学園対抗選抜悪役令嬢選手権 決勝 【アマリリス学園VSスコティーシュ学園】
『悪役令嬢ファンの皆さんこんにちは、実況のアクヤ・クレージョです。解説は、悪役令嬢評論家のムゲイ・トメオさんに来ていただいています。ムゲイさん本日はよろしくお願いします』
『よろしくお願いします』
『さて今回は強豪アマリリス学園と新鋭スコティーシュ学園の対決ですが、ムゲイさん今回の対決はどう見てますでしょうか?』
『そうですね、やはりアマリリス学園の悪役令嬢は第一回戦の『取り巻き作り対決』で大いにその実力を見せました。前回大会と選手は違えど、そのアマリリス也の悪役令嬢精神は引き継がれていると言っても過言ではないでしょう。しかしながら今まで日の目を見なかったスコティーシュ学園も、トリッキーな戦い方でここまで上り詰めてきました』
『三回戦の『ヒロインいじめ対決』で行った、ヒロインのハイヒールの踵だけを毎日1ミリずつ長くしていくいじめは記憶に新しいですね』
『スコティーシュ学園の悪役令嬢はそう言った搦め手が得意ですので、意外な方法で勝ちを狙える可能性も高いですね』
『ありがとうございます。さて、決勝戦の対決は例年通り『婚約者からの宣告対決』です。基本ルールは、婚約者からいかに罰を与えてもらえるかの勝負です。より多くの罰を受けた悪役令嬢が、優勝となります』
『ちなみに、令嬢自身が王子に直接『罰を与えてください』と申告したり、ばれる前に直接『いじめをしている』と申告するのは規約違反ですのでご注意ください。ただしいじめを見せたり、他人に申告させるのはOKです』
『さて、それではまずは先攻のアマリリス学園の中継から見てみましょう。……今回の宣告役であるストルム皇太子は、生徒会室でレジーナ選手を呼びつけたようですね。周囲には生徒会の役員が数名います』
『皇太子は準備万端と言ったところですね。ちなみに今回の事件が他校との対決に使われていることは、ストルム皇太子だけが知りません』
「……失礼いたします」
『おっと、レジーナ選手ついに登場ですね。それでは試合開始です!』
「……レジーナ。今回お前を呼び寄せたのはなぜか、分かるか?」
「生徒会のお仕事ですか? 私にできる事なら何でも致しますわ」
「違う。……ソニアについてだ」
「ソニア? あぁ、あの男爵令嬢の。その方がどうかいたしまして?」
「しらばっくれるな。……貴様、ソニアに酷いいじめをしたそうだな」
「何のことですの? 私は何も知りませんわ。あんな格の低い方なんかにちょっかい出しても何の得になりませんもの」
『レジーナ選手、あえて否定する事で王子から怒りの感情を引き出す作戦のようです』
『きっと心の中ではほくそ笑んでいますね』
「残念だが否定しても無駄だ。……入れ」
『おっと、二人の女性が生徒会室に入ってきましたね』
『彼女たちはレジーナ選手の取り巻きですね。一回戦の大会で見たことがあります』
「二人とも、昨日私に話してくれた話をもう一度言ってくれ」
「はい。……私、レジーナ様の命令でソニアさんの鞄を噴水に捨てました!」
「わ、私は。楽器を隠せと言われました……」
『おおっと、取り巻きからの攻撃だあっ! そしてレジーナ選手、若干ニヤリとしそうになりましたが何とかこらえました!』
『レジーナ選手の作戦通りなんでしょうね。王子以外に協力を求めるのはルール上OKですから』
「な、何を言っておりますの!? そんなのでたらめに決まってますわ!」
「残念だが、裏付けは済んでいる。彼女たちの言ってることは事実に間違いない」
「くっ……」
『レジーナ選手、見事な袋小路です!』
『流石はアマリリス学園の強豪。王道ですが強烈な流れです』
「今回の件で、貴様には失望した。よって今日をもって私と貴様の婚約は破棄させてもらう!」
「……っ!」
『言ったー! レジーナ選手、婚約破棄の罰を受けました! まずまずの一歩と言ったところですね!』
『! 待ってください。レジーナ選手の表情が変です』
「……分かりましたわ、すべて認めます。そして婚約破棄、甘んじて受け入れますわ」
『おや? レジーナ選手、急にしおらしくなりましたね』
『間違いありません、レジーナ選手はどうやら転生してしまったようです』
『なんと! つまり彼女の精神はレジーナ選手ではなく、現代日本の少女の物になってしまったと言う訳ですか!』
『恐らくそうでしょう。この大会ではよくあることです』
「ずいぶんすんなり受け入れたな。貴様なら騒ぎ立てるのではないかと思っていたのに」
「今更慌ててももう遅いですから。……今回の件、誠に申し訳ございませんでした」
『おーっと。深々を詫びを入れてしまいました!』
『現代日本の少女は、この状況を選手権の対決だと認識していないようです。つまり彼女は自発的に印象を悪くできなくなってしまったわけです。これはアマリリス学園にとっては手痛い事故です』
『これには周囲の人々も唖然としています!』
「……分かったなら、さっさと去れ。そして二度と生徒会室には来るな」
「分かりました……」
『レジーナ選手、あっさりと引き下がりました!』
「王子、本当にあれだけでよかったのですか!? 学園から追い出す事もできたでしょうに!」
「あいつの父にこれ以上敵対される訳にはいかんからな。今回はあれだけで十分だ」
「……はぁ」
「? 何を残念そうにしてるのだ?」
『どうやらここでアマリリス学園のターンは終了したようですね。生徒会役員が必死に学園から追い出すのを提案するも、王子の決定には逆らえません』
『アマリリス学園にしてはあっけない結末となりましたね……。これはスコティーシュ学園が有利な展開かも知れません』
『さて、それでは後攻のスコティーシュ学園の中継を見てみましょう』
「あ~ら、ごめんあそばせ。あなたの大切なペンダントを壊してしまいましたわ」
「ひ、ひどいです……」
『むむ、すでに悪役令嬢のソマリ選手が、衆人の前でクリル令嬢をいじめています。恐らく両者合意の上での行動でしょう』
『これを婚約者であるリック王子が見たら、カンカンに怒るでしょうね』
「でもこんな安物、いらないでしょう?私が掃除の者に捨てさせますわ」
「や、やめてください! それは大切な……」
「なんですの? 口答えは許しませんわよ?」
「うぅ……」
「ついでですし、今つけてるその汚いイヤリングも一緒に捨てて差し上げますわ」
「や、やめてください! これは大切な……」
「なんですの? 口答えは許しませんわよ?」
「うぅ……」
「さらにさらに、今ならそのブローチもセットにして、捨てて差し上げますわ」
「や、やめてください! これは大切な……」
「なんですの? 口答えは許しませんわよ?」
「うぅ……」
『さっきからループしてますね』
『どうやらリック王子が来ないようですね。これではいじめてもリック王子から罰を受けることはできません』
……
『あれから50分が経過しました。間もなく、制限時間切れとなります』
「……まずいですわよ。制限時間はあと少ししかないのに、王子が来ませんわ!」
「そ、そんな。私達、負けちゃうんですか?」
「ちょっと周りの誰か! 王子呼んできなさい! それで影から私のいじめを見せるよう仕向けなさい!」
「そ、それが。王子は一旦城に帰ったそうです……」
「何ですって!? あの王子、こんな日に限ってなんで帰るんですの!?」
『リック王子が来なければ、評価のしようがありません。ですので『罰なし』と同様の判定になってしまいます』
『これはスコティーシュ学園、大変まずい展開になりましたね』
「あぁっ、もう! 誰か馬車使って城に行って! さりげなく学園に呼んでさりげなくこの部屋に連れてきなさい!」
「む、無理ですよ。今から行っても制限時間に間に合わないです……」
「ぐぅ……。もはや負けるしか道は無いのかしら……」
「ソマリはいるかっ!」
『おーっと!? ここでようやくリック王子が登場です! 制限時間はあとわずかですが、運が良かった!』
『おや? リック王子、どうやら衛士を引き連れているようですね』
「あ、あらリック王子! 何しに来たんですの?」
「……衛士! その女を捕えろ!」
「は!」
『おぉ!? 衛士がソマリ選手を捕えました!』
「な、なにをするんですの? 訳を説明しなさい!」
「甘い蜜を吸えるのも今日までだ、ソマリ。貴様の一家はずっと国の金に手を付けていたそうだな」
「な……!?」
「今日、城に行って貴様の周囲を洗いざらい調べた。面白いほど証拠が見つかったぞ……?」
「そ、そんな」
「そして調べた結果、お前の父母だけでなくお前自身もその事に関与していたそうだな。これはきわめて重罪だ! 国家反逆罪として、裁いてやろう!」
「そ、それじゃあ貴方との婚約は!?」
「そんな物、破棄だ! 当然だろう!」
『来たーーーーーーーーっ!! 婚約破棄と国家反逆罪のダブルコンボだあああああああああ!! この勝負、スコティーシュ学園の勝利です!』
「「「やったーーーーーーーーー!!!!」」」
「……は?」
『リック王子を除くスコティーシュ学園の生徒全員が盛大な歓声をあげています!』
『初の優勝ですからね。喜んで当然と言えましょう!』
『衛士たちも、ソマリ選手に対して温かい拍手を送っています!』
「おめでとう、ソマリ様! これでこの学園の新たな名誉が出来ました!」
「お疲れ様、クリルさん。いじめはばれなかったけど、いい仕事してたよ」
「ありがとうリック王子! あなたのおかげで優勝できました!」
「ゆ、ゆうしょ? めーよ? な、何を言ってるんだ……?」
『スコティーシュ学園の生徒たちが、選手たちに花束を贈呈しています。微笑ましいですね』
『事情を知らないリック王子は動揺してますね』
「放送席、放送席。優勝者のソマリさんにインタビューします。ソマリさん、今の気持ちはどんな気持ちですか?」
「……本当に……嬉しいです! この日のためにずっと頑張ってきました!」
「今回は両親と一緒に国家反逆罪をしていたおかげで勝てましたね。ご両親に何か一言御座いますか?」
「証拠を残してくれてありがとう、パパ、ママ……! 私、二人が大好きです!」
『周囲から、再び歓声が上がっています!』
「それでは続きましてリック王子にインタビューしてみましょう。リック王子今回の婚約破棄、いかがでしたか?」
「……なにこれ? なんで私はマイクを向けられているんだ? どういう事なんだ!?」
「なるほど。ではソマリさんに対して、何か言う事はありますか?」
「い、いや。だから国家反逆罪で裁いてやるって、さっきも言って……」
「なるほど。嬉しい気持ちがひしひしと伝わってきました」
「今の台詞のどこから嬉しい要素を汲み取ったんだ!? 頭おかしいんじゃねーのか!?」
「皆ー! ソマリ令嬢とリック王子を胴上げだ! こんな素晴らしい日は今までにないからな!」
「賛成ー!」
「いや、なんで今胴上げされなきゃならないの!? というかソマリ犯罪者になったのになんで胴上げするの!? ちょ、おま、やめろ! 胴上げしようとすんな! こら、話を聞けええええええええっ!!」
『いやあ、今回も熱い戦いになりましたね』
『そうですね、アクヤさん』
『次回はどんなどんな戦いになるか、見ものですね!』
『きっと今回を超える新記録を出す学園もでるんでしょうね、楽しみです』
『それでは皆さん、また次回お会いしましょう。なお、来週のこの時間は『選抜高校クラス転生選手権 第一回戦』の模様をお送りいたします。お楽しみに』