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Chapter:2 素顔
Episode:09
「この地方……けっこう、暑いんですね」
「まぁな」

 真夏のこの辺は、けっこう日差しがキツい。しかもまだ昼下がりだからなおさらだ。
 けどこいつ、それを気にする様子はなかった。むしろあんまりにも白い肌に、見てるこっちが心配になる。

「どっか入るか?」
「大丈夫、です。
――いいな。こういう街中」

 つま先で石畳叩いて、にこにこしてるし。
 けど、このままぶらぶらしてるだけってのも、芸がないだろう。

「鐘楼、登ってみるか?」
 とりあえず、そう持ちかけてみる。
「あの塔、登れるの!」
 ぱっとこいつの顔が輝いた。
「んじゃ行ってみようぜ。こっちだ」

 俺が走り出すと、こいつも遅れずについてくる。どういう育ち方をしてんのかはともかく、学院の生徒並みに鍛えこんでるのは間違いなさそうだ。
 五分ちょっと走って、町の南にある塔の入り口へ着く。

「高い……」
 この子が真上を見上げながら感心した。
「いちおう、この街の観光名所だからな」

 もっとも建てられた由来は、そんな悠長な話じゃない。
 なにせアヴァン帝国が衰退してからこの方、なにかにつけて戦火に巻き込まれてたこの街だ。だからこの鐘楼は普段は時間を知らせるけど……物見やぐらも兼ねてた。

 イザとなったらこの上に何人も上がって周りを見渡して、いち早くどっかの軍隊――自国の場合だってある――を見つけようってやつだ。
 そしてヤバそうならどっか安全な場所へ、女子供から避難させる体勢が、この街には出来上がって受け継がれてる。

「じゃぁ、今も……使ってるんですか?」
「いつもじゃねぇけど、今は使ってるっぽいな。
 まぁワサールがロデスティオに併合されてからこっち、どうもこの辺キナ臭いしな」

 今じゃどの教科書にも載ってる大戦はあっさり終わったけど、そのどさくさにまぎれて力を伸ばしたロデスティオ国のせいで、どうも不穏な空気は絶えない。

「ほら、一番上にちらっと望遠鏡見えるだろ? あれが四方についてて、この近所見張ってんだ。
 昔は目がいいやつが、上がってたらしいけどな」
「そう、なんですか……」

 説明を聞いたこいつの表情は、なんか意味深だった。妙に厳しい顔して、考え込んでやがる。

「どうかしたのか?」
「え、いえ、なんでも……。
――上がれるんですよね?」
「ああ。ほら、来いよ」

 鐘楼の入り口をくぐる。

「お、イマド、帰ってきたのか?」
「ええ、今日」

 叔父さんの知り合いの人が、入り口でいちおうチェックの役についてた。

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