第7話:鮮血の脱出劇
PM17:20。
辺りは既に薄暗くなっていた。
生徒会室から脱出したケイ達は警察署に向かうため、学校から脱出しようとしていた。しかし、大量のゾンビが門の前に集まっていたため脱出が出来ず、校内を移動しながらゾンビと戦っていた。
「うおおおお!!!」
ケイは雄叫びを上げて走りながらM4を連射する。フルオートで発射される弾丸は狙いが甘くなってしまい先ほどよりも無駄弾を消費してしまうが、前方にいるゾンビ達は瞬く間に倒されていく。
「ウオラァ!!!」
「はあ!!」
ケイの後ろでは、左右に一文字と黄泉がついていた。
一文字は掌打や蹴りで近づくゾンビを吹き飛ばし、黄泉は木刀の一撃で一体づつ確実に仕留めていく。2人はケイの銃撃の範囲外から近寄ってきたゾンビ達を迎撃し、進行が妨害されないようにしていた。
「この、この!」
黄泉達2人の後ろでは、野辺がケイ以外のメンバーに援護射撃を行っていた。
元々射撃が上手いわけではなく、さらには射程距離が短い9ミリハンドガンを使用しているため外すのも多かったが、弾丸が着弾時の衝撃によって相手にダメージを与えることを重視するホローポイント弾だったため、胴体に当たっても動きを止めることが出来た。そのため、ゾンビが近くに来ても野辺の援護射撃により事なきを得ることが出来た。
「ふん!」
「うわあああ!!」
今田と松村は最後尾でバットを振り回し、ゾンビの頭をかち割っていた。
今田は近くまで来たゾンビのみ殺害し、それ以外は足を叩き割ったりして足止めをするだけに留め、体力をあまり使わない戦い方をしていた。
松村はこういう修羅場に対する免疫が皆無だったため、半ばパニックになっていたが、それでもゾンビの迎撃と皆についていくことは忘れなかった。
夕日は攻撃手段を持たなかったので、中央で怪我人の手当てが出来るように待機していた。
「くそ! いい加減しつこいぜ!」
一文字がゾンビを殴り飛ばしつつ叫ぶ。
「このままでは体力が尽きてしまうぞ!」
黄泉は掴みかかってきたゾンビを受け流し、避けられたゾンビが通り過ぎるとその背中を蹴り飛ばした。蹴られたゾンビは他のゾンビを巻き込んで地面に倒れ込んだ。
(くそ! どうする・・・。)
ケイはM4が弾切れになったため、近寄ってきたゾンビをストックで殴りつけながら必死で考える。
既に先程から続いている戦闘により、全員の体力はかなり消耗している。このままではいずれ全滅してしまうだろう。
(考えろ・・・、どんなときにも必ず突破口はある・・・。)
同じく今田も、ゾンビの首にバットを叩き込んで頚椎を折りながら突破口を考える。
(全ての門にはゾンビが集まっていた・・・。)
(一番少なかったのは西門・・・だけどこの装備じゃ突破は無理だ。)
(塀は高いから登るのは不可能・・・、となるとやはりゾンビをどうにかしなければ・・・。)
(でかい火力があれば・・・。)
2人が必死で対抗策を練っていると、不意に夕日が呟いた。
「あんなにたくさんだと・・・車でも通れない・・・。」
((・・・車・・・?))
その言葉を偶然聞いていた2人は、あることを思い出し、同時にそれを叫んだ。
「「装甲車だ!!!」」
2人はお互いを見ると、頷きあって装甲車が放置してある昇降口下に向かう。他のメンバーも慌てて後を追う。
「い、一体どうしたのだ!」
黄泉は2人の突然の行動に戸惑い、その真意を尋ねる。
ケイは笑みを浮かべて説明をする。
「夕日さんの一言で思い出したんだよ! あの装甲車なら、ゾンビの群れを突破できるかもしれない!!」
「それホント!?」
野辺がようやく現れた突破口に食いつく。
「恐らくな。だが、それには運転手が必要だ。」
今田はそう言うと夕日を見た。夕日は自分が何をすればいいか理解したのか、力強く頷いた。
それを確認すると、ケイはM4のマガジンを交換しながら全員を叱咤する。
「こっからが正念場だ! 気引き締めろ!!」
『おお!!』
全員が一斉に返事をすると、装甲車へ突っ走る。
「うおおおおおお!!!」
「だらああああああ!!!」
松村と一文字が雄叫びを上げながら先頭に立ち、進路上に居る邪魔なゾンビを蹴散らしていく。
ケイと野辺は夕日を庇いながらゾンビを狙撃していく。
「ふん!」
「かああ!!」
黄泉と今田は気合の入った声を出しながらゾンビを殴打していく。
全員が一丸となって戦い、ついに装甲車へたどり着いた。
一文字・黄泉・野辺は装甲車の外に残って時間稼ぎの役を行い、運転手である夕日は急いで装甲車の運転席に座り、なんとか動かそうとするが、普通乗用車とは勝手が違うため、かなり手惑っている。
やることの無い今田と松村は黙って中で座っている。
そしてケイは中に入ると急いでガンポートに上がり、車体上に据え付けられているベルト給弾式重機関銃ブローニングM2の準備をする。
安全装置を外し、射撃準備を終えると、下で戦っている3人に叫ぶ。
「お前ら中に入れ! 巻き添え食らうぞ!!」
ケイの言葉に真剣さを感じた3人は急いで車内に入り込んだ。仲間が外にいないことを確認すると、ケイはM2を掃射した。高速で発射される弾丸と、排夾されていく空薬莢。むせ返るほどの硝煙の匂い。
銃口から吐き出される12.7mm弾は、近くに居た10数匹のゾンビの集団を僅かな時間で肉塊に変えた。
次に、装甲車の周辺に来ていたゾンビ達に銃口を向けた。瞬く間にゾンビ達の手、足、指、血、肉片、骨などが辺りに散らばっていく。
「オオオオオオオオオオオオ!!!!!!!」
ケイの咆哮と銃声が周囲に響く。ケイは弾丸が発射されるごとに自分の理性が擦り切れていくのを自覚していた。
装甲車周辺に血と肉片の海を作り終わると、ケイは西門へと銃撃を放った。
「らあああああ!!!!!」
西門の辺りに集まっていたゾンビ達も、ドンドン撃たれていくが、ついにM2の弾が切れた。M2が弾切れになると、ケイは車内に戻った。
「おいおい、外が血の海じゃねーか!?」
「ちょっと殺りすぎた!」
「これはちょっとじゃないでしょ・・・。」
車内に下りていくと、一文字と野辺が外の惨状を見てケイに話しかけてくる。しかし、言葉とは裏腹に特にケイを責めている風には見えなかった。
2人は気づいているのだ。これから先、これぐらいの惨状が山程あることを。だから言及したりはしなかった。
「夕日さん、どうですか!?」
「これで・・・、動く・・・!」
ケイが車内に入って聞くと、丁度夕日がエンジンを掛けたところだった。
「皆・・・・掴まって・・・!」
「発進するぞ!! 何かに掴まれ!!」
ケイは怒鳴りながら降りてきた梯子を掴む。他の者も近くの手すりなどを掴み、衝撃に備える。
「行くよ・・・・!」
夕日は全速でバックした。装甲車は運転しながら背後を見れるわけではないので、進路上に教室棟の2階の渡り廊下を支えている柱があることに気づけなかった。
装甲車はゾンビを轢き殺しながら、渡り廊下の柱にぶつかり、そのまま柱を破壊してしまう。
「のおお!?」
「きゃあ!!」
「うわあ!?」
「うおっ!?」
いきなり来た衝撃に驚く車内のメンバー。
装甲車はそのまま走り、門から少しずれていたため塀を破壊して外に出た。そしてまた衝撃に襲われる車内。
「ゆ、夕日さん、もうちょっと優しく運転してくれ!!」
「ごめん・・・無理・・・。」
たまらず一文字が抗議するが、夕日の方は久しぶりの運転でかなりテンパっているらしく、ほとんどまともな運転が出来ないようだった。
そして、そのまま道路を挟んだ一般家屋に突っ込んでしまった。
車内は運転席に座っていた夕日以外、全員が体をどこかにぶつけていた。
梯子に顔をぶつけたのか、顔を押さえているケイは、小さな声で呟いた。
「・・・夕日さんの運転は死人が出るな・・・。」
「それは・・・同感だ・・・・。」
右即頭部を押さえている今田はケイの意見に同意した。今田はこの作戦に少なからず後悔していた。
「・・・トラウマになりそう・・・。」
「俺も・・・。」
床に転がっていた野辺と一文字がよろけながら立ち上がる。2人とも顔面が蒼白になっている。精神的なダメージは大きいようだ。
「ふう・・・、スリル満点なドライブだったな・・・。」
「もう車には乗りたくないです・・・。」
唯一平気そうな顔をしている黄泉。松村は青い顔をしている。しばらくは車に乗る度に震えだしそうだ。
散々言われた夕日は、何食わぬ顔で外に出ていた。
「う・・・。」
外は先程のケイの銃撃と装甲車での暴走により、道路に血の川が流れていた。恐らく装甲車が走った後に血の跡が残り、それが川になったようだ。
さらには元は人の形をしていたものが無残に散らばっており、医者である夕日ですら吐き気を催していた。
他の者も、外の惨状に言葉を無くす。
「く・・・これはひどいな・・・。」
「血の匂いがかなり濃くなっている・・・。」
「うわあ・・・・。しばらくお肉は無理ね・・・。」
「・・・・グロッ。」
「・・・ホントにやり過ぎた。」
「う・・・オエエ!!!」
幸いにも吐いたのは松村だけだったが、全員これほどの惨状を実際に目にするのは初めてだ。精神面でダメージを受けていない者はいなかった。
そして、全員が悟っていた。
この惨状に劣らないものが、この先に待ち構えているであろうことが・・・。
「行こうぜ。じっとしてても意味ねえしな。」
「そうだな・・・。」
一文字とケイが歩き始めると、他のメンバーもそれについていく。
こうして、学校から脱出した7人は警察署へ向けて歩き出した。
闇は深くなっていくばかり。屍と肉片を積み重ねた先に、光は存在するのか・・・。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。