都合のいい女 エピソード4の1
《カウンセラーとの成れの果て》
鉄也に勢いで言ってしまった手前、
[ピアノでも習ってみるか・・・]
と、その場のノリでピアノスクールに行ったはいいけど・・・
そんなノリで続くわけもなく。
たったの1ヶ月で辞めてしまった。
まだ23歳の艶子。
まだまだ気力・体力全開のはずの艶子。
なのに艶子は疲れていた。
相談するにも、ミナミには相談し難いし・・・
で、別の友人のチサトに相談することにしてみた。
「チィ、私どこがいけないんだと思う?」
艶子が訊ねる。
「へぇ〜? 何、急に久々に会おうなんて言ったと思えば。」
数センチメートルもあるハンバーガーに齧り付きながら言う。
「ん・・・ごめん。 なんだかわかんなくなっちゃってさ。」
伏し目がちに艶子が言う。
夕べ数本の映画をまとめ観したせいか寝不足なのだ。
「ちょっと・・・大丈夫? あんたにいけないところなんてないんじゃない?」
すっかりハンバーガーを食べ切り、チキン2本目に入っている。
「そっかなぁ。じゃ、なんで恋愛が成立しないんだと思う? 私に何らかの理由があると思わない? だって、ちぃなんて幸せじゃない? いっつも。」
「あー・・・あるとすればねえ・・・」
「あるとすれば?!」
目を輝かせて身を乗り出す艶子。
「運がないかな〜。 艶子は〜。 残念!!」
がっくし。
そりゃ肩落とすでしょう〜。 運じゃどーにもできないでしょうよ。
「そっか。 分かった。今日はありがと。」
「あ、ちょちょ・・・艶子!待って。」
伝票を持ち、レジまで行こうとする艶子をチサトが止めた。
「あんたさ、一回カウンセリングとか受けてみれば?」
「カウンセリング?」
「そうそう。恋愛メインのカウンセリングも巷にはあるからさ。 私の職場の先輩がさ、彼氏とのことでかなりやばくなって行ったらしいんだよ。 今はね、そのおかげかその彼とは別れて、すごく幸せな恋愛してるよ。 教えてあげようか。」
[そんな、カウンセリングが必要なことなんて私にないんだけどな。]
艶子は思った。
[艶子かなりやばいな。 あの精気のない目はやばい!先輩と一緒だもん]
チサトが思った。
だから・・・それは、寝不足なだけだって。 あんなに沢山の映画を観れば、あんなに夜更かしすれば。
とんだ勘違いは、とんだ方向に進んでいくのだ。
数日後、艶子の携帯にチサトからメールが届いた。
『先日の件、場所と連絡先などを先輩に聞いたよ。なるべく早めに行ってくるんだよ。』
その下には、詳細が書かれていた。
[だからさ、私はカウンセリングなんて必要ないんだってば。]
そらそうだろう。
必要があれば受けるのはいいけど、単に寝不足だったんだもの。
『ありがとう』
一応返信してみた。
「あ、すみません。 友人から紹介されましてお電話したのですけど・・・」
電話してんじゃん!!
「はい、どうなさいました?」
電話の相手が言う。 きっと受付の人かカウンセラーだね。
「あの・・・えーっと。」
どうもなさいませんでしょう? 何電話してんの? 艶子さん!
「えーっと・・・男運がなくてですね・・・」
はあ? そりゃ「すぐにおいでください」って言われちゃうよ。
そんなこと、カウンセラーに言うことじゃないでしょー。
「お悩みなんですね。お日にちはご希望とかありますか?」
優しい口調の女性が、促してくれる。
と、いうことで、何故かカウンセリングを受ける羽目になった艶子。
その週の土曜日の午後に予約が取れた。
―当日―
[あー緊張する。どんなところなんだろう。どんな先生なんだろう。]
カウンセリングの扉を開ける。
「こんにちは。」
「こんにちは。どうぞ、お入り下さい。」
可愛らしい受付の女性が、素敵な笑顔で迎えてくれる。
「失礼します・・・」
スリッパに履き替え、予診表を渡され記入する。
書き終わり受付に返しソファーに掛けて待つことにした。
5分もすると呼ばれ、中に通された。
待ち構えていたのは、優しそうな30代ぐらいと思われる男性の先生だった。
「男運・・・ですか?」
え! 予診表にまで書いたんかい!!
「はい。あの、その、なんというか・・・」
「緊張しますよね。 初めてでいらっしゃるんでしょう?」
優しい口調の先生に少しほっとしていた。
「ゆっくりでいいですよ。 お話下さいね。 何でもいいですから。」
[先生、何も言わないの?]
そりゃそうです、艶子さん。 基本は傾聴ですから。
[なんで、頷きながら聴くだけなの?]
だから、そういうことなんです。
[でも、案外話しやすい。 あまり話すことが得意じゃないのに。]
先生の本業だものね。
あっという間に50分が過ぎた。カウンセリング初回終了!
「では、次回の予約ですが・・・・・・あ、あれ?」
「はい・・はい?」
「ごめんなさいね。 ずっと予約が入っていてね・・・今日はたまたま空いていたんですよ。どうしようかな。 1ヶ月先ではどうですか?」
「あ、いいです。特に急ぎませんから。」
そりゃそうでしょうよ。 男運の話しなんだから。
「じゃ、1ヶ月後の土曜日にしましょうか?」
「はい。お願いいたします。」
会計を済ませた艶子は、少し気分も晴れた・・・
ような気がしていた。 飽くまで気がした、のね?
[カウンセリングってこういうものなの?]
どういうものに感じたの?
【続きはエピソード4の2で!】 |