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うろな駅係員の先の見えない日常 作者:おじぃ

咲月と鯨の恋愛編

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新しい目標、見付けた!

「えーまずー、お客さまを乗せて走ってきた電車は工場に入って車体と足回り、そして各種部品を取り外し、それぞれ入念な検査と修繕を行います。これを弊社では『検修けんしゅう』と呼びます。ここではそのなかでも特に重要な、車輪と車軸、合わせて『輪軸』の検査過程についてご紹介いたしますー」

 鯨が目をキラキラさせている横で、私は社員のオジサンの話を混乱しながら聞いていた。

 私たちの前には仕切りを挟んでレールがあり、そこを車輪、じゃなくてえーと、輪軸? が転がって、暗幕のある装置のなかに流れ込み、別の社員がそこに入った。

「えー、明るいと検査できませんので装置のなかはお見せできませんが、この暗がりのなかで蛍光塗料を含んだ磁粉液じふんえき、蛍光磁粉液を自動でかけます。蛍光磁粉液がかかった車輪と車軸、そしてブレーキディスクに〜、紫のブラックライトを当てます。すると傷があるところには蛍光磁粉液が線を描き、傷を浮き彫りにしてくれるのです。ここで異常がなければ外観検査は合格、続いて内部の検査に移ります。皆さまこちらまでご移動ください」

 うわ、えとー、なんだかわかんないけど凄いことやってるんだよね?

 観客たちはざわめいて関心してるけど、私は唖然としてしまった。理科学系苦手〜。

 暗幕の装置を出た輪軸は一緒に出てきた社員によって布で水気を拭き取られ、スイッチ操作により自動でレールを伝い、触手のようなものがたくさん伸びている装置に固定された。

 デートなのにコミュニケーションがないよ。まあ楽しそうだからいいけどさ。それに私も電車の検査なんて滅多に見れないから楽しもう。

「えー、こちらは超音波探傷ちょうおんぱたんしょう装置と申しまして、車軸を垂直、斜角しゃかくそれぞれの角度から超音波を当てまして〜、内部に傷が隠れていないか探ります。若い人が読む漫画にありそうな特殊能力のようなものですが〜、鉄道業界ではそういうものが当たり前に活用されています」

 固定された輪軸は、ウネウネした触手のようなものに撫でられながら、ローションのようなもので濡らされてゆき、それがドロドロと垂れ流されて受け皿に滴り落ちる。

「ただいま車軸が油をかけながら車軸が撫でられていますが、油をかけることにより感度が良くなり、精度の高い検査が可能となります」

 なるほどね〜。電車の整備って結構手間かかるんだ〜。けどやっぱよくわかんない。

「続いてこの車輪はお客さまを乗せて長い距離を走ってきたため傷付いたり形状が歪んでいるため、専用の機械に入れてレールを踏む面、『踏面とうめん』を削り、形を整えます。この作業は時間がかかるため、皆さまにはその間、車軸に車輪を嵌め込む作業を見学していただきたく存じます」

 案内されるままに移動すると、またもよくわかんない機械がある。きっとこれが車輪を嵌め込む機械なのだろう。

 こうも訳わかんないものを立て続けに見せられると、混乱して言葉が出てこなくなってくる。日頃から緊張と混乱に見舞われている鯨が挙動不審になる感覚が理解できるようになってきた。

「この装置にはご覧の通り、台の上に車軸が固定されていています。これを車輪運搬ロボットにより運ばれた車輪を自動で嵌め込みます。機械の綿密な計算により、車輪を適度な圧力で、尚且つブレを少なく嵌め込めます」

 言う通り、レールを伝うロボットに運ばれた車輪は、車軸が固定された装置にセットされ、ボス穴というらしい車輪の穴に照準を合わせている。照準が定まった所で車輪が車軸に向かって移動し、嵌め合い部と接触したところで一旦停止、その後すぐにズボズボズボズボッ! とピストンのような音を発てて車輪が挿入されてゆく。よく見ると、結合部分からドピュドピュッ! と白い液体が吹き出している。

 なんか私、なんだかな〜な思考をしてるけど、事実だから仕方ないよね……。

「えー、ただいま結合部分から特殊な白い液体が飛び出しておりますがー、濡らすことにより、車輪と車軸、お互いが傷付きにくくなり、尚且つ時間経過で内部に染み込み固まるとー、車輪が車軸から外れくくなるのです。電車は過酷な環境で長い間走りますから、念入りな安全管理が欠かせません」

 工程を一通り紹介して輪軸職場の公開は終了。他の観客がそそくさと退場するなか、鯨は機械の一つひとつをじっくり観察しながらゆっくり出口へ向かっているので、私もそれに合わせていると、機械をシャットダウンしている社員のオジサンと、オジサンをサポートするお兄さんの会話が聞こえてきた。

「どうだこの職場。少し馴染めたか?」

「はい、仕事はまだまだですけど……」

 自信なさそうに喋るお兄さんはきっと新入社員で、どこか鯨と似た雰囲気がある。

「そうか。仕事もそれ以外のことも、悩みがあったらなんでも言ってくれよ。俺も新しい機械の使い方わかんなくてこうやって教わってるんだし、遠慮すんな。とりあえず今日は打ち上げで立呑屋でも行くべ。おごるからよ」

「はい、ありがとうございます」

 へぇ、なんかいいな、こういう雰囲気の会社。一般的に会社って言ったら仕事に追われてギスギスしてみたいなイメージあるけど、ちょっとイメージ変わった。

「ねぇ、鯨はこの会社に入りたいの?」

「うん、出来たら入りたいと思う」

「そっか。頑張ろうね。私も応援してる」

「ありがとう」

 この日、鯨だけでなく、私もこの会社を目指してみようと思った。これが鉄道に関心のなかった私にとって、人生のターニングポイントとなった。

 新しい目標、見付けた!

 お読みいただき誠にありがとうございます!

 機械系が苦手な私が工場の描写ということで、少々苦労しましたが、ようやく公開できました(^^;

 鯨と咲月の恋愛編はリアルのダイヤ改正までに終わらせるつもりでしたが、ダイヤ改正きのうだよ。終わらなかったよ。

 ではまた次回、お楽しみに!
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