アストロノート・モンキーズ! #1(14/24)縦書き表示RDF



 こんにちは、雨寺です。
 『Calendar』を更新したので、こちらも更新しました。お待たせして、申し訳ございません。
 これからは「お待たせして」謝罪するようなことが無いよう、尽力致します。
 失礼します。雨寺でした。
アストロノート・モンキーズ! #1
作:雨寺かえる



Chapter11


 場所は変わって、ぼくらの教室。

 結局、ぼくとジュンは教室に戻ってきちゃったんだよね。(戻る途中でユウヒがいないのに気づいてプールまで戻ったら、日陰のベンチで寝てた)

 というわけで、ぼくらはいまみんなでポーカーをしています。

 みんなすっかりリラックスしてる様子。これから、何が起こるかわからないってのに、のん気なもんだよね。

 トランプとチップは、ショウヤがもってた。こんなとこでも賭博ギャンブルするか。


「五枚、追加レイズ!」

 ナオが、声高らかに掛け金の増額レイズを宣言した。

「さあ、参加コールする? それとも、降参ドロップ?」

 勝ち誇ったように、ぼくらの顔をのぞきこむナオ。

 悔しいけど、ぼくのカードはJジャックのワンペア。ここは、無難に降参ドロップしよう。

「……ドロップ」

 ぼくがそういうと、まわりのやつらも、口々に降参ドロップの宣言をした。

 これで、ナオとショウヤ以外のプレイヤーは、チップが六枚以下。つまり、負けだ。

 ただひとり、ショウヤだけ、まったくの無表情ポーカーフェイス

「な……なんだよ、ショウヤは降りねーのかよ?」

 額に汗かき、ナオがいうと、無言でチップを五枚出すショウヤ。

 つまり、参加コール……。

「おれには、そんなブラフは通用しない。やめるなら、今のうちだぞ」

「へ、へんだ! 誰がやめるもんか! カード、オープン!」

 終始無表情なショウヤに気圧されながらも、ナオは手持カードをあけた。

 その瞬間。ナオの顔から表情が消え、代わりにショウヤの顔に笑みが浮かぶ。

「……おれの勝ちだ」

 ショウヤのカードは、フルハウス。 

 そして、ナオのカードは、6のワンペア。

 なんだ、ナオは6か。それなら、ぼくでも勝てたじゃん。参加コールしとけばよかったかな……あ、ショウヤはフルハウスだった。(どうでもいいけど、フルハウスってことば、なんか発音がかっこいいよね)

「く……っそ! もう一回勝負だ! ショウヤ!」

 ナオが、悔しさに顔をゆがめる。その鼻先を、ショウヤがつんとおした。

「君の敗因は、その、熱烈な感情だ。思ったことが、素直に顔にでる。ポーカーにおいては、それが致命的な弱点となる」

 押し黙るナオ。思い当たることだらけで、きっと凍結フリーズしてるんだろう。

「もっとも、その激情を力にすることもできる。たとえば、いいカードがきたと表情で思わせておいて、はったり――ブラフをかける。そうすれば、ブラフの成功率はあがるだろう?」

 さすが歴戦のギャンブラー。説得力が違う。 

 ナオが、眼をランランに光らせて、ショウヤにポーカー必勝法を教えてもらってるのを横目に、ぼくはタクヤに聞いた。

「なぁ、さっきのはがき、ある?」

 タクヤは、ジャージのポケットから、薄山吹のはがきをとりだした。

「あー、そのはがき!」

 そのとたん、噛み付いてきたジュン。

「あのミノタウロスってヤツさ、最初のはがきにおれの名前書いてくんなかったんだぜ?! ひでーよな、おれの扱い! 虐げられすぎてると思うぞ」

 いいえ、ジュン君。きみは結構いい役どころだと思いますよ? それで文句いうなんて、贅沢というもんです。

 ぼくはタクヤの顔をみる。彼の視線は、はがきに集中してた。

 その態度は明らかに、ジュンのいうことを黙殺する意向を示している。

 いまは機嫌悪いぞ。あんまりちょっかいかけるな。

 ぼくは、ジュンに目線でメッセージを送って、タクヤに聞いた。

「なんて書いてある?」

 ぼくの問いに、タクヤははがきに眼を向け、音読した。

「『埋没せし箱 清水を湛える。

  異界より清水狙う者在り

  其の者刹那の内に清水を枯らす』」

 …………。

 なんか……なんともいえない、不安な気持ちになった。

 読み終えた張本人であるタクヤも、小首をかしげている。

 静かにしていたジュンも、いまははがきの内容に興味シンシンだ。タクヤの周りをちょろちょろして、はがきをのぞこうとしてる。

「どういう意味だろう……」

 そばで聞いてたミキがつぶやく。

 ぼくも、同じだ。

『埋没せし箱 清水を湛える』?

『異界より清水狙う者在り』?

『刹那の内に清水を枯らす』?

『狙う者』はミノタウロスのことだとしても、それ以外は何のことだろう……。

 うーん……わからない。

「そういやさユヅキ、明日って何時登校だったっけ?」

『箱』っていうんだから、泉じゃないよな……。

「ユヅキ〜、明日朝何時だ〜」

『清水を枯らす』っていうのは、そのままだよな……。

 うーむ、全然イミ不明。

 最初のステージがこんなに難しくて、いいのかな……?

「ユヅキ!!」

 初めてその怒声が耳に入った瞬間に、「スパァン!」とぼくの頭に何かがクリーンヒットした。

「――っ!!」

 もはや声にもならない痛みが、ぼくを襲う。

「てめー、さっきから俺のことシカトしやがって! 聞けよ!」

「ご、ごめ……ちょ、ちょっと考え事してて「うっせー!」

 ぼくの謝罪にも、耳を貸さないナオ。

 いつか呪ってやる。

「……で、なんだった?」

 ぼくがきくと、ナオはいすにどっかと座っていった。

「明日のプール出校日! 何時出だったかって聞いてんの!」

「プール」の単語ワードがでた瞬間、ぼくの頭に革命・・が起きた。

 わ……わかったーっ!!

「……なにがだよ? てかいきなりなんだよ」

 心の絶叫は、そのまま声になって出てたみたい。ナオが、怪訝そうな顔でぼくを見てる。

 でも、そんなの知ったこっちゃない。ぼくは、超得意げに話し始める。

「だから、さっきのミノタウロスからのはがきの内容が、わかったんだよ」

「ホントか!!」

 タクヤの勢いに、ジュンは見事に突き飛ばされた。

「説明してくれるか?」

「――う、うん」

 教室のスミに伸びた、ぐったりジュン。大丈夫かな……;

「じゃ、じゃあまずこの部分。『埋没せし箱清水を湛える』っていうのは、いいかえれば、地面に埋まった水のいっぱい入ってる箱ってことになるね。そんなものは、一個しかない――」

「あ!! プールだ!」

「あたり!」

 ミキが声を上げた。割と勘がいいんだよな、ミキ。

「そして、この『清水狙う者』――。こんなのは、ひとりしかいない。ミノタウロスだ」

 ぼくのことばに、みんなうなずく。

「最後――『其の者刹那の内に清水を枯らす』。これは、たぶん……プールの水を一瞬にして消す――ということだと思う」

 こんどは、みんな少しだけ首をかしげた。なぜなら、自信たっぷりだったぼくの推理が、突然勢いをなくしたから。

 でも……ここだけは、確証がもてなかった。

 だって、ミノタウロスはあの25メートルプールに入っている大量の水を、全部消・・・す、っていってるんだ。

 明日はプール出校日だから、水もほぼ満杯に近い状態のはずだ。

 ぼくらがプールを離れて、まだ十分も経っていない。

 そんな短時間でプールの水を抜くなんて、不可能だ。

 ミノタウロスが、人間・・だったら。




「――残念だけど、ちょっと気づくのが遅かったみたいだよ」

 ユウヒの声。いつもののんびりした口調だけど、ちょっと違う。

 まるで、間近に近づいた脅威にさらされているかのような、切迫感のある声。

 とても、さっきまで寝てたようには見えない。


 というか、ユウヒの今の台詞……まさか。

「いいから、プールを見てみなよ」

 いわれるまま窓から外をのぞくと、鮮やかな青色の、プール遊び用の大きなスポンジボートがふたつ、プールに浮いていた。



 いや、その表現は違う。



 正確にいうなら、『スポンジボートがふたつ、いプールのにあった』というべきだろう。



 夢中で、プールまで走った。

 途中何度も転びそうになったけど、そんなの気にしちゃいられない。

 息を切らしてプールサイドに立ったぼくらは、沈黙する。



 ばしゃばしゃと、パイプの吐き出す水がプールの底を打ち据えている。

 濡れたスポンジボートは、足をつけて動こうとしない。



 プールは、いくばくかの水溜りを残すばかり。



「冗談だろ……」



 ゲームは、まだ、始まったばかり。












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