魔王は言った、「全軍撤退。」
( `・∀・´)ノヨロシク
魔王及び四天王が集う会議にて、絶対権力者の魔王は開口一番、こう言った。
「全軍撤退。」と・・・・・・。
四天王は耳を疑った、先代魔王の跡を継ぎ、つい先月に新魔王となった者の口から「全軍撤退。」などという言葉が飛び出るとは夢にも思わなからだ。
四天王の一人、執事の格好をした青年、炎の魔人イフリートが質問を投げかけた。
「冗談でしょうサタン様?」
「いや、冗談などではない。すでに今の一声で魔物は撤退を始めている。」
髭を生やした老人が怒鳴る。
「サタン様、いったいどういうおつもりですか!魔物がいなくなれば人間どもへの牽制が無くなるのですぞ!!!」
「まあそう怒るな、土の魔人ノームよ。私にも考えがあるのだ。」
ノームは興奮が収まらないままに、口を開いた。
「そのお考えとやらをお聞かせ願えるのでしょうな、魔王陛下!!」
「もちろんだとも。撤退させた魔物は、一部を除き私のもとへ還元する。」
魔物は魔王の魔力をもって世に生み出された魔法生物である。
出生率の低く、寿命の長い魔族は人類との攻防での数の不利を、魔物を生み出すことで補っていた。
「へいかー、やっぱり数は力だと思うよー。やめたほうがいいに決まってるよー。」
「風の魔人たるシルフもこう言っております。再考するべきですぞ!!」
「ワタクシもノームに賛成ですわ。」
「ほれ見てくだされ陛下。水の魔人ウンディーネもこう言っております。わたくしノームを加えて三人が反対しております!!!
おい、イフリート、お前はどうなんだ!?」
「ノームよ、そう慌てるな。まだサタン様から理由を伺っていないではないか。サタン様、理由をお聞かせ願えませんか?」
「うむ良かろう。
ウンディーネよ、交戦して敗れた魔物がどうなるか知っておるか?」
「もちろんでございます。剥ぎ取られ、人間どもの道具になり果てております。それが一体この件とどのような関係が?」
「大いに関係がある。武器となった魔物に対し、撤退命令を出せばどうなると思う?
答えは・・・・『ドーン』」
魔王の答えは衝突音にかき消された。
「来たか。四天王よ、窓を見るとよい。」
魔王が指をさしたその先にあるのは、飛来する万を超える数の武器だった。
「各々、自分のの周りに障壁を張れ。気張るのだぞ。」
ガシャン
窓を一瞬で突破した武器の群れは一直線に魔王に向かって飛んで行った。
ゴン、ゴン
窓に当たらず、壁に武器がぶつかる音と、運悪く武器と魔王の間にいた四天王が障壁で防御する音が鳴り響いた。
一時間は優に過ぎただろうかという頃、武器の嵐は止んだ。
「はあ、はあ。これはいったい・・・。」
「あれ?武器が消えてるよ?」
武器の嵐が止んだ後、残されたのは傷ついた魔王城と疲労した四天王であった。
シルフの声で他の四天王たちも武器が消えていることに気が付く。
「フハハハハハ、成功だ。どうだ見たか、我が四天王よ。これが我が策だ。」
「失礼ながらサタン様。このイフリートめには武器の嵐が来たこと以外さっぱりでございます。どうかご説明を・・・・・・。」
「いったいどうなっておりますの魔王様?」
「どうしてー?」
「どういうことですかな魔王陛下?」
ニヤリと笑って魔王は答えた。
「まだわからぬか四天王よ。
魔物は私の言うことを聞く。では、死んだ魔物はどうだ?死んだ魔物も繁殖はしないとはいえ魔物には変わりない。それはアンデッド系の魔物が実証している。魔物の死骸に私が命令を下せばアンデッドとして蘇る。
では、死んだ後に私がアンデッドとする前に加工されたものはどうだ?
加工されたものも魔物の一部には変わりあるまい。」
((((そうか!!))))
「私は命令を出した全軍撤退とな。そこに区別はない。生きていようが、生きていまいが関係ない。
さて、明日の今頃には生きている魔物がここに集結する。生きているから無理ができずにゆっくりなっているがな。
先ほど人間どもの武器は全て我が魔力へと還元した。人間どもには武器も鎧も道具もない。
さあ、我が四天王よどうする?」
四天王は口をそろえてこう言った。
「全軍突撃でございます。」
こうして戦争は終わった。
世界に平和が訪れた。
魔族の平和が・・・・・・。