Chapter20
「暑ィ……」
意気揚々と外に出たものの、長いこといた保健室の冷房天国と、外の灼熱地獄の温度差が激しすぎて、ソッコーウダるぼくら。
「文明の機器に頼りすぎると人間ダメになるってことを、痛烈に感じるね……」
弱った様子でつぶやくユウヒ。
確かに、いつもならこの暑さでももうちょっと元気なんだけど、今はなんかなんともダルい。
「クーラーは偉大だな」
タクヤの言葉に、大きくうなずくナオ。ちょ、今さっき「文明に頼りすぎると人間ダメになる」っていったばっかだよ?
「そんなんいったってさ……」
「暑ィのはしょうがねえよな……」
なんだよ、ミキもショウヤも根性ナシだなぁ。
「ユヅキにはいわれたくねぇな」
「ねぇ他人の思考読まないでって何度いったらてか何それぼくが根性ナシってこと?」
へらへら笑っているショウヤ。暑いからって人に八つ当たりしないでよ。
「ミノタウロスもよ、このクソ暑ィのにブレザーと長ズボンとか止めろってハナシだよな。みてるこっちが暑ィ」
ゴメンナオそれはぼくも思った。
「絶対脱いだら汗だくだくだよな」
タクヤのせりふに、ぼくの脳内には、涼しい顔してブレザーを脱いだ瞬間にどばどば汗を噴出すミノタウロスが出てきた。(しかも真顔)
「うへっ……それちょっと面白いかも」
「確かに……」
「てか、あの人風操れるんだから扇風機代わりに使ってるかもな」
ナオにいわれて、ぼくの脳内のミノタウロスは扇風機に向かって「あ〜〜〜」とやり始めた。
タクヤが口を挟む。
「でもあの風は、扇風機にするにはちょっと強すぎだろ」
突然扇風機の風量メーターが「極強」にセットされ、バヒュウ!! という凄まじい風に扇風機の前のミノタウロスは「ああぁぁあぁあぁ!!??」
「ぶっはぁ!! タクヤ、それマジウケるっ……!」
「ぶふっ!」
「ぎゃはははははっっ!!」
だって髪の毛逆立ってたよ! もしヅラだったら絶対ヅラ20メートルぐらい飛んでたよ! あはははあはっははあはあ……
「お腹痛い……」
笑いすぎた……自重自重。
「ちょっと、やめてよ変なこと想像させるの」
憧れのミノタウロス様が茶化されて、ミキは面白くないみたい。
「そんなこといってると、ミノタウロス様になにされるかわかんないよ」
「は? そんなん、聞こえてるわけな……いじゃん」
「そうそ……う、ないない」
※ナオとタクヤのせりふの中の「……」は、自分のいったことに自信が持てなくて自問自答していた間です。
「ありえなくないよ? ミノタウロス様、神出鬼没だし。それに、ルールを破らないように監視してるかもしれないもん」
ふたりはミキの反撃で青ざめる。容赦なく追い討ちをかけるショウヤ。
「口は災いの門、って諺、知ってるか?」
反撃できずに口をパクパクさせるふたりに、
「ミノタウロスが、根に持たない性格だったらいいね!」
ユウヒらしい柔らかな笑顔で、死刑宣告を下した。二人の表情が凍りつく。
よかった……ぼく何にもいわなくて。
「あ? ユヅキお前一番派手に笑ってたろうが。同罪だろ、同罪」
え……?
「何想像して笑ってたか知らないけど、あれだけ笑われちゃ傷付くわよ」
口は動くけど、喉が動かない。よって、声が出ない。
「ミノタウロスが、ナイーブじゃないことを祈ろうね!」
ユウヒ……キミの一言が、一番、堪える……。
「あれ? そういや、鳴沢は?」
ブルーな三人(ぼく含む)を無視して、ショウヤが思い出した。
「ん? いわれてみれば……さっきから姿が見えないね」
「どこいったんだろね?」
考え込む三人(ぼく含まず)。
「…………」
そして同時に、頭上に電球が灯る。
『ま、いっか!! 鳴沢だし!』
え、おい、それでいいのか、そこの三人。
「えー、だって……」
『鳴沢だから!』
見事なシンクロですね。鳴沢かわいそ。
「おーい、探偵役さん? おれたちはどんなアイテムを探せばいいんだ?」
前を歩くショウヤが、こっちを向いた。
「うん、今から説明する」
ぼくは、手ごろな木の枝を拾う。(なんか木の枝って持ち心地がよくて、家までよく持って帰っちゃったなー、小学生のときは)
地面にガリガリお絵描き。
「よし、描けた」
「……なに、これ? スライム?」
額の汗を拭うぼくに吹きつけられる、冷たいナオの言葉。
「ホント絵心ナッシングだよね、ユヅキ。リアリーノットグッド(←?)ってヤツ?」
気にしない聞こえない☆(むしろ聞かない☆)
てゆーか、ぼくよりノットグッドな人にいわれたくないんだぜ☆ なんたって、キリンを描いたらクラゲに間違われたことがあるんだからな、アイツは!
いったいどう描いたらキリンがクラゲに見えるんだろう? 共通点足が長いってことしかないじゃん。
「大体、ぼくはスライムのつもりで描いたんだ!」
「見栄はらなくてもいいぞ、ユヅキ画伯」
「黙れタクヤ」
微妙に当たってるから余計ムカつくじゃないか。
「スライムみたいだけど、たぶん、色は透明で、手ざわりはゴムボールみたいかも」
「推測の域を出ないな……」
ショウヤが呟く。
「たぶんとか、かもとか……もっとはっきりいえんのかな?」
「そんなの……」
困るよ、ぼくだって確信があるわけじゃない。でも、プールの水を消すには、これしか考えられないよ。
黙ってしまったぼくを見かねて、タクヤが助け舟を出してくれる。
「ま、このゲームの頭脳は、全面的にユヅキに任したようなもんだからな。黙ってついてけよ」
ユウヒもうなずいて、タクヤに同調して――
「そうだね、何も考えてない人が、口出ししちゃいけないよ」
――ない!? ユウヒ!? 今のは酷くない? ほらタクヤ軽くグサッてキテるよ無自覚って怖いね!
「それもそうだな……。な、ショウヤ?」
「ん……おう、そうだな。悪かったな、ユヅキ」
「んっ、ぜんぜんいいよ」
ショウヤ、なんか答えに困ったね、一瞬……。
「でもさー、ユヅキ」
「なに? ミキ」
「たかがこれだけのことなら、わざわざ地面に描く必要なかったんじゃない?」
……あ。
がっくり肩を落とすぼくに、ユウヒが
「蛇足だったね、ゆっちゃん!」
と最上級の追い討ちをかけてくれた。
蛇足って慰める言葉じゃないの? って顔で首をかしげてるユウヒ。だから、キミの一言が、いっちばん堪えるの!
はぁ……。なんか今日、凹んでばっかりだ……。
あれ? そういえば、ほんとに鳴沢はどうしちゃったんだろ?
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