第8話
~五胡~
一人の男が扉の前に立っていた
コンコン
男が扉をノックすると
「いいぜー」
中から了承の声が聞こえ、男は扉を開けた
「失礼するわ、煉火はん」
「んー、誰かと思えば佑か、どうした?」
部屋には煉火が椅子に座っており、書類に目を通しているところだった
「どうしたって昨日言った事、もう忘れたんでっか?」
「別に忘れてなんかねーよ。俺はてっきりもう出たのかと思ったぞ」
煉火は手に持っていた木簡を机に置き、佑と呼ばれた男の方を見た
「こちらにもいろいろ準備があるんやで」
「ハッハー!どうせいろんな女に別れのあいさつしてただけだろ?」
「はははははは。これは手厳しいこっちゃ」
佑は頭に手を置き、バツが悪そうな顔をした
「それで?俺の所に来た用は何だ?」
「……煉火はんには敵いませんな~。まぁ早い話、ワイの武器の解放を許してほしいんや」
「武器の解放だと?」
「そうや、解放といってもただ持っていくだけや。“あれ”は使わへんよ」
「当り前だ。“あれ”を使ったら辺り一面が大変な事になるだろう」
煉火は腕を組んで頭を後ろに下げて、少しして
「…………仕方ねぇな。俺からお前に頼んだのだからそれぐらいは良いだろう」
「煉火はん、すまんなぁ」
佑は軽く頭を下げて扉の方に歩いて行った。扉のノブを掴んで
「それじゃあ煉火はん、行ってくるわ」
「あぁ、気をつけて逝けよ」
「あれぇ?なんか字が違へんか?」
「ハッハー!木の精だよ」
「……もうええわ」
そう言って扉を閉めた。
煉火は窓の縁に肘を乗せて、横目で大量の木簡を見てため息を吐いた
「俺も派手なケンカしてぇな~」
「よっしゃ。持ち物の確認したし、これで準備OKやな……。後は」
佑は壁の方を見て、立て掛けてある得物を見た
「“天竺葵”、これだけやな」
佑は得物を掴んだ
「さて、行きますか」
得物同士を背中で交差するように背負い、馬がいる方へ歩いた
「待ちなさい」
後ろから呼び止められ、振り向くと
「なんや誰やと思ったら、ワイに何か用でも?」
「貴方にお願いがあるの………」
「お?………、まさかワイのあつ~~~い抱擁でもしてほしいんか?」
佑が軽く言うと、言われた本人は顔を赤くし
「ば、ば、馬鹿な事言わないでよ!?誰が貴方なんかの!!」
「さて冗談もこれぐらいにして、それでお願いって?」
「ちょっ!?んもう、まぁいいわ」
一呼吸置いて
「お願いって言うのは――――――」
華琳達から地獄を見させられてから、一ヶ月が経過した
三国会議が行われるまで後少しだ
許昌の街は今、人で溢れていた。あちこちで出店の準備や建物の飾りつけなどをしていて街は賑わっていた。
「すごいなぁ、本番はこれ以上に盛り上がるんだろうな」
今、街の大通りを一人で歩いていた
本当だったら今頃は警備隊の報告書に目を通していたはずだが、たまには一人で警備をしてみようかと思った
なので決して大量の木管を見て、逃げた訳ではない。
「帰ったら、ちゃんとするよ?」
~一刀の部屋の前~
(華琳様や風、他の皆は三国会議の事で忙しいはず。私はある程度仕事を終わらせたから手が空いている、ならこの好機を逃すわけにはいかない。
そ、それに上手くいけば今日一日中ずっと傍にいられる。もちろん、よ、夜の方も……)
トントン
「一刀殿、お一人ではその量を片付けるのは大変でしょう。宜しかったら手伝いましょうか?」
(今はこの部屋には一刀殿が一人、という事は必然的に密室の部屋でふ、二人っきり。
……、一刀殿のしなやかな指が私の敏感な胸からお腹、へそをなぞり、そして、わ、私の秘所を優しく―――)
「……ぶふっ」
(あ、あぶない所だったわ。危うくまた気絶する所でした、いくらなんでも一刀殿といえど昼間からなんて。……、そういえば一刀殿の返事がないような)
トントン
「一刀殿、いらっしゃらないのですか?」
(変ね、この時間は部屋で仕事をしているはずなのですが)
トントン
「一刀殿、開けますよ」
(何か嫌な予感が)
ガチャ
「失礼しま―――」
稟の眼に映ったのは一刀の姿ではなく机の上にある大量の木管だった
もちろんそこには一刀の姿など在るはずもなかった
稟は顔をうつむかせて
「そうですか」
メガネを抑え
「そういうことデスカ……」
一呼吸置いて
「フ、フフ、フフフフフフッ」
静かに笑っていた。
侍女たちが一刀の部屋の前を通ると不気味な笑い声が四半刻も聞こえ、侍女たちの間でそれは怖い噂話になっていた。
大通りの中ほどまで来て、肉まんを買っていたら
「ど、泥棒ーーーーー!!」
後ろを向くと布袋を持った男が目の前を通り過ぎて行った。そして今隣に息を切らしたおじさんがいて
「おじさん、今の走って行った人が金を盗んだのか?」
「はぁ、はぁ、はぁ。そ、そうなんだ」
おじさんは疲れたのか、膝に手をついて下を向いていた
「なら俺が捕まえてきてやる!!」
「ほ、本当か!?」
おじさんは落ち着いたのか、俺の顔を見て
「あ、貴方は御使い様!!」
「おじさん、悪いけどこの肉まん預かっといて」
買ったばかしの肉まんをおじさんに投げて、男が走って行った方へ走り出した。
人ごみをすり抜けながら走っていると、50mぐらい先に先程の泥棒の男が余裕があるのかゆっくりと歩いていた
(見つけた!!)
男を見失わないよう気をつけ、気付かれないよう静かに走り、徐々に男との距離を縮めていった
(後もう少し)
手を伸ばせば届くぐらいまでの距離になると男が突然ジャンプして、近くの出店の屋根の上に乗り、そこから民家の屋根に飛び移った
「なっ!?」
男は外套、ローブの様なものを着ていてフードを深くかぶっていた、屋根から俺を見下ろしていて顔は良く見えなかったがその口元は笑っていた
「……野郎」
俺もジャンプして出店の屋根に乗って、屋根に向かって跳んだ。屋根に無事に着地すると、先程の男は軽やかに民家の屋根から屋根へ飛び進んでいた
逃がすかと思い、俺も負けじと男の後を追いかけた。
男は広めの屋根に飛び移り、中ほどまで走ると急に立ち止った
俺は不審に思い、男から少し距離を置いた
「はぁ、はぁ、やっと観念したか?」
「………」
男に話しかけても黙ったままだった。俺は警戒しながらもゆっくりと男に近寄って行った
「盗んだ物を持ち主に返すんだ今ならまだ間に合う、俺も一緒に謝るから、な?」
「………」
男はいまだに後ろを向いたままだった
(何だ?何か嫌な予感がする……)
俺は左手で左腰にある青帝の柄を握った。男の肩を掴もうとした瞬間、強い殺気を感じた
「甘いな~」
咄嗟に青帝を振り抜き、俺の眼前には刃があった
「お?なんや今の一撃を止めるとはヤるな~」
「い、いきなり斬りつけといて、何言ってやがる」
ギリギリで相手の槍を受け止め、俺は内心焦ったりしたがすぐに頭を冷静にして男を観察し始めた
(この男、隙がないな。それに顔が見えないから表情が読み取れない……。それにこの男の武器、なんか変だ)
刀身が普通の槍と比べて長い四角錐の形だ、鍔は花の形をしていて色は薄紅色で5枚の花弁があった。
そして一番おかしいのはその槍の長さだ
一般的な槍は2m以上あるはずなのに、この男が持ってる槍はそれの半分ぐらいだ。目測しても青帝より少し長いくらいだ
「ワイの事を観てるみたいやけど、あんさん随分と余裕やな~」
「!!!」
外套の男は槍を持っていた反対の左手から同じ槍を俺の胸目掛けて突いてきた
ザシュッ!!
「くっ」
「無理やり体をネジってワイの槍を避けるとは、さっきの偶然ではなかったみたいやな」
(やばいな、致命傷は免れたが右脇腹を斬られたか)
男から離れて左手で傷口を抑え
「まさか槍を二本持っているとは思わなかったな」
「先入観は良くあらへんなぁ、槍だから一本しかないと思ったら大きな間違いやで。ワイは二槍流の使い手や」
男は外套を脱ぎ棄て、槍の一本を俺に向け
「あんさんの名前、北郷一刀やろ」
「……最初から俺が目的だったのか」
男の外見は短髪の茶髪で整った顔立ちで眼鏡をしていた
特に気になったのがジャケットを羽織ってる間から見えるTシャツの胸の所に『Spring Love』という
文字が見えた
(あれは天の文字か?何であいつが?)
「悪いんやけど聞きたい事があるんや、かず―――北郷一刀、ワイに見覚えあらへん?」
「残念だがお前の事は知らない。だが―――」
「さよか。なら、ワイの名前は佑」
佑と名乗った男は会話を遮り、両手を後ろに持っていき
「別れを言いや……
あんさんを取り巻く、みなの物にな!」
佑が突っ込んできた
俺は白帝も抜刀して、腰を低くし前のめりになって青帝と白帝を地面に平行に構え
「これでも喰らいや、烈火!!」
二本の槍による連続突きが放たれた
「こ…の……刺乱れ桜!!」
二振りの刀による連続突きで反撃した
小説家になろう 勝手にランキング
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。