第十話、第十一話、第十二話
第十話 〜幸せの時間〜
店を出て少しの間だけ一緒に帰る
幸せの時間
二人並んで歩く
この時が永遠に続けばいいのに・・・
こんな気持ちはいつ以来だろう?
希の声が、その笑顔が私を捕らえて離さない
もっと一緒にいたい・・・
でも、そんな時間は長くは続かない・・・
もうすぐ分かれ道
手を振って別れる・・・
第十一話 〜私はただ・・・〜
今日も希と一緒に帰れそうだ
そう思っていると
「じゃあ、お先に失礼します!」
「あれ? ゴハン食べていかないの?」
「ちょっと用事があるので・・・それじゃ!」
「あ・・・ちょっと待って・・・私も行くから」
私はいつも賄いを食べてから帰る
食べない日は日曜だけ
夫が休みで家にいるからだ
でも、食事を一回抜いてでも、希と二人きりでいたかった
たとえ5分でもいいから・・・
すっかり着替えて帰り支度を整えた希を待たせ、急いで着替える
「あれ、彩さん、ゴハンはいいんですか?」
「うん、私もちょっとね・・・」
「じゃあ、行きますか」
特に何を話すということでもなく
私はただ
ただ希の顔を見ていたかった・・・
声を聞いていたかった・・・
第十二話 〜潤んだ瞳〜
別れ道に着いたとき希の瞳を見ると・・・濡れていた
男の人が瞳を潤ませているのを見ることはほとんどない
しかもそれが希
胸の鼓動が高鳴る
「どうしたの?」
「何がですか? ・・・あ、眼ですか?」
「希〜何泣いてんの!」
「違いますよ、泣いてません! オレ、寒いところに出ると涙が勝手に出てきちゃうんですよね」
「へえ〜変わってるね」
「だから高校の頃なんか、冬に朝学校行くと ”希、お前また振られたのか〜?”とか言われてちょっと嫌でしたね。じゃあ失礼します!」
「うん、じゃあね・・・」
ずるい・・・反則だ・・・
ただでさえ可愛いくて仕方がないのに、寒いだけで潤んだ瞳になるなんて・・・
潤んだ瞳と笑顔で私に話しかける希
ひどいよ・・・
これ以上私の心を奪ってどうするつもりなの・・・ |