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サンタに恋した女の子。
作:Maria


私が恋した人は実はサンタだった、って話…





机の上にはペットボトルのコーラと黒いF906iが無造作に置かれていて、それをさえぎるように大きな腕が陣取っている。
「激写!…おはよ。」



やっぱりサンタさんは赤い服が好きみたいだ。
私の恋したサンタさんは、ファッションセンスも抜群なのだ。
「ん〜…?」



…やばい!
起きてしまった。
私は慌てて後ろの方の席へと向かった。


大きい教室は、いかにも"大学"という感じがして大好き。



「おはよう!」



「おは〜!」



…サンタさんは、大人気だ。
だけど仕方ない。
だってサンタさんはみんなのサンタさんだからね。



「お前いま写メ撮ったりした?」



「何それ〜?恭一(きょん)なんて撮ってどうすんのって話だしーあはは!」





ごめんなさい。
写真を撮ったのは私です。








そうこうしているうちに先生が教室へ入ってきて、授業が始まった。
今日のテーマは先週に引き続き、"Brown&Levinsonのポライトネスストラテジー"についてだ。
「すべての人間は常に二つの願望を持っていて、私たちは常に相手のどちらかの願望を脅かす可能性がある」



ポジティブフェイスの方は赤いペン、
ネガティブフェイスの方は青いペンでアンダーラインをひいた。
自分でいうのもなんだが、私はノートやプリントの取り方にはけっこう自信がある。





「じゃあ橘さん!今日いる?いるね。ポジティブフェイスについて簡単に説明してみて。」



こんな広い教室で当たるなんて珍しい光景だ。
私はなんてついてないのだろう。



私は周りをちらちらと気にしながら答えた。
「えっと…ポジティブフェイスは、相手と仲良くなりたいとか、そういう願望です…。」



「そうだね。じゃあネガティブフェイスは何だった?じゃあ…白井くん!」



…サンタさん!



私が恋したサンタさんは、とても穏やかな声をしている。
「ネガティブフェイスは、一人でいたい、相手と距離をおきたいみたいな願望です!」



あぁ、なんて素敵な声に完璧な答え、堂々とした話し方だろう。
さすが私のサンタさんだ。



それからの80分間はずーっとサンタさんに見とれていて、あっという間に授業は終わっていた。
…いつもどおりだ。





授業が終わり、教科書やプリントをしまい立ち上がった所で奇跡が舞い降りた。
真夏に雪が降り注いだのだ。
「さっきびっくりしたよね!突然当たるなんてさ。しかも、俺らだけ〜まじ緊張したよね、ははは!」



「…え!?あ…うん!えと…白井くんも緊張してたんだ!」



「そりゃするよ〜!不意打ちだし100人近く人いるしさぁ。緊張してるように見えなかった?」



「全然見えなかったよ!むしろ余裕って感じでやっぱりさすがサンタさんだなぁって思っちゃった!」



サンタさんは飲みかけようとしたコーラで喉を詰まらせてしまった。
「…ケホッ!何サンタさんって!ゴホ…あはは!笑わせないでよ〜橘さん!」



サンタさんは私の名前を知っていた。
なんて素敵なの。



「…や、何でもない!それよりどうして私の名前…?」





「真希の友達だよね?新城真希わかる?俺観光論の授業で一緒なんだよね。あ!あと谷村とも俺仲良いよ〜。」



「そうなんだ!真希わかるわかる。谷村…和樹?へ〜ぇ!意外と狭いもん、だね。」



…私いま、サンタさんと普通に会話してるよ〜!
どーしよー!!



こうして私はサンタさんの友達になりました。





あれから私たちはよく話すようになり、いわゆる"仲良しさん"になった。
あの授業の教室も、となり同士に座るようになった。
「あれ…唯依(ゆい)、携帯変えた?俺と色違い?」



サンタさんの手が私の新しい携帯電話を持っているなんて不思議。
ついこの間まではまるで信じられないような光景だ。
私は真似したことがバレないように精一杯の演技をした。
だけど、
「真似っこじゃーん!真似っこ唯依〜!」



…バレていた。



「あの…なんか…ごめんね!!」



「ぷ…はは!いいじゃん真似っこ。お揃いだね♪」



お揃い…♪



やっぱりサンタさんはさすが!
一瞬で私を幸せにして、数え切れないほどの素敵なプレゼントをくれるのだ。





サンタさんは大好きなコーラを飲んだ。
思わず見とれてしまうなぁ。
どれだけ一緒に居てもやっぱり慣れない。



大きな腕が私の方に伸びてくる。
「飲む?」



…か、間接ちゅー!!



「飲まない?」



飲みたいけど…だけど…



「じゃああーげない!」



サンタさん…



サンタさんは大きく笑いながら、私を見つめている。
ドキドキが止まらない。



「あ!そういえばさ、確か唯依けっこう前に俺のことサンタさんとか言ってなかった?何で〜?」



サンタさん。



「…サンタさんだから!」
そういって私は恥ずかしさのあまり教室を飛び出してしまった。
サンタさんは今になって考えれば、ぽかんとしていたような気がする。






白井恭一くん。
君は覚えていますか?
私たちが初めて出逢ったあの真冬のことを──














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