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初恋
作:MIYABI



別れ


今日子との交際が始まった。

仕事が忙しくて毎日の電話までは出来なかったが、休みの度にデートを重ねる。
デート自体は楽しいのだが、なにか違和感が付きまとう。
思い切って今日子に問いかけた。

「俺じゃダメなのかな? やっぱり忘れられないのか?」

彼女は答えない。
暫くの沈黙…
その空気の重さに耐え切れず言葉を重ねた。

「俺はお前と結婚したい」

実質的なプロポーズだった…


下を向いたままの今日子。
彼女の肩が細かく震えだす。
鼻をすする音が聞こえる。

彼女の身体を抱きしめてしまう私。
彼女の気持ちが私に無い事は解っていた…

取り戻せなかった8年間という時間。

彼女がつぶやくような声で言った。

「しげる君、ごめんなさい…、今はまだ結婚なんて考えられない」

いろいろな想いが込められた言葉だった。
私は彼女をきつく抱きしめた。

「俺の方こそゴメン。 ずっとほったらかして今更だよな」
「お互いのタイミングが合わなかったな」

彼女が私の言葉でさらに泣いてしまう。
髪の毛を撫でながらしばらく抱き合う。

「俺、結婚したいんだ。 だからこれ以上はダメだね…」

彼女との別れの言葉だった。
彼女を抱いてから一月後の出来事だった…


私は今日子と別れてから、1年後に新しい彼女と同棲を始めた。
付き合い始めて3か月での同棲だった…
結婚を意識して付き合いだしたのだが、彼女の両親に反対された。
二人で一緒にいたいという思いが強くなっての駆け落ち状態だった。
相手は3歳年上の女性。
美人でスタイルも良かった。

だけど…

私の中には今日子がいた。
別れの日、私の腕の中で泣いていた今日子が忘れられなかった。


同棲を開始して3ヶ月後、母が亡くなった。
母は医者の半年の余命宣告を1年も伸ばして頑張ってくれた。
お陰で孫を抱かせてやることは出来なかったが、彼女を紹介することは出来た。

「俺、こいつと結婚するよ」

そう紹介した時の母の安心したような顔。


何度か一緒に見舞いにも行った。
ある日、彼女だけが母に呼ばれた。
帰ってくると私に指輪を見せた。
「お母さんがくれたの」

彼女の指にはルビーの指輪がはめられていた。
母が息子の私を彼女に託す意思表示だったのだろう。

葬式には母の望みで、彼女が母の着物を着て参列していた。
実質的に彼女が嫁になった瞬間だったように思う。
式こそ挙げていなかったが、親族にも長男の嫁として紹介されたし、彼女が嫁として扱われて当然だった。


葬式も終り、落着きを取り戻した中で私が交通事故を起こした。
よく命を取りとめたなというような大きな事故だった。
結果的に2ヶ月間の入院生活をしていたのだが…


入院生活というのは、時間ばかりを持て余す日々。
もう少しで退院が見えてきたころ、寂しくて仕方ない夜に電話を掛けてしまった。

そう…、今日子へ







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