第3話 決戦!(嘘)海鳴大学病院や
次の日、ゼロの傷は、ほぼ塞がっていた。
感心するはやて、
「凄いなあ、もう治りかけとる。うん、これならお風呂に入ってさっぱりした方がええよ」
「オフロ?」
ゼロは不思議そうに聞く。
「分からんか…え~と、体の汚れを落として疲れをとる所や」
ゼロはそれを聞いて納得顔をする。
はやてに案内されて風呂場に行ったが、どうすれいいかわかない。
「はやて、どうすればいいんだ?」
ウルトラ族は、体の汚れやリフレッシュに、『プラズマ・シャワー』という光の粒子を浴びる位なので、入浴というものがちょっとピンと来ないのだ。
そんなゼロに、はやては使い方や入り方を一から教える。
「ああ、だいたい分かった。ちょっと面白そうだ。」
たちまち覚えてしまった様だったので、安心して台所に行き夕食の後片づけをする。
今日もゼロは、たっぷり食べた。見ていて嬉しくなる見事な食べっ振りである。
(誰かと食べるのは楽しいなあ)
思わず顔がほころぶはやてだった。
片づけも終わり、一息つく事にする。
この間借りてきた本を、少し読んで見ようとページをめくる。
とても面白くつい読み耽っていた。
気が付くと、2時間近く経っていた。
「しもたっ、もうこんな時間やゼロ兄?」
そこではやては、ゼロの姿が見えない事に気付いた。
「ま…まさか…」
いや~な予感がして、大急ぎで浴室に向かう。扉を開くと熱気が凄い、
「ゼロ兄!?」
そこには、見事に茹で上がっているゼロの姿があった…
はやての声に反応して顔を向ける。
「ち・地球の…お風呂とやらは…なかなか気持ちいいな…だが…これしき俺には軽いぜ!フハハハ…」
と…どう見てものぼせている男は、そうのたまった…
「かんにんなゼロ兄。初めてやから、私が気い付けなあかんかったのに…」
頭に氷嚢を乗せて、ソファーにぐってりしているゼロに、はやては申し訳なさそうにうつむく。
ゼロは体を起こし、きまり悪そうにして
「いや…そのな…俺も途中で、やばいかなと思って出ようとしたんだが、何か、負けた様な気がして、つい…な?」
はやては吹き出してしまった。
「もう…お風呂は我慢する所やないで、ゼロ兄はしゃあないなあ。」
笑いながらも、この後しっかり注意しておくはやてだった。
地球生活2日目のゼロはまだ、こんな感じである。
さて、ゼロが八神家に来てから、さらに3日が過ぎた。
その間、はやてから日常に必要な事や、一般常識を教えてもらっていたのだ。
一通りの常識(少し怪しいのだが…)を身につけた所で、はやては外に出てみようと提案した。
知識だけより、経験も大事だと思ったのだ。
何しろゼロの地球に対する知識は、『えらく厳しい格闘技の師匠』に『ちょっと天然気味の先輩』から聞いていた話に、記録映像位なので色々間違っていたり、偏っていたりしているのだ。
はやての車椅子を押しながら、とりあえず図書館目指して出発する。
あまりに故郷と違うので、キョロキョロしてしまう
(まるで、おのぼりさんやな…)
そんなゼロを見て、おかしくなるはやて、
しばらく行った所で、ゼロの様子が変な事に気づく。
どうも車が通るたびに異常に警戒しているのだ。
「ゼロ兄?確かに車には気いつけた方がええけど、そこまで緊張せんでええよ」
はやては、声をかけるが、ゼロは緊張を解かず、
「いや…師匠に聞いたんだが、車ってのは恐ろしいもんで、どこまでも追われて、ひき殺されそうになった。車というのは怖えって、さんざん聞いたからな!
はやてももっと気をつけねえと、危ねえぞ!」
大真面目な顔で言った。
ゼロの言う師匠とは『ウルトラマンレオ』の事である。
レオが地球で戦っていた時とある敵に敗れた、その敵に勝つ為の技を編み出せと命令されたレオは、延々と車に追い回され、ひき殺されそうになるという地獄の特訓を受けたのだ。
レオはちょっとトラウマになったようである。
ちなみに命令を出したのもレオを車で追い回していたのも、ゼロの父親なのだが…
理由を一通り聞いたはやては、
(ゼロ兄…それって絶対からかわれとるよ…)
と心の中でのみ、突っ込んでおいた。
いちいちカルチャーショックを受けながらも、図書館にたどり着いた。
紙の記録が珍しいゼロは、興味深そうだ。
はやてに言われた本を大量に持って来て、勉強用の机に置く、
百貨辞典や社会の仕組みに関するもの、歴史書地理などの分厚い本ばかりである。
はやてはゼロの横について
「とりあえず、基本的なやつをピックアップしてみたんや。
ネットもいいんやけど、数も多いし色々ありすぎて混乱しそうやから、まずは基本から行ってみよ」
しかし、凄い分量である。
だが、ゼロは気にした風もなく読み始めた。
どんどんページをめくるスピードが上がっていく
やがてその速度は、ただページをめくっているだけの速さになった。
辞典クラスの本の山が、瞬く間に読破されていく。
さすがにウルトラマン、知能指数はとんでもない。
何しろ最初に地球に来た時、日本語が話せるだけで読み書きもできなかったのを1日でマスターしてしまった位なのだ。
その後も本を読みまくり、数時間で数百冊の本を読みきった…
だいたい、一週間ほど図書館に通い、はやてにも教わって、とりあえず日常生活を送れる様になった。
それから1ヶ月、季節は夏に入っていた。
今日は今までの特訓の成果を試す日である。
海鳴大学病院に行きはやての主治医、石田先生にあいさつをするのだ。
「へえ~海外留学していた親戚の子なんだ?」
石田先生は驚いた顔で言う。はやては天外孤独だと思っていたからだ。
「モロボシ・ゼロです。よろしく…」
真面目くさって、あいさつするゼロである。
「しかし、凄いわね。外国の学校を飛び級で進んで、15才で大学を卒業…それを機に日本に帰って来て、はやてちゃんの現状を知り一緒に住む事になったと?」
「はい、それが一番かと、父は南米の奥地で採掘関係の仕事をしていて、当分帰って来れないので」
嘘っぱちの経歴を内心冷や汗もので話すゼロ。
横ではやてが、がんばってと目で励ます。
もっとも、この経歴は調べられても困る事は無い、
ゼロはその超能力を使い、本物の書類を手に入れているからだ。
簡単に言うと、自分をデータ化して関係各所のデータベースに侵入し、新しく戸籍と経歴を作ったのだ。
名字は、父セブンが地球で名乗っていたモロボシを使い、名前はゼロをそのまま使う事にした。
ちなみにゼロの嘘くさい経歴は、はやてが決めた。
最初色々考えたのだが、めんどくさくなったゼロは、もうニートでいいと言ったら、はやてがこの流れだと、某天然女子高生ギタリストと同じだから駄目と謎の理由で却下された…
で、今の経歴で決定したのは、
「ラノベに出てくる人みたいで、なんかええよね」
だそうである。
そんな事も知らず石田先生は、ゼロの手をガッチリ握って
「良かったわ!モロボシ君の様な親戚がいてくれて…
いくらしっかりしていても、はやてちゃんはまだ小学生だもの…心配だったのよ。
はやてちゃんをよろしくお願いね!」
「は・はい、頑張りますっ」
石田先生の勢いに返事をする。
この先生本当にいい人なのだろう、
「はやてちゃんも良かったわねっ」
「はいっ、とても!」
はやては、心の底から返事をした。
診察室、今ゼロは石田先生と向かいあっていた。
はやては別室で検査中である。
「モロボシ君、はやてちゃんの病気は原因不明の神経性マヒなの」
石田先生の表情には、悔しさがにじんでいた。
原因不明などという言葉を使わねばならない、自分の無力さを痛感しているのだろう。
「原因不明ですか…」
ゼロは心が重くなるのを感じた…が、気を取り直し
「足のマヒ以外は、大丈夫なんですか?今のところ、他は健康そのものですが…」
石田先生は少し考え、
「大丈夫だとは思うけど…原因不明の事もあるし…楽観はできないの…
だからモロボシ君には、はやてちゃんの支えになって欲しいのよ」
ゼロは支えになって欲しいと言われ、少し困惑する。
何しろ今支えられているのは、どう考えても自分の方である。衣食住から、地球での生きていく術まではやての世話になっているのだ、
そんな自分が支えになどなれるのか?ゼロはそう思ったが… 石田先生は話を続ける。
「はやてちゃん…ご両親と死に別れてから、ずっと1人だったでしょう…
病気のせいで、学校にも満足に行けない…そんな境遇なのにつらい事悲しい事を、1人で抱えこんで、大丈夫って笑う子なのよ…」
石田先生は長い間、はやての主治医として接してきただけに、その性格をよく分かっていた。
「でもね…最近、モロボシ君が来てから、はやてちゃん本当に楽しそうに笑うのよ、
前は、笑っていても、どこか儚げだったのに…」
ゼロは、心の底から楽しそうに笑うはやてしか見た事がなかったので意外だった。
石田先生は、ゼロの目を見つめ
「だから、何も特別な事をしなくてもいいから… はやてちゃんの傍に居てあげて…」
「分かっぜ!先生!」
即答していた。
自分が居るだけではやてが元気になるのなら、お安い御用だった。
ただ、勢いつきすぎて素の喋り方になってしまったが…
その夜、検査やらで疲れたのか、少しグッタリしているはやてと風呂に入る。
ゼロが最初に風呂でのぼせて以来、そうなってしまったのだ。
はやてはそれが楽しいらしく、ゼロは地球ではこれが当たり前だと説得され、普通に入ってはやての背中を流している。
もっとも、後になって本当の事を知り青くなった上に、後々まで悩まされる事になるのだが…それは、また後のお話である。
風呂から上がり、寝る支度をして、はやてを抱きかかえ部屋のベッドに寝かせる。
そこでゼロは昼間、石田先生から聞いた話を思い出す。
「はやて、少し足を見させてもらうぞ」
はやては、不思議そうにする、
「ええけど…?」
ゼロははやての足をそっと押さえ、透視してみる。
今の体はほとんどの超能力は使えないが、透視位は出来る。
しかし、よく分からなかった。
一見異常は無さそうなのだが、少しおかしい様な気もする。結局ゼロに分かったのは、自分にも分からないという事だけだった。
「ゼロ兄?」
真剣なゼロを見て声をかけるはやて、ゼロは透視を辞め、
「ああ…悪い、何か分かるかと思ったんだが…駄目だった。すまねえな、役に立てなくて」
いささか、落ち込んでしまう。
そんなゼロの服の裾をはやてが握った。
「何言うてるんや、ゼロ兄には感謝してるんや…」
微笑むはやて、
「そ、そうか…じゃあ、お休みだ。またなっ」
何となくこそばゆいものを感じ、部屋を出る事にする。
名残惜しそうにはやても手を離した。
「おやすみゼロ兄…」
はやてはもう、 うとうとしている。
そっと部屋を出て行こうとするゼロの目に、一冊の妙な本が映った。
かなりの年代物らしい、中央に宝石をあしらった十字の鎖で封をしている様だ。
何か引っかかるものを感じたが、特に何も無いようなので、ゼロは部屋を後にした。
はやての部屋にあった一冊の本。
それこそが、『第一級ロスト・ロギア』
《闇の書》であった…
つづく
ゼロがどんどんへたれになっていきます。早く変身させてかっこいい所を見せたいものですが…
次回で、無印前の お話は、終わります。
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