キャン? キャンセルとでも言いたいのかい?

「え? どうしました? 電波が弱いのかな。 あの、もしよろしければなのですが、今日の夜など二回目の面談いかがかな?と思って。」

「は? まだ先では?」

「いや、なんとなく早めがいいかなと思って、カウンセリングルームを終えた後にでも、ご都合がよろしければ。 無理にじゃないのですが。」

「あー・・・」

当たり前のように、帰宅後何も予定など、ない。
自炊の準備に取り掛かり、入浴して金曜日の今日はまたレンタルDVD鑑賞するぐらい。
でも・・・キャンセル、するんでしょ?艶子!

「わかりました。お願いします。」

またかー!
またわかっちゃったのかー。

「では、カウンセリングルームに20:00で宜しいですか?」

先生が言う。

「はー・・・20:00? あ、わかりました。」


[20:00ってさ、遅くない? 別に無理して行かなくてもいいんだけどな。]

じゃ、行かなきゃいいじゃん!


「失礼します。」

行くんだ、やっぱり。

「どうぞ。」

受付の女の子はもう帰宅したらしい。
先生は、今日は白衣を着ていない。

「じゃ、行きましょうか。」

「え? 行く? どちらにですか?」

「食事ですよ。 今日はここではなくて、外でカウンセリングしましょう。」

[えー。いきなり食事って・・・・・やだ、先生と? どうしよう。 断ろうかしら。]

「さ、近くに美味しいイタリアンがありますから。 個室もあるので、心配いらないですよ。」

[えー!!ますますやだー。 個室って何? 帰ろうかな・・・]

「あ、はい。」

行くんかい!


カウンセリングルームから5分ほど歩いた後、それほど小さくも、大きすぎもしないイタリアンのレストランに入る。
メニューを決め、料理が運ばれるまでがカウンセリング?

「艶子さん」

[え、艶子さんって言った?先生?]

「は、はい!」

「緊張しないで。 私は雅人です。 どのように呼んでもいいですよ。」

「え? どういう・・・意味ですか? 先生ではいけないんですか?」

「ちょっと考えたのですが、あなたには普通のカウンセリングよりも、こうして恋人同士のようにしていることの方が良いと思うんですよ。 その中で私がアドバイスします。 本来、クライエントとこういうことはしてはいけないし、したことはないのですが、こういう試みも良いかな、と。 私も今お付き合いしている女性はいないし。」

え〜。 胡散臭い〜。
絶対やめたほうがいいって、艶子。 
勿論、断るんでしょ?

「そうですか・・・先生がそうおっしゃるなら。」

もう・・・
やっぱり、なんだ。 


「じゃ、そうしましょう。先生はやめてね。 艶子さん。」

「は、はい。じゃ、ま、雅人さんお願いします。」

ぎこちな!
意味わかんない。
どういうこっちゃ。

わけわからない擬似交際がスタートしてしまった。
毎週末会うことになったらしい。
5週目には、先生いや雅人のマンションにまで通うようになり、食事の支度をし、二人で食べた。
いつの間にか、日曜日までそこで過ごすようにも。

[これって・・・本当にカウンセリングなのかな?]

そう思ったのも2ヶ月ぐらいで、すっかり本物の恋人同士になっていた。
(有得ない〜)


初めてカウンセリングルームのドアを開けてから、1年が過ぎ、2年が過ぎようとしているころ・・・
艶子は25歳になっていた。

昔のように、辛い恋愛ではなく穏やかな2年を過ごし、喧嘩もなく、このまま結婚ということになるのかしら?などと思っていた。
それも悪くないな、と。

そんなある日、

「艶子、ちょっといい?」

「うん、何?」

「そろそろカウンセリングも終わりだね。」

[それって、結婚?]

「うん。」

「じゃ、擬似恋愛は終わりにしよう。」

「ん?」

「お別れだよ、今日で。」

「え?! どういうこと?」

「もう艶子は大丈夫だよ。 誰かとちゃんと恋愛できるよ。 だから、私とは今日で終わりだ。」

[嘘でしょう? ずーっと、この2年間がカウンセリングだったって言うの? 全てのことが?]

それこそ、今こそカウンセリングを欲したい艶子がいた。

[いや!別れたくない! 好きに・・・好きになってしまったのに・・・]

でも、言葉が出てこなかった。

「わ、わかったわ。 ありがとう。」

「どういたしまして。 料金はいらないよ。」

なんか、おかしくない?
カウンセリングだったら、料金取るべきじゃん?


しばらくして、カウンセリングルームを紹介してくれた友人のチサトからメールが届いた。

『カウンセリングどう? もう終わったの? 先生、受付の子と結婚するらしいね!』

さすがに艶子は3日寝込んだ。
食べる気力も、県庁まで行く気力も、起きている気力も・・・
腑抜けになってしまったから。


「カウンセリングが必要だー・・・・・」

天井を見つめながら呟いた。













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