遠owarai雷 ―ヘンゼルとグレーテル―縦書き表示RDF


いつもと違った「遠enrai雷」をお楽しみ下さい。










遠owarai雷 ―ヘンゼルとグレーテル―
作:アオキチヒロ


【ヘンゼルとグレーテル 〜魔女が悪い奴って誰が決めた!〜】

―配役―

ヘンゼル:桐生朝飛
グレーテル:クウヤ・アンダーグラウンド(桐生空夜)
お父さん:レオラリアナ
お母さん:香葉月朝葉香
お菓子の家の魔女その1:カノン・ソリティア
お菓子の家の魔女その2:フィン・クロスフィンガー
ナレーター:シオン・ソリティア





*****





 むかーしむかし、あるところに、木こりの家がありました。その家には、とても家計の苦しい家族が住んでいました。
 木こりのお父さん、専業主婦のお母さん、弟想いのお兄さん、無気力の弟の4人でした。
 何故、家計が苦しかったかというと、お父さんが「木を切るなんて出来る訳ないだろー! 地球に優しく! 限りある資源を大切に!」とか言って、全然木を切ろうとしなかったからです。


「はぁ。今月も赤字ですわ……誰かさんの所為で」
「ちょ、落ち着け母さん! 片手に日本刀を持ってにっこり笑うの止めてください、まじお願いします」
「貴方が働かないからでしょう! どうしますの、この赤字続きの家計簿! どうやりくりしても、絶体絶命のピンチですわ!」
「お前、地球がピンチになるのだけは絶対に避けなきゃいけないだろ!?」
「ならなんで木こりの職業についてんだコノヤロー!」
「うわわわわギブギブギブ! 折れる折れる折れる……あ、折れた? 折れたよね今? ぽきって音が鳴ったんだけど!? おいちょっと母さんストップすと…ぎゃあああぁあぁああ」


 ――――と、着物姿だとは到底思えないお母さんのプロレス技を喰らって、まあいつもの如く、コテンパンにやられるお父さんがいました。
 そんな情けないお父さんの姿を見つめる兄弟。


「今日もまた凄い夫婦喧嘩だね、空夜」
「兄さん、あれはもはや喧嘩と言うよりは、一方的な殺人なんじゃ…」
「………あ、蝶々だー。あははははは」
「ちょっと兄さん、現実逃避?」


 助ける気は毛頭無い、薄情な兄弟でした……っていうか、みんな真面目に劇やってよね!? ナレーターをやってる僕の身にもなってよ!
 なに、このプロレス技掛けれちゃうお母さん! ちょっと朝葉香、本気でストップしないとレオラが死んじゃうよ!


「これしきのことでギブアップするような夫、香葉月家には相応しくないですわ」


 劇だから! あくまで劇だから! ホントもうこれ以上話をずらさないでね!
 ……よし。そんなある日のことです。お父さんとお母さんが夜中にこそこそ話し合いをしていました。どうやら家系の苦しさから逃れるため、何か悪い企みをしているようです。


「お代官さま、こちらが例の、山吹色の菓子でございます…」
「ほほうコレが例の……コウヨウツキ、そちも悪よのぅ」
「いえいえ、お代官様ほどではございませんわ」
「「あっはっはっはっは」」


 言ったそばからコレーーー!!
 ちょっとレオラ! レオラはツッコミでしょ? なんで朝葉香と一緒にボケてんの? そういうストッパー役はレオラでしょ!?


「いいじゃんいいじゃん。オレだって、たまには羽目外したい時もあるんだよ」
「それに、この山吹色の菓子、実は例の魔女の家のモノだという裏設定もありますのよ?」


 そんな裏設定いらないしー! もう本当お願いします! 真面目にやってください!  

「おーい、シオン。おれの出番まだー?」

 コラそこ、姉さん! 魔女出歩くな! まだ子供達を捨ててないよ! まだ森にすら行ってないよ!

「え、そうなの? おれフライング? やっべ、おれ持ち場に戻るわ。おいフィン、おれたちの出番まだだってよ」
「だから言ったじゃないか。まったく、ソリティアはせっかちなんだから」

 フィンも来てたんかい! ああもう、とにかくお父さんとお母さんが夜中の話し合いをするところから! はい、テイク2!


「母さん母さん、話ってなんだ?」
「ええ、とても大切な話ですわ。もうこれ以上は家計が苦しくて、食費すらまともに賄っていけないのです。ですから、子供達を森に捨てませんこと?」
「子供達を?」
「ええ。ヘンゼルは森の入り口付近に捨てましょう。いつでも帰ってこれるように。グレーテルは森の奥深くに……二度と戻ってこれないように。あわよくば森で迷子になって餓死するように……!」
「お前、私情を挟むなよ! 思いっきりクウヤ限定で捨てる気マンマンじゃん!」
「そんなことありませんわ。朝飛を贔屓してるだけですもの」


 そんな、自分たちを捨てる話し合い中の両親を、ドアの隙間からこっそりと兄弟が見ていました。


「空夜、僕たち捨てられるみたいだよ」
「主に僕を狙っての犯行だよね」
「そ、そんなことないよ! 『可愛い子には旅させよ』っていうヤツだよ、きっと!」
「そんな慰め無用だよ、兄さん。大体あのお母さん、僕の餓死を望んでるしね。よし、こうなったら自分たちから出て行ってやる」
「え、空夜……自分『たち』って……僕も入ってるよね?」
「僕たち一心同体! 素晴らしきかな兄弟愛! さあ出かけよう、あの森へ!」
「都合の良いときだけ兄弟愛引っ張り出してるー!」
「そりゃ、都合屋ですから」


 そういって、グレーテルは嫌がる兄のヘンゼルを引っ張って、森へとテクテク歩いていきました。
 もういいや。なんか話が違うけど、森に行ってくれたし、うん。結果オーライだよ、きっと。


「うう……この森って魔女が住んでるっていう噂なんだよ? 行きたくない行きたくない」
「兄さん。その情けなさはお父さんからの遺伝だね」
「なんとでも言えよ……魔女って怖いんだぞぅ……」
「そうそう。魔女ってな、確か森を彷徨ってた子供をペロリと食べちゃうんだよなー。うんうん、物騒物騒」
「ペロリって、丸飲みなの? それは流石に無いよ、兄さん」
「え…空夜が言ったんじゃないの? 僕はペロリなんて一言も……」

 
 二人が、ギギギと音がつきそうなくらいぎこちなく、後ろを振り向きました。


「ぐっどいぶにーんぐ。貴方の森の魔女その1、カノンちゃんでっす」
「「出たー!!!!」」


 グレーテル達の後ろには、なんと噂の魔女が居たのです………って、ちょっと姉さん! 魔女はお菓子の家の中で待っておかないと駄目じゃん! なんで自分からフレンドリーに迎えに行ってんのさ!?


「魔女は、退屈で死にそうなのだった」


 なんで姉さんがナレーター気取り!?


「魔女は、ナレーターも出来るのだった」

 
 なにこの魔女、万能!?


「こんにちわ、魔女さん。僕はクウヤ」
「ど、どうも。朝飛です」
「クウヤに朝飛か。まま、立ち話もアレだし、おれの家へ来ない? お菓子もいっぱいあるぞ」
「え、お菓子? 和菓子はありますか?」
「もちのろんろん」
「じゃあ行こうかな」
「ちょっと空夜! 駄目だよ、魔女の言うことなんて信じちゃ!」
「何言ってんの、兄さん。本当の魔女はね、僕らのお母さんのことを言うんだよ」


 もっともなことを言う弟に、まんまと言いくるめられて、ヘンゼルとグレーテルは魔女の家へと案内されました。どうやら森の奥にお菓子の家があるそうです。
 しばらく歩いて、魔女が足を止めました。


「さあ着いたぞ。これが子供達の夢、THE・お菓子の家でーす!」


 魔女が指さす方向には、ドアはチョコレート、壁はビスケット、囲いはポッキー、屋根はサラダせんべい………せんべいって…。
 とにかく、古今東西様々なお菓子で出来た家が、家が、家が家が家が家が家が………ちょっと待って、なんで2つあるの!? いつの間に、増えてんの!?


「さて、どっちが本物のお菓子の家かな? チャラッチャ!」
「「え、クイズ形式?」」
「ピッピッピッピッピ…残り時間、10秒……爆破シマス…」
「「爆破するの!?」」
「はやくはやく! 答えてよ2人とも!」
 

 わくわく気分な魔女でした。どうやら、退屈で死にそうだったので、もう一つ家をこさえてしまったようです。魔女はやっぱり万能でした。


「どどどどどうしよう空夜!」
「落ち着いて兄さん! もうこの際どっちでも良いよ! 左!」
「左? ファイナルアンサー?」
「「なんで日本文化を知ってるの、この魔女!」」
「あ、アレ使う? 会場の皆様に聞くヤツ」
「「どこにいるの、会場のお客様!? 左でファイナルアンサー!!」」
「チャラッチャ! せぇーかぁーい!(みのさん風) では左のドアを開けてみましょう!」


 るんるん気分で、魔女が左の家のドアを開けました。すると……


「ぼんじゅーる。貴方の森の魔女その2、フィンだよー」


 無表情の魔女が出てきました。いえ、魔女だけど、男でした。でも自分で『魔女その2』と言ってるので、やっぱり魔女なのでした。
 2人目の魔女の登場で、驚きを隠せないヘンゼルとグレーテル。金魚のように、口をぱくぱくさせてます。言葉も出ないようです。


「ちょっと、挨拶もろくに出来ないの? この兄弟」
「駄目じゃん、フィン。今は夜だから『ボンソワール』じゃないと」
「あ、そっか。うっかりうっかりー」


 てへ、と頭を無表情で小突く魔女フィン。そんな彼とキャピキャピはしゃぐ魔女カノン。二人はとっても仲良しさんでした。


「………あ、てふてふだー。あははははは」
「てふてふ!? ちょっと兄さん、再び現実逃避?」
「だって空夜! ありえないよ魔女が2人だなんて!」


 ヘンゼルの言うとおりです。魔女が2人もいる「ヘンゼルとグレーテル」だなんて聞いたことがありません。だけど、そんなヘンゼルのツッコミ虚しく、魔女2人は両手を取って、言います。

「「ただいま、魔女お買い得キャンペーン実施中です」」

 声をそろえて言う魔女2人組に、

「「全然お得感が感じられないよ!!!!」」

 これまた声をそろえる兄弟でした。
 まあ、そんなこんなで友好関係を結んだ兄弟は、魔女達にお菓子の家の中へと案内されました。そして「せっかくお菓子の家に来たんだから、遠慮無く食えよー」という魔女達の言葉に甘えて、お菓子をご馳走になることにしました。


「はい、粗茶ですが………で? キミ達はなんで森の中に居たの?」
「僕と空夜はお父さんとお母さんに捨てられたんです……あれ? そういや、捨てられそうになったから、勝手に出てきたんだっけ? あれ?」


 どうやら、ヘンゼルにはよく分からないようです。っていうか、魔女がお茶出してる! なんか歓迎してる!


「まあ兄さんの話を要約すると、両親に捨てられたんです」


 グレーテルが要約しました。でも全然違います。要約できてません。お父さんもお母さんも、話し合いまでしかしてません。しかしあっさり信じてしまった魔女がここに2人……


「そうなの? 酷いご両親だね、魔女その1」
「全く。世知辛い世の中だよな、魔女その2。常識じゃあ考えられないよな」


 魔女が常識を言っちゃった! 何コレ、本当に「ヘンゼルとグレーテル」なの? こんなにも良心的な魔女だなんて聞いたこと無いよ!


「じゃあさ、おれたちの所で暮らしたらいいじゃん。良いよな、魔女その2」
「魔女その1がそう言うなら、ボクは全然構わないけど。それに、こんな夜更けに子供2人を森へと放り出すのは後味が悪いしね」
「良いんですか?」
「いーよいーよ、無問題! ここなら思う存分お菓子も食べられるし、みんなで住もうぜー」


 わいわいと盛り上がってきた魔女と兄弟……なんだかフレンドリーです。どうやら一緒に住むことになったようです。
 森の中で出会った優しい魔女2人組のお陰で、ヘンゼルとグレーテルは、幸せに暮らしましたとさ。めでたしー、めでたしー。
 もうこれで良いよね?
















 一方そのころ、木こりの家では――――。
「あ! ヘンゼルとグレーテルが居ない!? どうしよう、母さん! きっと昨日の話を聞いて、子供達が家出しちゃったん………あれ?」
 レオラが振り向くと、テーブルの上には一通の置き手紙が。
「『実家に帰らせていただきます。香葉月朝葉香』………って、オレひとりぼっちィィィ!?」
 






Is this happy ending ??
















ア ト ガ キ


「遠enrai雷」番外編、いかがでしたか?
本編の方も、どうぞよろしくお願いします。
















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