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Chapter:3 約束
Episode:19
「どうにか、なんねぇのかよ?」
 俺の問いに、こいつは静かに首を振る。
 そして微笑んだ。

「大丈夫、あたし慣れてるし……勉強もちゃんと、してるし……」
「ま、マジメ、なんだな」

 俺なんざ勉強は、逃げられるだけ逃げてるってぇのに。
 ルーフェイアのほうは俺の答えに不思議そうな顔になって、「勉強がいちばん楽しい」っつー、とんでもないこと言ってる。

「お前さ、少しダチと遊ぶとかなんとか、したほうがいいぞ?」
「ダチ……?」
 なんか言葉、通じてねぇし。

「んと、友達。いるだろ?」
「ううん……。
 あ、でも、兄さんとか隊員の人とか……ヒマなら相手、してくれるの」
「なんだよそれ――」

 もう、ガッコどこの話じゃない。
 要するにこいつはどっかの軍の中みてぇなとこで、ダチもなしにただ戦って……。
 なんか腹が立った。
 こいつから伝わってくるのは、悲しさばっかだ。なのに口と表情じゃ、平気な顔してる。
 だからよけい、腹が立った。

「やめろよ」
「え?」
「そんな生活、やめちまえよ!」

 自分でも、何で腹が立つかはわからない。けどどうにも許せなかった。
 そんな俺を呆然と見るルーフェイアの瞳に、急に涙があふれる。

「ごめん……」
「え? あ、いや、泣くなよ。そのさ、お前に怒ったわけじゃ、ねぇから」
 女子に泣かれたことなんかねぇから、めちゃくちゃ対処に困る。
 けどよっぽどこたえちまったのか、どんだけ慰めてもこいつは泣きやまなかった。

「な、頼む、もう泣くなって」
「ごめんなさい!」
 ずーっとこれの繰り返しだ。
 結局俺は、泣きやむのを待つしかなかった。

 ルーフェイアのやつを見ながら思う。
 たぶんこいつは……今の生活が、気にいってるわけじゃないんだろう。でもなんでだか、それをやめようとは思ってない。
 不思議だった。
 それとも、なんか弱みみてぇなのがあって、どうにもならないのか。

「……だいじょぶか?」
 少し収まってきたのを見て、訊いてみた。
 さっきとちょこっとだけ、違う答えが返ってくる。
「ご、ごめんなさい……うん、だいじょうぶ……」

 言いながらルーフェイアのやつが、涙をぬぐいながら顔を上げた。
 あんだけ泣いてさすがにばつが悪りぃのか、俺のほうは見ないで時計に目をやる。
「あ、いけない……」
 もっかい涙をぬぐって、こいつが立ち上がった。

「どした?」
「時間が……」
「へ?」

 間抜けすぎる返事をしちまってから、思い出す。

「そいや、列車がどうとか言ってたっけな」
「うん」
 ルーフェイアのやつがうなずいた。

「急がないと。
 えっと、駅、どっち……?」
 俺が街中引きずり回しちまったから、現在位置がわかんなくなったらしい。
「こっちだ」

 この町だったら俺のほうが断然土地カンがあるから、言葉と一緒に走り出した。
 ルーフェイアも走り出す。


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