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第一話 おっぱいちゃんことシニョンちゃんのスキルと称号を聞いたら襲われる理由コレかよ!


 いま、俺とオクデラとシニョンちゃんは、バオバブっぽい木の上で生活してる。

 ニンゲンも俺たち以外のモンスターも怖いおっぱいちゃん、おっと、シニョンちゃんは、だいたいここで留守番だ。

 でもぼーっと待ってるわけじゃない。


 下ろしてもらった縄梯子で、木の上に登ると。

 シニョンちゃんが、笑顔で俺を迎えてくれた。


『お帰りなさい、ゴブリオさん』


 くっ、この笑顔と『お帰りなさい』の破壊力! これだけで一緒にいて正解だって思わされるゴブ! そういうことじゃなくて!


 シニョンちゃんには、取ってきた木の枝を加工して拠点を使いやすくしてもらったり、手に入れた服を俺とオクデラ用に縫い直してもらったりしてる。

 その分、俺が狩りに出られるわけだ。

 笑顔で迎えてくれるシニョンちゃんのために、ゴブリオ外で稼いでくるゴブ! まるで新婚さんみたいゴブなあ!


『オークさんも、お帰りなさい』


 ああうん、俺だけじゃなくてオクデラもいるんだけど。

 シニョンちゃんが話すのは【人族語】だ。

 俺はスキル【人族語LV1】を取ったから理解できるけど、オクデラには通じない。

 通じない、はずなんだけど……。


「ニンゲン、無事カ。今日ハ、ゴブリオガ、剣シカ、倒シタ」


『うわあ、ソードディアじゃないですか! すごい、すごい!』


 なんかこの二人、通じ合ってるんだよね……。

 アレかな? 二人とも信じやすくて純粋なのかな? ピュアオークとピュアおっぱい? おっと、いまおっぱいは関係ありませんでした! ついつい目がいっちゃうゴブ! ピュアっていうか魔性のおっぱいゴブな! ヘイト集めてるゴブ!


 そうだ、それで思い出した。

 おっぱいに目がいっちゃってヘイトコントロールみたいって発想で思い出すのもどうかと思うんだけど。

 口に出してないし触ってないからセーフ!


『ニンゲン、スキル、知ってるか?』


『スキルですか? はい、わかりますけど……どうしたんですか、ゴブリオさん?』


 おおおおお! やっぱりスキルはニンゲンに知られてたゴブ! やっと実りのある話ができるゴブ!

 アニキもオクデラも、なんのことかさっぱりって感じだったからなあ。


 ついつい遠い目をする俺。

 いまは亡き里のゴブリンたちは「男は殺せ! 女は犯せ! ヒャッハー、お祭りゴブ!」であんまり頭が良くなかった。

 わりと賢かったアニキも、オークのオクデラもスキルのことは知らなかった。

 やっと話ができる……ここまで長かったゴブ……。


『あの、ゴブリオさん?』


 おっと、遠い目をしてる場合じゃない。


『ニンゲン、まだ、帰らない。森で暮らす、危ない。俺、スキル、知りたい』


『えっと……ゴブリオさんは、私のスキルを知りたいんですね?』


『そう。ニンゲン、できる、できない、知りたい。森、危ないゴブ』


『わかりました。ゴブリオさんは賢くて、ホントにゴブリンじゃないみたいですね』


 ニッコリと微笑むシニョンちゃん。

 どうやらあっさりスキルを教えてくれるらしい。

 ……単純すぎでしょ! え、スキルって大事な生命線じゃないゴブか!? そんなんだからモンスターにもニンゲンにも襲われるゴブ!


 ツッコミは頭の中だけにしておく。

 せっかくシニョンちゃんのスキルを確かめて、スキルについて聞くチャンスだから。


『えっと、私は【神聖魔法】のスキルを持ってます。だから治癒の魔法を使えるんですよ。魔法を使えますから、【魔力感知】と【魔力操作】のスキルもあります。あともちろん【人族語】も』


 そう言ってちょっと胸を張るシニョンちゃん。

 法衣がぱつんぱつんになる。

 くっ、目を奪われちゃダメだ! やっぱりアレは魔性のおっぱいゴブ!


 気を確かに持って、シニョンちゃんの言葉について考える俺。

 治癒の魔法ってアレか、俺が最初に死にかけた時に、手が光ってたヤツか。

 大けがすぎてあんまり効果なくて俺は死んじゃったけど。


 スキル【魔力感知】と【魔力操作】は魔法を使うのに必須スキルっぽい。

 危ない、知らなかったらムダにスキル取るとこだった! やっぱり情報は大事! くそ、ゴブリンな我が身が恨めしいゴブ!


 生き直しの時に、俺はライフポイントを消費してスキルを獲得できる。

 いま18まで溜まったから、今度死んだら何かスキルを取ろうと思ってた。

 【短剣術】か【投擲術】を取ろうと思ってたけど、その次は魔法を狙ってたゴブ! っていうか今度死んだらって言葉おかしいだろ!


 ともかく、魔法を使うのに必須なスキルがあるって知れてよかった。

 魔法を使うには【魔力感知】【魔力操作】プラス属性魔法のスキルが必要っぽい。

 最低でも30ライフポイント。

 魔法使いになるには遠い道のりゴブ! ニンゲンは目指すけど、ライフポイントを溜めるために魔法は使いたいと思ったのに! 範囲魔法でLP(ライフポイント)ザックザクみたいな!


 それにどうせスキルレベルが低くてたいした魔法使えないんだろうなあ。

 神様、俺もっとラクなチートが良かったゴブ! 気づいたら強かったりちょっと工夫したら最強でお手軽無双したかったゴブ!


『私、ほかに二つもスキルがあるんですよ! こう見えて優秀なんです』


 ふんす、とばかりに胸を張るおっぱいちゃん。

 おっぱいちゃんのおっぱいちゃんに押し上げられて法衣がもっとぱつんぱつんになる。

 くっ、ゴブリオを惑わす罠だ! そんなのに釣られるゴブリオじゃ……目が、目があっ!


『一つは【夜目】って言って、暗くても見えるようになるスキルなんです。もう一つは私も神父様も、調べてもよくわからなかったんですけど……』


 あるのかよ【夜目】! そうだね、そういえば盗賊の洞窟から出る時も平気で歩いてたもんね! いまももう陽は落ちたのに平気で動いてるしね! どうりで【夜目】持ちの俺とオクデラと一緒に生活できたわけだ!

 【夜目】があるせいで、薄暗い盗賊のアジトでもいろいろ見えちゃったんだろう。

 トラウマになるのもわかる気がする。


 一人納得する俺。

 ふと気づく。

 あれ、【夜目】があるってひょっとして、シニョンちゃんは見えないだろうと思って、俺が夜におっぱいを見つめてたのバレバレだったのかな?


 おそるおそる、シニョンちゃんの顔色をうかがう俺。

 シニョンちゃんは微笑みを浮かべて小首をかしげる。

 セーフ、セーフっぽいゴブ! まあ触ってないし見るぐらいはオッケーゴブな! 触ってないしジェントルゴブ!

 俺の小物っぷりに自分でもどん引きゴブ……。


『わからない、スキル。ニンゲン、頭、浮かぶ、模様、書けるか?』


 シニョンちゃんは【夜目】のほかに、あと一つスキルを持ってるって言ってた。

 内容がわからない。

 それを聞いて俺は思ったんだ。

 ひょっとして、ニンゲンのスキルも日本語表記なんじゃないかって。


 魔法を使えるニンゲンがそれなりにいるなら、【魔力感知】【魔力操作】【神聖魔法】なんかはどんなスキルかわかるだろう。

 日本語が読めなくても、模様の形を記録していけば、いずれ判断できるようになるはずだ。

 それに俺もオクデラも持ってるし、モンスターじゃなくてもスキル【夜目】は珍しくないのかもしれない。

 だったら【夜目】も魔法と同じように、どんなスキルかわかってもおかしくない。

 ただ、めずらしいスキルは判断できないんだろう。


『模様……ああ、この文字のことですね。はい、わかりました』


 そう言って、溜め込んでた木の枝に小さなナイフで模様を刻むシニョンちゃん。

 もどかしいけど、俺はじっと待つ。

 どうやらシニョンちゃんは、わからないスキルだけじゃなくて【夜目】とかほかのスキルも刻んでくれてるみたいだ。


 【人族語LV4】【夜目】【魔力感知】【魔力操作】【光魔法LV1】……


 はいストップ! まだ途中なのにもうツッコミ必要ゴブなあ!

 シニョンちゃん【神聖魔法】使えるって言ってたけど表記は【光魔法】ゴブ! 神聖どこから来たゴブか! 文字数さえ合ってないゴブ! そもそもやっぱり日本語表記かよ!


 ツッコミが響く。

 俺の頭の中にだけ。

 俺の体は、じっとシニョンちゃんの手元を見つめているだけだ。

 こんなの日本語わからない人に言っても通じないからね! 光魔法が神聖魔法って! 宗教的な意図を感じるゴブ!


 光魔法についてはとりあえずスルーだ。

 魔法のスキルレベルが1だと、あの程度の魔法しか使えなさそうだってわかっただけでいい。ツッコミが追いつかないから!

 そして、問題のスキル。


『えっと、このスキルが何かわからないんです。書物にも残ってないそうで、初めて見つかったんですって。ひょっとしたら、私がゴブリオさんに出会えたのもこのスキルのおかげかもしれませんね』


 はにかむように笑うシニョンちゃん。

 俺は何も答えない。

 木の枝に刻まれた日本語がわかりづらかったから。

 シニョンちゃんにこの線はまっすぐか、この線は繋がってるかとか聞いて、俺は書き直してみた。


 スキル【受難】。


 ……。

 …………。

 そうだねこのスキルのおかげで俺に出会えたんだろうね!

 っておいいいい! ゴブリオ気づいたゴブ、襲われたのもさらわれたのもこのスキルのせいでしょ! 森でゴブリンとオークと暮らすのもニンゲンから見れば受難ゴブな!


 あれ、オクデラの【鈍感】といいシニョンちゃんの【受難】といい、ひょっとしてこの世界、マイナススキルがあるのか?

 今度、スキルセレクトの時にじっくり見てみようっと。むしろなんで見てなかったし。


『あとあと、私、称号もあるんです! 全部はわからないんですけど、神父様が神っていう文字が入っているからありがたいものだろうって!』


 鋼の意志でポーカーフェイスを貫く俺に、うれしそうに言ってくるおっぱいちゃん。

 鼻歌まじりで木の枝に称号を刻みはじめる。

 ゴブリオ、すごいイヤな予感がするゴブ……。


 またシニョンちゃんにいろいろ聞いて、刻んだ文字は完成した。


 称号【運命神の愛し子】。


 うわあ、ほんとだ、神って入ってるね! それがわかったのはやっぱり宗教組織だからかな? 情報を収集して分析して特定して書き残すニンゲンってすばらしいね! これが文明ってヤツだね!

 っておいいいい! これ、ぜったいコレのせい! スキル【受難】もコレのせいでしょ! 運命神って明らかにおもしろがるタイプの神様でしょ! キャッキャ言いながらダイス振るタイプでしょ! いや振らせる方かな? どっちでもいいゴブゥ!


 鋼のつもりの意志は折れて、俺は頭を抱えてゴロゴロ転げまわる。

 おっぱいちゃんはそんな俺をキョトンと見つめていた。

 うすうす、うすうすわかってたけど! おっぱいちゃん、さては天然ゴブな! 残念な子すぎる!


 転げまわるけど、拠点はあんまりスペースがない。

 シニョンちゃんにぶつかったり、オクデラにぶつかったり。

 ちょっと楽しくなってきた。


 違う違う、幼児がえりしてる場合じゃないゴブ! 子ゴブってる場合じゃないゴブ!

 スキル【受難】で称号【運命神の愛し子】って! これぜったいシニョンちゃんは平穏な人生を送れるわけないね! あ、ゴブリンとオークと森で生活してる時点でありえない人生でしたわ! ハハッ!


 立ち直れ俺。

 立て直せ俺。

 スキルはいつ得たのか、称号はどうなのか、いろいろ聞きたいことがある。

 スキルレベルのことだって聞きたい。


 転がってる場合じゃねえ!


「ゴブリオ、ドウシタ? 剣シカノ肉、食ベナイノカ?」


 メシ食ってる場合じゃねえ!


 うそうそ、メシは要ります。

 森での暮らしにメシは大事。

 ありがとうオクデラ、おかげでちょっと冷静になりました。

 続きはメシ食ってからにしよう。

 俺もオクデラもシニョンちゃんも、どうせ【夜目】が利くんだし。


 とりあえず。

 スキル【受難】も運命神も、いまは仕事しなくていいからね! ちょっとスキルと称号のこと確認させてね!

 ああうん、内容が想像できるって意味じゃ俺が日本語わかるのもチートなのかもね!

 しょぼいけど! 中身は正確にはわからないけど!




■ シニョン(普人族)

 【スキル】

  人族語:LV4、夜目、魔力感知、魔力操作、光魔法LV1、受難

 【称号】

  運命神の愛し子

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オレタチノニションチャン・・・
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