第2話:最初の交戦
突然学校に突っ込んで来た装甲車。普段はテレビでしか見れないごついフォルムの車に、次第に人が近づいてきた。
無論敬・一文字・野辺の3人も近くに来て装甲車を見ていた。
「一体何で装甲車が・・・。」
「そんなこと、分かるわけないでしょ。」
「そうだな。びびって倒れそうになった奴が知ってるわけ無いか・・・。」
「・・・それ今関係あるかしら?」
「止めろ、喧嘩してる場合じゃねえぞ。」
流石にこの状況では敬が止めに入る。2人も渋々黙り込んだ。
2人が黙ったのを確認すると、敬は装甲車を調べる。
少し離れた場所から見ても、車体には明らかに不自然なものが大量に付着していた。
恐らくは血であると思われる赤い液体が付いていたのだ。
そのことに気づいた大半の者は顔色を悪くしているが、数名だけ表情を険しくしている者がいた。
敬もその内の1人だ。
(どうやら街で何か起きてるみたいだな・・・。ここは街外れにあるから異変に気づけなかったが、この様子じゃ相当危険なことになってる・・・。しかもこれだけ車体に血が付いてるってことは、それだけなりふり構わず飛ばしてきたってことだし、これはやばいかもな〜。)
敬が考え込んでいると、横から野辺が声をかけてきた。
「ねえ、誰か車に近づいてくわよ。」
「何!?」
驚きながら野辺の指差した方を見ると、体育教師の護摩騨が装甲車の横のドアに近づいていた。
「おいおい正気かよ? あんなのに普通近づくかあ?」
「おい、近づくな!!」
一文字は呆れ、敬は相手が先生ということも忘れて怒鳴るが、護摩騨は生徒の1人が喚いている程度にしか捕らえず、そのまま装甲車に近づいてドアを開けた。
ドアを開けると、迷彩服を着た男が倒れてきた。
「うおお!?」
護摩騨は驚きながらもそれを避けた。どうやら男は死んでいるらしく、頭部から大量の血が流れていた。壁に激突したときに強打したらしく、壁には血痕が付いていた。
護摩騨は死体を避けながら車内に顔を突っ込み呼びかける。
「おい! 誰か居ないのか!?」
大声で怒鳴ったからか、すぐに車内の隅の方で誰かが動いた。護摩騨はそれが生きている人間だと思い、手を伸ばす。
「大丈夫か・・・・!?」
だが、そいつの顔を見て固まる。
先ほどの死体と同じ迷彩服を着ている外人らしき人物は、人間の腕を食っていたのだ。
さらに、顔には血の気が無く頬肉の一部が無くなっており、口の中が見えていた。
そいつはゆっくりと立ち上がると、よたよたと安定しない足取りで護摩騨に近づいていく。
「や、止めろ・・・。来るな・・・。」
護摩騨は恐怖で思考が停止寸前になっており、ただ相手が近づく分だけ後ろに下がることしかできない。
やがてドアの辺りまで来て、足を踏み外して車内から落ちてしまう。
ドアのすぐ傍に倒れた護摩騨は、体をしたたかに打ってしまい身動きが上手く取れなかった。
「うう・・・。」
いきなり落ちたため、状況の把握ができないでいる護摩騨だが、相手は待ってくれなかった。
護摩騨がドアの方を見ると、車内から男が倒れ込むように出てくるところだった。
「ひ、ひいいいいいいいい!!?」
護摩騨は恥も外聞もなしに悲鳴を上げたが、腰が抜けており、逃げることが出来なかった。
男が倒れ込むと同時に、護摩騨の喉笛に今まで感じたこともないほどの激痛が走った。
「ギャアアアアアアア!!!!」
護摩騨が車内から飛び出してきた謎の男に食われていくのを、その場に居た全員が呆然と見ていた。
そして護摩騨の悲鳴が無くなり、男が護摩騨の頭を噛み砕いて脳を食ったとき、ついに耐えられなくなった女子生徒が悲鳴を上げた。
「イ、イヤアアアアアアアア!!??」
その声を皮切りに、その場に居た者は我先にと逃げ出していく。
「うわあああああ!!?」
「し、死にたくねえよお!?」
「ど、どけえ!!!」
「嫌ああああ!!」
悲鳴と怒号が交差し、ほとんどの人が逃げていく中、この場に残った者もいた。
敬・一文字・野辺の3人と、もう1人。
「貴様・・・やってくれたな!!」
肩まで伸びているポニーテールに、強い意志が感じられる瞳。ロングスカートに手に持った木刀が、彼女の性格を表していた。
彼女は護摩騨に食らい付いている男に近づくと、木刀を横っ腹へと叩き込んだ。
「ふん!」
骨が折れる音とともに男が護摩騨から引き離され、アスファルトに転がった。
「これで大人しく・・・。」
しかし、男は平然と立ち上がった。
折れた肋骨が肉を貫いて体から出ているにも関わらず、全く痛みを感じていない様子で近づいてくる男に、彼女は我知らず後ろに下がっていた。
『オラア!!』
そのとき、敬と一文字が彼女の元に駆けつけ、男の腹部へ2人同時に蹴りを叩き込む。
木刀で殴られたときよりも吹き飛ばされるが、すぐに起き上がってくる。
「やっぱ効かねえか・・・。」
「おいおい、今の結構本気でやったんだぜ?」
「まるでゾンビだな・・・。」
平然と話しをしている2人を見て、彼女の顔が驚愕を浮かべる。
「き、君は一文字錬太郎!?」
「お、誰かと思えば生徒会長どのか。ごくろうさん。」
「君に助けられるとは・・・。」
この学校で生徒会長をしている3年生の瑞田黄泉は、一文字が自分を助けたことに驚いていた。
一文字は心外だとでも言うように瑞田に告げる。
「俺は別にアンタを助けようとは思わなかったぜ。ただ、相方がどうしてもっつうから助けただけだ。礼ならコイツにするんだな。」
そう言うと一文字は瑞田を庇うように立つ敬を指差した。敬は2人と顔を合わせようとはせず、男の方を真っ直ぐ見ていた。
「・・・俺は、目の前で危険な目に遭ってる奴を放っとけるほど、人間できてねえんだよ。」
「・・・ありがとう。」
真っ直ぐに自分に向けられた瑞田からの感謝の念に、敬は「構わねえよ。」とぶっきらぼうに返した。それを見てニヤニヤと笑う一文字。
「・・・んだよ。」
「いやあ。相変わらずもてますなあ。いよ!このスケコマシごふ!?」
「・・・くだらねえこと言った罰だ。」
一文字の腹に拳を叩き込んで黙らせると、敬は男へと向き直った。
相変わらず安定しない足取りでゆっくりと近づいてくるが、どれだけダメージを与えても起き上がってくる男への対処法が思いつかない敬。
「くそ、どうするか・・・。」
「あら、簡単よ。」
すると、野辺が突然男の前に飛び出した。男は野辺を捕まえようと手を伸ばすが、野辺は体を思い切り屈め、それを避ける。
さらに、体を屈めたまま横に移動し、そのまま男に足払いをかける。
男は仰向けに倒されると、野辺に腕を掴まれ上に持ち上げられる。
野辺は持ち上げながら男の顎を上から下へ蹴り付ける。
上に持ち上げらている途中で蹴り付けられ、その衝撃は全て頚椎へと向かい、男の頚椎を簡単に破壊した。
鈍い音とともに、男は今度こそ動かなくなった。
「ふん。他愛ないわね。」
野辺は男の死体を放ると、敬の傍へと向かう。
敬と一文字は呆れた様子でそれを見ていて、瑞田にいたってはあまりの手際の良さに唖然としていた。
「全く、容赦ねえな・・・。」
「つうかゴミみてえに捨てたよな今・・・。」
「悪いけど、人を食う人間相手に慈悲なんて持たないわよ。」
「・・・。」
平然と言う野辺に敬は呆れながらも、男の死体へと近づき、死体を調べていく。
「な、何をしているのだ?」
「コイツが何者なのかを調べてんだが・・・まずいな。」
「? どうした?」
「こいつの顔を見てみろ。」
敬のボディブローから回復した一文字が男の顔を見る。先ほどの戦闘によりさらに損傷が進んでいたが、その顔つきはどうみても日本人では無かった。
「おい、コイツ・・・。」
「アメリカ人?」
「おそらくそうだ。しかも迷彩服を着込んで、こんなものまで持ってるってことは・・・。」
敬は男の腰にかけられていたホルスターから、M92FSと抜き取り、皆に見せる。
「米軍の兵士か・・・。」
瑞田が答えを告げる。それを聞いた一文字と野辺は信じられない様子だった。
「んなバカな! 何でアメ公がゾンビみてーになってんだよ!!」
「それに、わざわざ装甲車で突っ込むなんて・・・。」
「さあな。俺にもわかんねえよ。けど・・・。」
敬はそこで一旦言葉を区切ると、市街地の方を見る。
先ほどまで気づかなかったが、街のほうでは既にいくつもの煙が立ち上っていた。
「とてつもないことが起こってるのは間違いないな・・・。」
惨劇の幕はまだ始まったばかり。
はたして彼等は真実を知り、この街から脱出できるのだろうか・・・。
+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。
この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。