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Episode:25
 この暗いのにと思って訊くと、けっこーシビアな答えが返ってきた。
「町の病院へ昨日から負傷兵が運ばれてるんだが、予想より多かったらしくてな。手が足りないから来てくれと、さっき連絡があったんだ」

――あ、あれか。
 俺が無視したのが、そうだったらしい。

「悪いが、頼むな」
「ん、わかった」
 まぁ街中は外出禁止令同然の状態だし、こゆ理由なら誰か来ても、すんなり帰ってもらえるだろう。

「あの子は、できるだけ寝かせておくんだ。
 それから私たちは裏手の学校にいるから、何かあったらすぐ連絡しなさい」
「了解」
 近いってのも、なによりだった。あの公園の隣のガッコなら、走ってきゃすぐの距離だ。

「じゃぁ、頼んだわねー」
 妙にうきうきしたふうな叔母さんの声を残して、二人が出てった。
 今まで以上に、家の中が静まり返る。

――にしても、もういいよな?
 このまま待合室にいるってのも癪に障るから、俺は奥の診療室のドアを開けた。
 ベッドの上に、眠ってるルーフェイアの姿がある。

 辛そうだった。
 眠ってるはずなのに、それでもまだ心が痛そうだ。

「……バカやろ」
 小さくつぶやく。
 んなに辛いのに、なんでやめねぇんだか……。
 と、不意にルーフェイアのヤツが目を覚ました。

「え、あ、その、悪りぃ。
 えーと、起こしちまったか?」
「ううん……」
 言いながらこいつが起き上がりかけて――がくりと手を付く。

「ムリすんなよ」
「……うん。
 けど、これだけ、やらなきゃ……」
 大事な話らしくて、こんだけ身体が参ってるってのに、ルーフェイアのヤツはやめようとしなかった。

 見かねて訊く。
「何すんだ?」
「あのね……通話石の通信網入れるとこ、ある……?」
「通信網?」

 なんでいきなり、と思ってたら、訊くより早くこいつが説明してくれた。
「連絡、したいの……」
「だったら二階の、叔父さんのが使えるぜ」
 隣の診療室にもあることにゃあるけど、あれは俺が登録されてねぇから使えない。

「ありがと、わかった……」
 でもルーフェイアのやつ、やっぱ起き上がれないらしい。これじゃ二階の部屋どこか、どうやったって三歩も進めねぇだろう。

「明日じゃ、ダメなのか?」
「けど、きっと心配してる、から……」
――そりゃそうだ。
 行方不明のままってのと、居場所だけでも分かってるのとじゃ、天と地以上の開きがある。

 かといってこの調子じゃ、どうやって連れてったもんだか……。
 少し考えて、俺はこいつにもちかけてみた。

「俺が、やっといてやろうか?」
「……いいの?」
「いいぞ?」
 町を十キロランニングしろとか言うわけじゃ、ねぇし。

「そしたら……場所、書くから……」
 どっからか引っ張り出した紙切れに、ルーフェイアのやつが連絡先を書き付ける。
「ここに、おねがい……」
「オッケー。んで、なんて書きゃいい?」

 沈黙が降りた。
 こいつの碧い瞳から、涙がこぼれる。


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