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Chapter:3 約束
Episode:20
「どのくらい、かかるの?」
「走って十分ちょいってとこだな」
「よかった、近いんだ」
 この答えに内心悩む。

――近くはねぇと思うぞ?
 まぁ日常的に戦争してちゃ、近い部類に入っちまうのかもしれねぇけど……。

 なんか複雑な気分になりながら、それでも俺は走った。
 駅が見えてくる。列車も停まってて、どうやら間に合ったらしかった。

「よかった……」
「乗るまで気ぃ抜くなって」
 目の前で行かれた日にゃ、シャレにもなんねぇだろうし。

 ルーフェイアのやつがポーチから、長距離線専用の、記録石がはまったカードを出す。最近駅で切符代わりに売るようになったやつで、これがないと乗っても客室へは入れねぇから、デッキであっさり車掌に掴まるって寸法だ。

「どこまで行くんだ?」
「国境超えたとこで降りて、あとは車……かな?」
 けっこう遠い。

「ンなとこから、日帰りで来たのか?」
「だって、太刀をちゃんと研げる人って、少ないから……」
 そういやコイツ、元々は太刀を受け取りに来たんだった。けどあの改造屋のオヤジがそんなの出来るなんて、俺は初耳だ。

「あのオヤジ、ンな隠し芸あったのか」
「え?
 確か研ぎ師だけじゃ食べてけなくて……改造屋も始めたって、聞いたけど……?」
「へぇ」

 改造屋のほうもあんだけ腕がいいのに、それが副業だってんなら、そうとうのもんだ。
 そのとき、アナウンスが流れた。もうすぐ発車らしい。

「行かなきゃ。
 ありがと。すごく、楽しかった」
 言ってこいつが列車のデッキへ上がりかけて――振り向いた。

「あのね、えっと……」
「どした?」
 歯切れ悪くためらってから、こいつが口を開く。
「この町から――逃げて」
「は?」

 思いっきり意味が飲み込めなくて、悩んだ。だいいち俺、逃げなきゃヤバくなるような話にゃ、首突っ込んだことない。
 けどこいつは、けっこう真剣だった。

「理由が言えないけど……お願い、ここから早く、離れて」
「あ、あぁ……」
 ともかくうなずく。
 もっともルーフェイアのほうも、それ以上は期待しなかったらしい。

「ごめん、ヘンなこと……言って。
――さよなら」
 背を向けたこいつの金髪が、落ちてきた陽を受けて見事なくらいに輝いた。

「あ、あのな」
 呼び止める。

「え?」
 ルーフェイアのやつがもっかい振り向いて、ふわりと髪が踊った。
 なんか、どきっとする。

「そ、その、俺さ、シエラ学院の寮にいるんだ。だから気が向いたら……遊びに来いよ」
「ほんとに?」
 陽の光以上に、こいつの表情が輝いた。
 同時に海の碧の瞳から、また涙がこぼれる。

「そんなふうに言われたの……初めて……」
 当てなんざ、ホントはどこにもねぇ約束。
 けどそれでも、友達ってのを知らないこいつには、嬉しいらしかった。

「ありがと。きっと、きっと行くから……」
「ああ、待ってる」
 発車を知らせる汽笛が鳴った。


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