アストロノート・モンキーズ! #1(11/24)縦書き表示RDF


 こんにちは、雨寺です。
 あらすじのシーンまで書きあがりましたが、まだ謎という謎は出てきてませんね……;お待たせして、申し訳ないです;
 しかもこの回から先、毎日の更新は難しいかと思われます。
 こちらも頑張って書きますので、応援、よろしくお願いしますです。
 失礼します。雨寺でした。

 10/22 思いっきり誤字ほったらかしてましたあぁあぁぁ。
    『ぼくらのますます体感温度が上昇した』ってなんやねん!!
    修正しました。申し訳ありませんでした(遅すぎ

アストロノート・モンキーズ! #1
作:雨寺かえる



Chapter9


「なんかさっきからずっと思ってたけど……あっつ」

 ミキのひとことで、ぼくらの体感温度がますます上昇した。

 そう。今は八月。もう外は猛暑真っ只中。正確にはわかんないけど、もう三十度はヨユウでこしてるだろう。教室の温度計、みてくればよかった――いや、やっぱり見ないほうがよかったな。見たら、あまりの暑さにうだってたから。

「あー、口にだすなよ、ミキ。もっと暑くなる」

 汗っかきなショウヤには、汗拭きタオルが欠かせない。その証拠に、ショウヤの額には、ぽつぽつと汗の玉が光っている。

「そんなこといったって、暑いのは暑いんだからしょうがないでしょ。夏が暑くなくなっちゃったら、農家の野菜はできないし、冷たくて川でも泳げなくなっちゃう。そんなになったらもう、地球滅亡じゃない?」

 ミキ……大げさじゃない? 

 それは、たぶん、(自分にとっての)地球滅亡だよ。

「あ……なんだろ、これ」

 足下で、(一番先頭を歩いてたぼくがけった)何かが、カサッと音を立てた。

 ぼくはそれを拾い上げる。

 それは、不思議な手触りの、風流な葉書だった。

「なんか書いてあるよ。なになに――」
 
 淡い山吹色をした紙のど真ん中に、達筆な毛筆で書いてあるそれを、ぼくは読んだ。

 その、挑戦状・・・を――。


「えーと、『拝啓 空石結槻様 花宮柔巳様 松澤巧也様



 残暑お見舞い申し上げます。突然お手紙差し上げる無礼を御許し下さい。

 さて、先日の皆様の功績により、私どもの上のものが、皆様を<ゲーム>に招待したいと仰せられました。そこで、この度の<ゲーム>に皆様を御招待致すべく、お手紙差し上げました所存で御座います。どうぞ、浅木様、堀川様、秋原様も御一緒に御参加下さいませ。

 御参加なさる場合は、下記の<参加>に○を書いて、御手数ですがプールに浮かべて下さいませ。私どもがそれを即刻受理致します。

 御参加なさらない場合は、そのままで結構で御座います。連絡がない場合は、棄権とさせていただきます。

 皆様の御参加と御健康をお祈りしております。         

 
 参加

 不参加                                                

                   敬具』……」


 …………。

 しばらく、プールサイドに静寂のときが訪れた。


 最初に口を開いたのは、ミキだった。

「――なに、これ?」

「……招待状?」

「そんなこたぁ見ればわかるわよ」

「そりゃそうだけど……それ以外に、いえることなんてないじゃん」

「いーや、ひとつだけわかるよ!」

 ナオが、人差し指を立てて、ズイッと前に進み出た。

「なになに?」

「ふふふ、それは……」

 それは……?

「こいつらが、おれたちに宣戦布告してるってコトさ!」

「…………」

 ……うん、ナオは、ほっとこう。そもそも、ナオが本領を発揮するのは、ケンカのシーンだ。こういう謎なシーンでは、すこぶる使えない。それで当たり前だ。だって、専門外なんだから。

「やっぱり、俺たちへの手紙が、風で飛んできちゃったんだよ、きっと」

 タクヤは、無理に自分を納得させてるみたいな言い方をしてる。

「そうだよね、きっと郵便屋さんが、間違えて飛ばしちゃったんだよ、たぶん」

 続くミキも、おんなじ様なしゃべり方だ。

「それはないよ、きっと〜」

 妙に間延びした、ユウヒの声。たぶん、さっきの沈黙を利用して、熟睡してたんだろうな……。

 それはおいといて――。

「間違ってないって、どゆことだよ」

「ほら、こっちみて」

 タクヤがきくと、ユウヒは、はがきを裏返した。

 文面のほうと一緒で、住所欄も薄い山吹色に染められている。何も書かれてないせいか、裏の招待状の文字が透けて見える。

「これ、おかしいよ」

 ユウヒはいうけど、ぼくらにはどこがおかしいのかわからない。白紙の裏面を前にして、しきりにうんうんうなっている。

 でも、ぼくは、違和感を覚える――。そのとき、ぼくの頭上に、電球が現れた。

 そして――。

「――あ!」

 気づいた! あ、電球に光がともった。これが、「ピーンとくる」ってやつか!

「ほら、裏には何にも書いてないじゃん!」

「あ? そんなことわかってるよ」

「だから、何も書いてないからヘンなんだって」

「あー、そっか!」

 ミキも気づいたみたい。こたえを発表してくれた。

「これ、宛名も住所も郵便番号も書いてないよ! こんなの、郵便屋さんが届けてくれるはずないよ!」

「そっか!」

 みんな(不正解組)が、納得の声をあげる。

「つまり――」

「これは、風で飛ばされてきたんじゃなくて、学校に侵入してきた誰かが、直接ここにおいた――そういうことだよね、ゆっちゃん」

「ビンゴ!」

「これから、どうする?」

「そりゃ、きまってんだろ! 売られたケンカは、買うのがスジだ!」

 勇ましい発言だな、ナオ。やっぱ、女には見えんわ……。

 でも、ぼくも、口にはださないけど、考えは同じだ。せっかく招待してくれたんだから、わざわざ断ることも、ないだろ。

 タクヤも、考えてることは同じみたい。静かな闘志が、空気を通して伝わってくる。

 ショウヤが、ぼくらの空気を察知して、口をひらいた。

「じゃ、参加、だな。丸描いとけ、ユヅキ。<参加>のトコに」

「OK!」

 ぼくは、シャツのポケットから、ペンを取り出して、<参加>のところに○を描く。

 その瞬間、ものすごい風が、ぼくらの身体を揺さぶった。

 風にさらわれて、ぼくの手から離れたはがきが、宙を舞う。

「あ、ヤバい!」

 必死で手を伸ばすけど、届かない。はがきは、ひらひらと、プールのほうへ飛んでいく。

 まるで、「御参加、承りました」とでもいうように――。

 一陣の風が止んだ。

「あーあ……」

「……飛ばされちゃったね……」

 肩を落とすぼくらに、ユウヒが声をかける。

「だいじょうぶだよ、きっと。プール行こ」

 なんか自信満々のユウヒ。なんか、不思議だよ、オマエが。

「いやあ、無理だろ。どっか飛んでっちゃったんだからさ」

 ぼくがいっても、ユウヒは笑顔で

「だいじょぶ、だいじょぶ」

 っていい続ける。

「てか、その自信はどこから来るわけ?」

「勘」

 ミキのことばに、力強くいい放つユウヒ。だから、その勘にどうしてそんなに自信が持てるのかときいてるの。ああ、ユウヒと話してると、たまーにだけど、なんか、ドッと疲れる……まあ、そこがユウヒの持ち味なんだけれども。

「さあ、行こうか。きっと、もう相手は待ちくたびれてるよ」

 ユウヒのいうままにプールに向かうと、さっきの風に揺さぶられたのか、水面がゆらゆら波立っていた。

 その水面に、ぷかぷか浮かぶ、はがきが一枚。

「あ、あった!」

 我いちばんと、プールに飛び込むジュン。あ、水着着てないんじゃないの? と思ったけど、はがきを手に水面に顔を出したジュンは、いつの間にかちゃんと着替えていた。用意のいいこっちゃ……。

 しかし、ジュンは手にしたはがきをみて、首をかしげた。

「あれ……? これ、さっきのはがきじゃないぞ……?」



「御返事、確かに承りましたよ……」

 なんともいえない不気味な声があたりに響いたのは、そのときだった。

 なに?

 ドキッとして、あたりを見回す。でも、誰もいない……。もちろん、この中の誰の声色でもない。もっと、大人の声……。

「ふふふ……皆様、こちらでございますよ……」

 ふたたびの声。聞こえたほうをザッと向くと、プールサイドを囲うフェンスの上に、そいつは立っていた。

「皆様、初めて御目にかかります。今回、上司からの指令を受け、ゲームをプロデュースさせて頂きました、ミノタウロスでございます。以後、お見知りおきを……」

 うやうやしく礼をした、そのミノタウロスと名乗る男は、年齢にして二十歳ぐらい。カジュアルなブレザーとチノパンを着ている。この身なりといい、ていねいな口調といい、とても、こんなはがきで悪ふざけをするような人にはみえない。

「皆様なら、きっと御参加下さると思っておりました」

 帽子を目深にかぶってて、顔はよく見えない。けど、ミノタウロスが、うれしそうににっこり笑ったのがわかった。ぼくらがゲームに参加することが、そんなにうれしいのかな?

「当たり前でございます」

 心読まれた……。

「我々は、創ったゲームに誇りを持っています。そして、ゲームはそれをプレイするプレイヤーいてこそのもの。いくら素晴らしい作品であったって、評価してくださる方がいなければ、それに価値などつけられない――それと、同じことでございます」

 ミノタウロスは淡々と話してるけど、ぼくらの頭は情報量過多でフリーズしそうだ。

 あなたは、だれ? ゲームって、なに? そしてあなたは、なんでフェンスの上に立てるの?

「あ……あなたは……何者なんです……?」

 かろうじて凍ってなかったぼくの口が、途切れ途切れに、たたずむ男に問うた。

「自分ですか? ――いってみれば、自分は、このゲームのボス、といったところでしょうか……」

 ボ、ボス……。

 ミノタウロスの眼が、ぼくらサル三人、ショウヤ、ミキ、ユウヒ、(プールから這い出た)ジュンに向く。その視線からは、殺意、敵意といったものは感じ取れない。

「今回のゲームは、自分の上司が原案を創ったものです。それに、ゲーム代行の自分が細かく仕様を加え、仕上げました。ここにいる皆様の能力バランスを配慮して仕上げましたので、皆様方だけの力で、充分、楽しんでいただけると思っております」

 ――いままでのせりふで判断して、ミノタウロスは、ぼくらに危害を加えるつもりはないと思う。じゃなかったら、「ゲームはプレイヤーいてこそ」とか「楽しんでいただける」とはいわないし、なにより、自分が誇りに思うゲームで、他人を傷つけはしないだろう。

 少し警戒心を解いたぼく。それを見て、ミノタウロスは満足そうにほほえむ。

「先生方が御戻りになる午後四時までに、自分が今から創りだす迷宮の謎をといて、見事迷宮から脱出できれば、皆様方の勝利。もし、迷宮から脱出出来なければ、我々の勝ち。――詳しいことは、そのはがきに書かれています。迷宮で迷われたときの、道標にもなるでしょう」

 ミノタウロスのことばに、ジュンが手に持ったはがきを、ピッとぼくらに投げた。

 はがきをキャッチしたタクヤが、はがきを見るより早く、ミノタウロスが口を開く。

「迷宮に巣食うもの、ミノタウロス……。自分の名は、その伝説の怪物を冠しております。皆様が迷宮で迷われている間、自分も自分で動かせて頂きます」

 再び強く騒ぎ始めた風が、周りの木を揺るがす。プールの水面が、激しく波打つ。

 ミノタウロスの身体が、旋風の中心に浮かぶ。巻き上げられた木の葉を従えて、ゆっくりと浮かび上がる。

 な、なんで……? ありえない!

「ま、待て……!」

 タクヤの叫びも、吹きすさぶ強風にかき消された。紳士的なミノタウロスの声が、あたりに響き渡る。

「では、これにて失礼致します……皆様方の健闘を祈っておりますよ」

「ちょ……てめえ……」

「またお会いしましょう! See you again!」

 一声残して、ミノタウロスの姿がその場から掻き消えた。

 一陣の風が止む。旋風に舞い上げられていた木の葉が、ひらひらと舞い落ちる。

 そして訪れた静寂。この場の誰もが、(脳のフリーズで)動くことができない。

 ぼくらは、舞い落ちる木の葉のなかで、立ち尽くしていた。













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