石蹴り
[ちきしょー!]
コーンと蹴飛ばした石ころは、50cmぐらい先に転がった。
「ちきしょー! なんでもっと飛ばないのよ!」
どうでもいいことでイライラする艶子は、県庁舎に勤める29歳。
このまま、県庁舎に勤め続けていけば、60歳の定年を迎えて、なんとか老後も安泰だ。
そんなことを考えている艶子。
1LDKのマンションでも買おうか。
でも、今の賃貸でずっと行こうか。
悩みつつも、どっちつかずの艶子。
本当は・・・
[私だって、結婚したい!!]
そう思っているのだが、そう簡単ではないらしい。
何故なら艶子は、
『都合のいい女』
だから。
これまでに、恋愛をして来なかったわけではない。
逆に、案外恋愛は豊富だったほうだ。
だが、その内容は惨憺たるもの。
何故か何時も、艶子が付き合う男は他に女を作って去って行ってしまうか、女がいるか、それか・・・・・
艶子はそれに、
「待って! 行かないで!」よよよよよ・・・・
とは、どうしても行けない性格なのだ。
「幸せになるんだよ。」
なんて言っちゃって。 本当は、内心『行かないで〜よよよよよ〜』
なくせに。
もしそう行けたとして・・・
きっと、時遅し!
どっちにしても、THE END なのだろう。
そんな艶子は、自分の何処が、何がいけないのかをわからずに29歳まで来てしまったらしい。
そして、もう、老後まで模索しているのだ。
[もう、恋はいいや。]
諦めていた。
諦めている。 現在進行形。 過去形よりも、どーよ?って状況だ。
本当は、県庁舎に29歳、独身でいるのは肩身が狭い。
それほど重要な仕事を任されることもなく、毎日がルーティン、ルーティン、ルーティン!
それをどこまで我慢できるかの勝負だ。
『ガツーン』
でかい石を蹴る。
ボコ。
20cmも飛ばない。
「なんで飛ばないんだよー!」
おうおうおう〜
とは行かない。
何故なら、山じゃないから。
「なんで、なんで桜が綺麗なんだよ〜!」
おうおうおう・・・
だから、行かないって。
山じゃないんだから。
艶子の勤務する県庁舎までの通勤には、どうしても桜並木を通らなくてはいけないのだ。
とっても綺麗な桜並木。
本当は、大好きな人と夜桜を眺めながら歩きたい桜並木。
今日は、部署のお花見だ。 |