SかMか、それが問題だ
シュータが注いだお猪口の『緑桜』をちょびりと飲んだ。
どうやら、がーっとは行かないらしいよ。 よかったよかった。
「質問二つ目!」
一口呑んで艶子が問う。
「はい!」
敬礼しているシュータ。
「私、何で恋愛下手なんだと思う? なんでうまくいかないんだと思う?」
ちょっとだけ、しゅんとして艶子が言う。
「あー・・・それって、さっきの適材適所の続きですよ、艶子さん。」
「え?」
「だから、艶子さんが付き合ってきた人は、艶子さんと合う人ではなかったんです。」
「そんなもんかな?」
「そんなもんです。」
「シュータくんはさ、恋愛上手?」
「はっはっはー。いーえ。わかるでしょ?こんなヤツっすよ、僕。マメじゃないんっすから。『あ、めんどい』って思ったら、そのままになっちゃうし。 案外酷いヤツでしょ?」
「ひでっ! 酷すぎるよ。 だから、私みたいな被害者が続出しちゃうんだからね。」
被害者になっちゃったの?
じゃ、男性陣は加害者? 大変だー。
「うーん、そうですね。恋愛って、差はあれど、みんなそんなこんな泣いたり苦しんだりってするんじゃないっすかね。 僕も、すんげー好きな子いて、2年ぐらい付き合ったけど、他に男できちゃったりもしたしね。」
「うそ!!加害だけじゃないの?被害にも遭ったの?」
艶子のこんなリアクション、初めてだ!!
興味があったんだね、きっと。 乗り出してるもん。
にしてもさ、加害と被害、もうやめよーよ〜。
「そりゃ、僕も26歳っすよ。 辛い恋愛の一つや一つや一つ・・・あれ?一つしかしてねー! はっはっは。」
「甘いな。やっぱり君は甘い。」
ぐびっと呑んだ。
呑んじゃうんじゃーん。
「はい。注いで!」
「はいはい。」ワンワン。
「ハイは一度でよろしい。」
「はい!」
「・・・泣いた?」
「え?」
「シュータくん、泣いた? 失恋して。哀しかった?」
「そりゃ・・・ん〜内緒。 男だからね。 内緒にしとこっと。」
泣いたんだね、シュータくん。
「ふうん。 今も、好き?」
「あー・・・そうっすね〜。嫌いじゃないっすよ。だって、一度は本気で惚れましたからね。でも、それから恋愛らしい恋愛はできなかったっすね。」
「できなかった? 過去形?」
「そう。だって、今恋してるんだもーん!」
「ふうん。 じゃ、誘っちゃまずいね。ごめんね。どうしても聞きたかったの。シュータくんに。」
悄らしいじゃん、艶子。
「あれれ・・・艶子さんにっすよ? 当たり前じゃないっすかー。言ったでしょ?休憩室でも。」
「はぁ? またこのぉー!ふざけんな!!」
拳をぎりぎりし出しちゃったよ〜。
「まじっすよ、まじ。 でも、なんだかその振りが妙に好きだな〜。もっと怒ってほしい。」
呆れて拳をひとまず下ろすことにしたらしいよ。
「艶子さん、多分本当はどSなんですよ。うんうん、きっとそうなんだと思う。それが一番自分らしい姿なんじゃないっすかねー。 で、それにピタっと合う相手を見つければ、きっと恋愛成就ですよ。」
尤もらしく言うじゃないの。シュータくん。
「でね、僕自分でどSだとずーっと思ってたんっすよ。 でも、最近どMなんだって気付いちゃった。 だって・・・」
「だって?」
「艶子さんに怒られると、超嬉しいんっすもん!」ワンワン(しつこい)
艶子は暫く黙り込んでいた。
怒るのも疲れたのか?
それとも、怒り出すパワーを温存しているのか?
どーした?艶子?
「注げ!」
酔っ払ってんじゃーん。
それで黙ってたんかーい! |