挿絵表示切替ボタン
▼配色







▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる
うろな駅係員の先の見えない日常 作者:おじぃ

専門学校、職場体験編

しおりの位置情報を変更しました
エラーが発生しました

ブックマークしました。

設定

更新通知 0/400

設定を保存しました
エラーが発生しました

カテゴリ

ブックマークへ

以下のブックマークを解除します。
よろしければ[解除]を押してください。

ブックマークを解除しました。

90/100

生まれて初めての鉄道会社体験

 鉄道会社への就職に失敗した僕、鵠沼くげぬまくじらは、業界を学ぶため専門学校へ通い始めて約二ヶ月が経過した。

 専門学校では鉄道の営業や技術に関する基礎知識やホスピタリティーマインドなど、実際の業務に従事するにあたってのカリキュラムが組まれている。その中には実際に最大手の鉄道会社、日本総合鉄道で使用されている窓口用の切符発券機や研修用運転シミュレータ、技術者用の専用工具などがあり、臨場感はかなりのもの。

 とはいえ、学校内では見知った者同士での実習となり、トラブル対処の演習も予め用意された台本に沿って行われるため、実務へ近付けるには限界がある。そこで実施されるのが、職場体験実習だ。うろな駅で二日間の実習となるが、一日目はうろな地下鉄、二日目は日本総合鉄道でお世話になる運びとなった。

 木曜日の7時10分、僕はいま、うろな地下鉄東西線に乗って実習地のうろな駅へ向かっている。通勤時間のためそれなりに混雑しているが、立席客は1両あたり十数名程度。人口約3万人の町内にしか線路を持たないうろな地下鉄の車両はひどく古びており、脱線しそうな速度でギィギィと音をたて、グオングオンとモーターを唸らせながらカーブを通過し、途中駅での開扉かいひ時間は僅か10秒。真上を走る総合鉄道会社うろな本線と競合しているため、余裕のないダイヤが組まれているようだ。競合相手のうろな本線はそんなことなど気にせず、時速80から100キロメートル程度で走行し、途中駅での開扉時間は30から40秒ほど設けている。後者も幹線とはいえ地方路線のため車両はやや古めだが、鉄道業界世界最大手の風格を漂わせている。

『うろな~、うろな~、ご乗車ありがとうございまーす』

 列車はうろな駅に到着し、開扉されると男性駅係員の構内放送が聞こえた。きっとこれから駅事務室で顔を合わせるだろうけれど、列車監視の業務中、しかもラッシュアワーなので挨拶は後回しにしておく。今日明日の二日間は将来を左右しかねないとても有意義な二日間となるだろう。

 いつの間に閉扉へいひし急発進した列車を見送り、学校で渡されたうろな地下鉄の職務乗車証を自動改札機に通し、ゲートが開く。すると、すぐ右手にある有人改札口の奥にクリーム色の鉄の扉がある。駅事務室出入口だ。扉は数字が刻印されたステンレスのボタンを押して開ける暗証番号式。暗証番号は知らされていないため、僕は隣のインターフォンを押さなければならない。

 緊張で胸を焦がしながら扉の前で立ち止まった僕は、地下鉄施設内のカビ臭い空気を一度深く吸い込み、ゆっくり吐き出してから、そっとボタンを押した。

 ピーンポーン、と電子音が鳴る。もう後戻りはできない。とうとう僕は、生まれて初めて鉄道会社を体験する。
 お読みいただき誠にありがとうございます!

 拙作では初めての、うろな地下鉄(他社)のエピソードとなります。鉄道会社にはそれぞれ異なる社風がございますが、競合する日本総合鉄道との違いを感じていただけるようなお話にできたらと存じます。
+注意+
特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。
↑ページトップへ