足跡のない旅人(29/58)PDFで表示縦書き表示RDF


ロバートの説明、長いです。
足跡のない旅人
作:緋水 カノン



ナンバー29  実験塔=世界開発兼実験団体


「俺は、元は実験塔の・・・ちゃんとした組織名は、『世界開発兼実験団体せかいかいはつけんじっけんだんたい』って言うんだけど、その組織の被験体だったんだ」
「・・・! 知ってる! あの有名な組織でしょ? 色んな製品とかをあちこちの国に出してる・・・・・・」
「そう。・・・実験塔は、表向きは全世界で1番大きな、そして世界一力のある組織なんだ。『世界開発兼実験団体』。色んな国を旅してきたシェリーも知ってるくらいだから、普通の人間も知らない奴はいない。メーカーとしては最高級のものを売るし、子供が使うようなオモチャから大型の機械、安全な食料、建築でも大手を誇る。実験塔は、本当に色々なものに精通し、どの分野でも常にトップ。その中でも特に、実験塔の得意分野が・・・・・・」
「・・・薬?」
「そう。実験塔は、薬の類に入るものを特に得意とした。それは小さな風邪薬などのものはもちろん、農業で使う農薬や、エタノール等の科学薬品まで、実験塔は色々なものを創り出した。人々の怪我や病気は薬1つで治り、実験塔の農薬で簡単、かつ安全に食料を確保できるようになった。みんな、実験塔の存在に感謝し、崇める人さえもいる。だが、裏では、怪我、病気を治す薬の実験台として、生きた人間を使っている。その実験台となる人間のことを、俺達は被験体って呼んでる。
 表では最高の薬を売っている。それは安全で、しかも効き目も完璧だ。だが、それを創り上げるまでに、何人もの被験体が死ぬことは、いくらでもあった。未完成なものは副作用が強く、そのまま死ぬのがほとんど。生きていても、必ず体のどこかがおかしくなって、使えなくなる。それは手だったり、足だったり、もしくは頭だったり」
「っ・・・・・・!」
「だがそれでも、最後にできるのは、副作用は取り除かれて、当然のように効果は抜群の、完成した薬。そして、それほどまでに薬に関しては最先端を行く実験塔のことを、他の団体が調べようとしないわけがない。当然、実験塔の連中はそれを知られるわけにはいかない。そんなことが世界中に広まってしまえば、実験塔の安心・安全・便利などの実験塔のクリーンなイメージは消え去り、2度と信頼を戻せず、最悪の展開を迎えることになる。実験塔の連中は、そうなる事態は防ぎたかった。何があっても、絶対に。・・・そうして生まれたのが、俺達、被験体『オリジナルナンバー』。被験体でも、1人1人ナンバーが付いてるんだ、名前代わりに、だけど。普通の被験体は、みんなオリジナルナンバーのDNAから作られたクローンなんだ。だから普通の被験体はみんな、『クローンナンバー』。それとは逆に、俺達オリジナルナンバーは、実験塔に勤めている者達の子供か、もしくは妊婦ごと拉致して、その子供にオリジナルナンバーを付け、幼い頃から、特殊な訓練を強いられた者。それぞれ、特殊な力を与えられる。もちろんそれは、薬を創るエキスパートである実験塔が何回もの失敗や成功を繰り返してできた薬だけどね。薬は千差万別。1人1人違う。同じ能力を持つものは居ない。そして、それぞれの能力を生かした『任務』をさせられる。任務では、実験塔の秘密を知っていそうな者、知っている者、そして、身内でその秘密を広めようとした者を、1人1人殺していく。・・・単純なことだ」
 ロバートは目を伏せて、感情のこもっていない表情で言う。












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