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ゴブリンサバイバー〜転生したけどゴブリンだったからちゃんと生き直して人間になりたい!〜  作者: 坂東太郎
『第三章 漁村 ペシェール』

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第二十二話 漁村に帰ってきて中に入れていろいろあってゴブリオほろっときちゃったゴブ!


『あっ! 隊長、例のゴブリンです! 女将さんとプティちゃんもいますよ!』


『そこで止まれ!』


『え? 隊長』


『お前は、村が何に襲われたかもう忘れたのか』


『で、でも、女将さんもプティちゃんも帰ってきて、つまり助けて来たってことで』


 俺とオクデラとシニョンちゃんは漁村に帰ってきた。

 ゴブリンとオークの襲撃で連れ去られた若女将とプティちゃんを助け出して。

 あと行方不明だったアニキと合流して。


 漁村の入り口には門番が戻ってた。

 俺たちが門番に止められるのは当然だろう。

 なにしろ漁村はゴブリンとオークに襲われたんだから。

 俺はゴブリンでオクデラはオークだし。

 アニキ? アニキはもうゴブリンなんだかリザードマンなんだかよくわからないゴブ! 新種かな? ゴブリザードマン?


『隊長さん! ゴブリオさんとオクデラさんは、あのモンスターと関係ないんです!』


『そう言われましても……』


 シニョンちゃんが門番に向かって叫ぶ。

 ニンゲンが怖かったシニョンちゃんが、俺たちのために勇気を出して主張してる。

 シニョンちゃん成長したゴブなあ! ゴブリオ目頭が熱くなるゴブ! 俺たちを入れない門番たちの方がフツーのニンゲンの反応なのに!


 でも門番が強ければ、この漁村がゴブリンとオークの群れに荒らされることはなかったんだけど。

 おっと、それは言っちゃいけないゴブな! 村人を海に逃がして人に被害を出さないようにしただけでもたいしたもんゴブ! お前らのせいとか責めるのは鬼畜生の所業ゴブな! あ、俺ゴブリンだから鬼畜生でしたわ! ゲギャギャッ!


『お二人とも、お願いします。私と娘を助けてくれた恩人なんです。入れるようならウチに泊めますから』


 シニョンちゃんに続いたのは助けた若女将だ。

 村に近づく前にオクデラの背中から下りて、プティちゃんの手を引きながら歩いた若女将。

 そういえば今のセリフは、若女将たちをオオカミから助けて、俺たちがはじめて村に入ろうとした時と同じだ。

 もうけっこう昔なような気がしてくる。

 死んだのはあの時以来だったゴブな! 今日は二回も死んじゃって大変だったゴブ! 俺じゃなかったら死んでるところでしたわイヤホントに! ハハッ!


『隊長! ほら、二人もこう言って!』


『だがしかし、漁村はゴブリンとオークの群れに襲われたのだ』


『隊長は前に言ってたじゃないですか! 害意がなくて話が通じればどんな種族も受け入れるって! 規則は規則、曲げられないって!』


『害意はなし、話は通じる、か。だがゴブリンとオーク、それに巡礼者よ。この漁村が襲われたことは間違いないのだ。……いいのだな?』


 シニョンちゃんと若女将、二人の懇願に負けたのか、門番が俺に聞いてくる。

 答えなんてもちろん決まってるゴブ! 八つ当たりはノーサンキューだからイヤです入りません!って言うわけないゴブなあ! せっかくの文明的な生活を捨てる気ないから!


『大丈夫ゴブ。心配してくれて、ありがとう』


『オデ、プティ、守ル!』


 だから漁村に入れてくれ、と言う俺とオクデラ。

 オクデラはちょっとズレてる気がするけど。


 隊長と呼ばれるおっさんだって、嫌がらせで言ってるわけじゃない。

 俺たちを心配して言ってくれてるんだってわかってる。

 俺ゴブリンだけど元人間だからね! それぐらい目と表情でわかるゴブ! ありがとうおっさん! でも次までにモンスターから漁村を守れる実力を付けておいてくれよな! あ、余計なお世話か! ゲギャギャッ!


 俺たちの言葉を聞いて、隊長は一つ頷いて道を開けてくれた。

 先に若女将とプティちゃんが歩いて、続いてオクデラとシニョンちゃんと俺が漁村に入る。

 よしよし、次は冒険者ギルドだ! 俺たち『ストレンジャーズ』を行かせてくれた受付のおっさんと受付嬢ちゃんに無事助け出したって報告しないと! はー、忙しい忙しい!


『待て。その見慣れないゴブリン? リザードマン? は何者だ』


 ……はいやっぱりバレました! シレッと通ったら行けるかなーと思ったんだけど! これアニキ入れるゴブな? 害意はないし俺の言うことは通じるし大丈夫ゴブな? こんな時だけ有能な門番とかむしろ無能ゴブゥ!



  □ □ ■ ■ □ ■ ■ □ □



 アニキは無事に漁村に入れた。


 というかアニキ、リザードマン扱いで港町にいたらしい。

 ……ちょっとそこんとこ詳しく聞かせてくれませんかねえアニキ! 何でシレッと港町の通行許可証持ってるゴブか! 俺たち入れなかったのに何してんすかアニキ!


 アニキに聞きたいことはいっぱいあるけど、いまはそれどころじゃない。


『帰ってきたか!』


『心配かけました。私もプティも無事、ゴブリオさんとオクデラさんとシニョンさんに助けてもらいました』


『おお、おお! よくやった『ストレンジャーズ』! おうお前ら、これで全員無事だ!』


 冒険者ギルドに入ると、コワモテな受付のおっさんがすぐ飛び出してきた。


 若女将とプティちゃんの無事を確かめると、おっさんは振り返って拳を突き上げる。


 石造りの建物に、冒険者たちの歓声が響く。

 夕方前のこの時間はいつも閑散としてるのに、今日は大量に冒険者がいた。


『よかった! 私、心配で心配で! 女将さん! プティちゃん!』


 コワモテのおっさんの娘なのに美人な受付嬢ちゃんが若女将と幼女に飛びつく。

 オクデラはやたらゴツくて日焼けしたニンゲンの冒険者に肩を組まれてる。

 アニキはなんかリザードマンに囲まれてるんですけどあれまさかリザードマンの言葉しゃべれるゴブか? アニキマジどこで何やってたゴブ? そんで種族どうなってるゴブ?


 今はいい、後でゆっくり聞くことにしよう、うん。

 シニョンちゃんがテラス席の人魚さんたちに呼ばれて感謝を伝えられてて、薄着な人魚さんとシニョンちゃんが夢の共演を果たしてるけど今はいいんだ。


 ……ちょ、なんで俺だけサハギンに囲まれてんの! ギョギョギョじゃないゴブ! ゲギャグギャなゴブリンとちょっと似てるから親近感でもあるゴブか?

 やめて、そのヌメッとした手で触らないで! 肩叩いてよくやったって言ってるつもりなんだろうけど革鎧がビチャビチャいってるから! ほらなんか跡ついてテカっちゃってるじゃん!


『おうお前ら! 漁村はゴブリンとオークの群れに襲われたんだ、これからコイツらは厳しい目で見られるだろう』


 歓声を遮るように受付のおっさんが叫ぶ。

 漁村・ペシェールの冒険者ギルドは、おっさんの一言で静まり返った。


『だが! コイツらは人間を助けた! 俺の指名依頼を受けて、斧槍亭の若女将とプティちゃんを救出して帰ってきた!』


 おっさんの前の空間が開いて、俺とオクデラとシニョンちゃんと、若女将とプティちゃんが押し出される。

 みんなの真ん中に、ゆっくり。


『たった三人で、100を越えるモンスターの群れから助け出した! ゴブリンとオークに村が襲われたんだ、全員理解しろとは言わねえ。だが! コイツらは、このギルド所属の立派な冒険者だ!』


 おっさんの宣言に沸き立つ冒険者たち。

 俺たちを讃えて、誰も死ななかったことを喜んで。


 涙が出てくる。

 俺たちがやったことは、間違いじゃないんだって。

 ゴブリンでもオークでも、種族が違っても受け入れられることがあるんだって。


 がんばってよかった。

 必死で戦ってよかった。

 必死っていうか死んだけどね! 必ず死ぬと書いて必死だからしょうがないよね! ハハッ!


 泣いてるのは俺だけじゃない。


 俺とアニキと出会うまで、ずっとひとりぼっちだったオクデラも泣いてた。

 群れに、集団に受け入れられた。

 オクデラは初めての経験だから。


 シニョンちゃんも泣いてた。

 ニンゲンが怖かったはずなのに、人でいっぱいの冒険者ギルドの中で、うれし涙を。

 ここにいる半分ぐらいはニンゲンじゃないけど! 人魚とかリザードマンとかサハギンとか人外多すぎィ!


 あとサハギンたちの拍手が近くて俺の顔になんかピチャピチャ飛んでくるんだけどこれ何ゴブか? 海水だよね? 肌の表面を覆う体液的なモノとか分泌液的なモノとかじゃないよね? 汚くないって信じてるゴブゥ!


 モンスターを殺してライフポイントを溜めて、ニンゲンになる。

 今もその気持ちは変わってない。

 でも……ここを、この漁村・ペシェールを拠点にするのも、いいかもしれないゴブなあ。

 冒険者以外の村人が受け入れてくれれば、だけど。


 ゴブリンでも受け入れられたのに、なんでニンゲンを目指すかって?

 そんなの簡単ゴブ! 俺はシニョンちゃんが、す、すす、好きで、たぶんシニョンちゃんも俺のこと好きっぽいんだけど、ゴブリンとニンゲンじゃ何もできないからね! いやできなくはないんだけど、もし、け、けけ、結婚して子供とかできちゃったら子供はただのゴブリンだし! 男は殺せ、女は犯せのゴブリンだし! 悪夢すぎゴブゥ!


 ……いやニンゲンになりたい理由はシニョンちゃんだけじゃないゴブよ? 好きになった子と一緒になりたいとかそんな理由だけじゃないゴブよ? 元人間としてニンゲンになりたいゴブ。本当ゴブよ?


次話、4/14(金)18時投稿予定です!


※先週(前話)、4/1のあとがきで

 『ゴブリンサバイバー』が書籍化することを報告しました。

 エイプリルフールの報告でしたが、マジです。

 5/25、オーバーラップノベルス様から発売されます!

 ちゃんとオーバーラップ様の公式ブログで紹介されました!

 マジかよ俺が騙されてたんじゃなかったのねやったぜ!

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