天空の その上で…(63/180)PDFで表示縦書き表示RDF


◆はじめに◆
当サイトには2本の作品がありますが、いずれも純ファンタジー小説となっております。
ラノベ小説をご覧になりたい方は恐れ入りますが、当作品は該当いたしませんので、引き返しをお願いします。
作者視点(人称と視点が一致しない)を読み慣れていない方は視点の混乱を招きやすいので、
携帯小説ように視点を簡略化した作品を下記URLで公開していますから、そちらをどうぞ。
http://id28.fm-p.jp/67/TENKUU/

少しでも展開が早いお話が好きな方は、これより始まる黒禽編をお勧めします。
(ですが所詮純ファンタジーですので、話の内容にそぐわない強引で急な展開はありません)
こちらは恋愛要素を含みますが、イエン編よりは若干、軽い内容となっております。
イエン編主人公の師匠達が主役のお話です。前作を読んでいなくても問題ありません。
皓と恭が遙の仲間になるまでのお話と友情が主なテーマです。

以上の注意点を踏まえた上で、お読みいただけたら幸いです。
どちらの作品から読まれても支障は御座いませんので、お好みの作品をどうぞ。

天空の その上で…
作:高村 恵美



★黒禽編★ 【第一部】 旅立-01(63)


 いつからだろう。気付けば、自らの居場所を俺は必死で探し求めていた――



 幼い時から身体能力がずば抜けて高かった俺は、なかなか周囲の人達と上手く馴染む事が出来なかった。
 皆が俺の力を恐れて遠巻きに様子を伺い、実の両親でさえ、時に腫れ物に触れるように俺を扱った。
 歳がやっと十を過ぎた頃だったろうか。 助けてくれという声に反応した、咄嗟の出来事。
 自分より遥かに大きい暴走した魔物を、素手で引き倒した俺を待っていたものは、賞賛の眼差しではなくて。

「あの子が、(こう)が卵だったら、(はるか)様に引き取って頂けるものを」
 畏怖なる者を監視する視線を避け、帰宅した扉越しに、密かに漏れ聞いた両親の会話。
「……」
 人助けをしたところで、所詮両親の俺に対する扱いが変わる訳もないのに。
 俺はこの期に及んで彼等に一体何を期待していたのだろう。
「明日からまた居住地を探さなくてはいけないな」
 父親の呟いた言葉に俺は眼を閉じる。いつもそうだ。
 俺が何か仕出かす度に、人目を異様に気にする両親は、慌てて移住を繰り返す。
「またそうやって逃げるのか。俺の力はそんなに隠さなければいけないほど、お前らにとって都合の悪い物なのか!?」 
 そう叫び出したい気持ちを、俺は奥歯を強く噛み締める事で遣り過ごす。
 例え口に出したところで彼等には何も答えられないし、自分が彼等にとって忌み嫌う存在である事を、わざわざ再確認する必要もない。
「あの子が、皓が卵だったら――」
 無意識だろう。 繰り返される母親の言葉に、俺はその場から音も立てずに移動する。

 ……本当は誰よりも解っていた。 俺の居場所など、最早家族内の何処にも無い事を。
 ただ家族に愛されたいと願う感情が、どうしてもそれを認めたくなかっただけの事だ。
 けれど今更眼を逸らしたところで、眼の前に横たわる真実の、一体何が変わると言うのだろうか。
『どうすれば俺を必要としてくれる?』
 直ぐ傍らに大勢の人間(ひと)が溢れて居ても、誰一人として本当の俺を知りはしない。
 自らを偽り、硝子越しに生きる脆弱な世界は、他人の事など気にも留めてはくれなくて。
 それでも幼い弟妹は純粋に俺を慕い、両親は世間体を楯に未成年の俺を外界(そと)へ離せない。

『俺はいつまでこの地に囚われれば良い?』
 雁字搦(がんじがら)めのこの世界から、逃れられる術はその欠片すら(かたど)らず、俺を追い詰めていく。
『……もう、沢山だ』 
 この世界で生きて行く為に、誰か一人でもいいから俺を必要としてくれないだろうか。
 人が無理ならば、せめて俺を恐れず、有りのまま受け入れてくれる場所、だけでもいい。
 頼むから、何処か、誰か、俺を――救ってくれ。







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