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すいませんすいません、前回から1ヶ月も更新を開けてしまいました。
しかもあとがきに書いていた一人称に変えるということも止めました。重ね重ねごめんなさい。
第10話:望まぬ犠牲
PM11:55。

外が完全に宵闇に染まり、生ける死者のうめき声以外何も聞こえない。時折悲鳴や稀に爆発音が響いてくるが、それもすぐに聞こえなくなる。そんな中、ケイ達が休んでいる川井の家に近づく影があった。
周囲の塀などが作る影に隠れているため詳しくは分からないが、僅かに分かるシルエットから、男だと思われる。
その男は他のゾンビと同じくよたよたと頼りない歩き方をしていた。しかし、どこか違和感があった。
良く見ると、片腕が異常に長い。明らかに腕がコンクリートの地面についている。
そのゾンビは一度川井の家の前で立ち止まり、家を見つめる。
まるで、その中に自分にとって極上の獲物がいることを分かっているかのように。
やがてソレは見るのを止め、家の玄関へと近づいていった・・・・。




「うう・・・・。」

ケイ達が眠っている居間の、廊下を挟んだ反対側にある和室。そこで寝ていた松村は寝苦しさを感じて目を覚ました。
起きるまでに多少うなされていたが、この状況では仕方が無いだろう。
少し寝ぼけているのか、周りをキョロキョロと見渡す松村。居間の方を見て、一文字の体と黄泉のものと思われる足を見た後立ち上がる。

(・・・トイレ。)

尿意をもよおしたのか、念のためにバットを持ってトイレへと向かう。
その時、ガラス戸の玄関に目を向けた松村は、一瞬玄関の前に不審な影が横切るのを確認した。
松村はおかしいと思った。生きている人間ならすぐに入ってくる筈だし、ゾンビだとしてもここまで近づいているならドアを叩くなど、何かしらのアクションを起こす。しかし、今の影は只玄関を通り過ぎただけだったのだ。
安全かどうかの確認をするため松村は玄関に近づく。一瞬居間で眠っているメンバーを起こすべきかと思うが、全員疲れているのだから自分1人で行こうと思い直し、そのまま玄関のガラス戸の前まで近づく。

「どちら様ですか〜・・・?」

松村は小声で外に向けて話しかける。すると、松村の声が聞こえたのか玄関の前に人影が写った。
人影は微かに唸り声を上げながら、中に入ろうとしているのかガラス戸に体を何度もぶつけていた。ドアの開け方すら分からないようで、これで先ほどの不審な影はゾンビだということが分かった松村は寝ていた和室へ戻ろうとした。
このとき、松村は既に後ろを向いていたため気づくことが出来なかった。ガラス戸に体をぶつけていたゾンビが、右腕を振り上げたことに。そして、その腕が異様なまでの長さだったことに。
次の瞬間、派手な音とともにガラス戸が粉々にぶち壊された。

「!?」

突然の出来事に松村が驚きながら勢いよく後ろを向くと、そこには明らかに今まで見てきたゾンビとは違う奴が居た。
血の染み込んだジーンズに、まだ生きていた頃にゾンビやられたのか随分をボロボロのTシャツ。他のゾンビの餌にされたのか、顔や腕、足など所々食い千切られた跡があった。そこまでは今までのゾンビと同じだ。しかし、右腕だけは違っている。
長さが異常だった。太さはそれ程変わってはいないがどう見積もっても3メートルはありそうな長さに、先端から20cmぐらいのところまでに生えている鋭利に尖った棘。
松村は予想外の事態に思考が停止していた。今までのゾンビとは桁が違う相手とたった一人で相対している状況に、彼の心は恐怖で麻痺してしまっていたのだ。
玄関を破壊したゾンビを見ていた、いや目を離すことが出来なかった松村は、ゾンビの口の端が少しだけ持ち上がったように見えた。
あたかも、新鮮な獲物を前にして歓喜に打ち震えているかのように・・・・。
それを見て、松村の恐怖心は臨界点を突破した。
もはや恥も外聞も無く、自分が小さく悲鳴を上げていることにも気づかずに松村は後ろに振り向いて走り出そうとした。
彼にはまだ望みがあった。すぐ傍の部屋に仲間が眠っている。彼等に助けを求めよう。そう考えていた。
しかし・・・次に彼が目にしたものは、ライフルを構えて廊下へと出てくるケイと、どこからか飛び散ってきた紅い液体だった。
そして、彼の意識は深い闇の中に沈んでいった・・・。






ケイはガラスが割れるような大きな音を耳にして目を覚ました。

(・・・? 何だ?)

突然の物音に、寝起きながらも警戒心が出る。
肩と膝に重量を感じるが、そんなことはお構いなしにすぐに立ち上がる。ゴン、という音が聞こえたり微かに不機嫌そうな声が聞こえたが、ケイはスルーした。
まだ寝ている仲間を起こさないよう気をつけつつ、壁に立てておいたM4A1を掴み廊下へと出ながら両手に構える。
そして、信じられない物を見た。

「・・・え・・・・。」

廊下へと出た瞬間、ケイは自分の見たものが信じられなかった。
廊下には松村がいた。そして、玄関のガラス戸が破壊されていて、そこにゾンビが現れている。
そのゾンビから長い右腕と思われるものが伸びており、その先端はこちらを向いたまま固まっている松村の後頭部に伸びていた。
そして松村の後頭部からは今日一日で随分見慣れたものが流れていて、少しづつ床へ垂れていた。
・・・松村は後頭部から大量の血を流していた。

「松・・・村・・・・・・?」

ケイは掠れた声で呼びかけた。松村は何も答えない。只頭から血を流し続けるだけだ。

「おい・・・何か言えよ・・・・言ってくれよ・・・・・・なぁ・・・・。」

本当は気づいている。松村がどうなっているかを。しかし、頭が理解しても、心は理解しようとはしなかった。

「まっつん・・・なに固まってんだよ・・・・・。」

ゾンビの右腕の棘が、ゆっくりと松村の後頭部から抜かれた。
支えを失くした松村の体は後ろ向きに倒れていき、やがて仰向けになって床に転がった。
ドサ、と言う音を聞き、ケイは気が遠くなるような錯覚に見舞われた。
何で倒れてんだよ・・・・。とっとと起きろよ・・・・・。起きて玄関のゾンビに一発ぶちかましてやれよ・・・・。
そんな言葉が浮かんでは消えていき、されども一言も口に出して告げられることは無かった。
やがて、床に松村の血が広がっていく。後頭部からは微かに血とは違う色のモノが流れ出ており、それが何なのか、医学的知識に乏しいケイでも感づいた。
玄関のゾンビは松村へと近づくと体の上に圧し掛かり、容赦なく彼の体に食らいつき、松村の肉を食らってゆく。
それを見て、ケイの心のリミッター的なものが音を立てて切れた。

「あ・・・あ・・・アアアアアアアアアアAAAAAAAアアアアあああ!!!!!!!!」

叫び声を上げながら、ケイはM4A1の銃口をゾンビへと向けて、力一杯引き金を絞る。
夜の闇に、少年の慟哭と連続で響く銃声が木霊していく・・・・・。









世界は残酷な生き物。世界の残酷さを受け入れ諦めるか、泣きじゃくって目を逸らすか、立ち上がって超えていくかはその人次第。



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