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初恋
作:MIYABI



不倫の始まり


今日子の声を聞くのは2年ぶりだった。
彼女は久しぶりの電話に、驚きと喜びが混ざったような複雑な感じだった。
事故を起こして入院していることを告げると、見舞いに行くから病院を教えて欲しいと言われた。

この電話で今日子に伝えることが出来なかった…

私が結婚したことを…


見舞いの申し出を断ると彼女は理由を聞いてきた。
断る理由は2つあったが一つ目で彼女は納得してくれた。
その理由とは…

自動車事故でフロントガラスに額をぶつけた為に、眉間に傷が残ってしまった。
その傷を見せたくないという理由だった。
医者は時間が経てば目立たなくなると言ってくれていたが、鏡を見るたびに憂鬱な気持ちになるほどだった。


2つ目は彼女には言えない理由だった。
妻と遭遇する可能性があるからだ。


彼女と別れてからの近況を報告しあった。

彼女からは先生とのことも吹っ切れて、私のプロポーズを断ったことを後悔していると言われた。

その言葉が、余計に結婚したことを言い出せなくした。
結婚しても彼女に対しての想いが残っていたから…


退院してから連絡することを約束して電話を切った。

自分の中にズルイ考えが…
妻に対しての想い、今日子に対しての想い。
全く違う想いなのに、どちらも自分のものにしておきたいと…

優柔不断とかそういうものではない。
どちらを選ぶのか迫られたら、迷わず妻を選ぶのだから。


今日子への想いは、私の失恋に対するこだわりだったのかもしれない。
プロポーズして振られたことがトラウマとして残ったのかも…
それを自分で確認したくて今日子に連絡したのだと思う。


電話をかけてから1週間後、無事に退院することが出来た。
2、3日、家で静養してから今日子に連絡をする。
彼女と仕事終わりに食事をする約束をした。


当日、車で迎えに行く。
2年前と比べると、少しふっくらとした彼女。
表情も柔らかい。
本当に先生のことを吹っ切れたように感じた。


その日は彼女の誕生日を3日ほど過ぎていたので、お祝いしようとレストランへ入る。
こじんまりとした店だが、間接照明をうまく使いテーブルには蝋燭の明かりが灯る。
フランス料理のコースだった。
この明るさなら、私の傷も目立たないことにホッとした。

食事をしながら事故の話や、仕事の話をした。
そして彼女の恋愛の話も。

私と別れてから2年経つが、先生のことを引きずったままだったので、新しい恋愛は出来なかったらしい。
1年前にこのままではいけないと、自分の中で先生への想いを吹っ切った時に、私の事を思い出し泣いてくれたと…

暫らく沈黙があった…

私を見つめながら、彼女がはっきりとした口調で言った。

「もう一度、私と付き合って下さい」と…







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