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Chapter:3 約束
Episode:17
「どした?」
「あ、ううん、なんでもない……」
 口じゃそう言ってるけど、伝わってくるのは涙だ。

――それも、こっちまで悲しくなっちまうような。

 そのまま俺らは沈黙した。
 木の葉がざわめく音と、水の流れる音とが吹きぬける。
 そのうち耐えきんなくなったんだろう、こいつが取ってつけたふうにつぶやいた。

「精霊、回収しなくちゃ……」
「そいや、そだっけな」
 話に乗ってやる。

「えーと、どうすりゃいい?」
「えっと……そのまま動かないで、くれる……?」
 言いながらこいつが水から上がった。
 んでそれから、どっからかタオル出して足拭いて、靴下とブーツ履いて……。
「おーい、早くしてくれって」
「ご、ごめん!」
 慌てたら今度は、足もつれてやがるし。

「落ち着けって」
「う、うん」
 結局、仕切り直してもっかいになった。
「ごめんね、ほんとに今度は……動かないでね」
「分かってるって」

 なんでも強制憑依ってのは、合わねぇ形のとこに無理矢理押し込むようなもんらしい。だから外す時は、引っ張り出す(?)のが大変だって話だった。
 こいつがなんかしてるんだろう。ずーっとしてた違和感が強くなる。

――マジで気持ち悪りぃぞ?
 しかもルーフェイアのやつもなんだか、苦労してるみてぇだった。

「おい、だいじょぶなのか?」
「たぶん……」
 コワいこと言うし。

「もうちょっと……待って。なんだかしっかり、くっついちゃってて……」
「そゆもんなのか?」
 岩場に貼っついてる貝みてぇな言い方だ。
「あたしもこんなの、初めて……あ、戻ってきそう」
 それからまた少し騒いで、ようやく精霊が取れた。妙な感じも同時に収まる。

「ごめんね、その……大丈夫?」
「ぜんぜんなんでもねぇぞ?」
 答えに、こいつがほっとした表情になった。
「んでよ、それ、精霊か?」
「うん」
 ルーフェイアの手の上に二つ、水晶の塊みたいなのがある。ひとつは碧っぽい色で、もひとつは妙にきらきらした感じだ。

「なんか、いっぱい持ってんだな」
「母さんの……借りたの」
「ンな簡単に、貸せるもんなのか?」
 学院の先輩たちなんざ、ほとんど見せてもくれねぇのに。

 ルーフェイアのほうは、俺のつぶやきは聞いてなかったらしかった。公園の中をひととおり、眺め渡してる。
 そして、言った。
「いいよね。こういう……平和なの」
「あ、あぁ……?」
 なんか不思議な言葉だった。

 誰でも言う。この言葉は。それに実際ここは、どう見たって平和だ。
 けどこいつが言うと、この言葉はなぜか重かった。
 そしてまた、沈黙。
 と、流れる風に押されたみたいに、ふわりとこいつが顔を巡らした。


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