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初恋
作:MIYABI



再会と告白


冬休みが終わり、3学期が始まった。
同級生の野球部の仲間が集まってくる。
退部する事を告げると、みんな励ましやら慰めの言葉をくれた。
それがもの凄く寂しく聞こえたが…

この時期から悪友の藤川との付合いが始まった。
こいつとつるんでいると、寂しさだけは紛れた。
毎日、原チャリを無免許で乗りまわし、バカ話をして過ごした…
一人だと耐えられなかった時間が、面白おかしく過ぎていく。

私の記憶の中から今日子の面影が消えていた。

1月4日の再会以来、彼女との接触はなかった。
多分、家には電話があったのだろうが、毎日、藤川と遊びまわっていたので連絡がつかない状態だったのであろう。

そんなある日、藤川が言った。

「お茶でも飲みに行こうぜ」

藤川には行きつけの喫茶店があった。
原チャリに乗って店に着く。
店のママと親しげに話をする藤川。

時間が経ち、帰る為に店を出る。
そこでばったりと今日子に再会した。


「しげる君!? なんでこんなところにいるの?」

「え!? お前こそなんで?」

「私の家、そこだから」

そう言って、その店の裏を指さす。

「マジ!? この裏が家だったんだ・・・」


藤川が「どうした?」って目で見る。

「そっか…、それじゃまたな」

今日子に別れを告げてその場を後にしようとするが

「また、電話してね」

それには何も答えずに別れた。


その日から、その店へ行くたびに今日子と再会しないか、変に意識するようになったが、再び会うことはなかった。


私から電話をすることもなく、時間だけが過ぎて行った。







私が24の春。
母親が入院をした。
病名は・・・『癌』だった。

父から母の余命が半年だと聞かされ、全身から力が抜けた。


病院へ見舞いに行くと、まだ元気そうな母が言った。

「しげる、彼女を連れて見舞いに来てよ」


当時、付き合っていた彼女と別れたばかりで、一緒に見舞いに行けるような彼女はいなかった。

「そのうちに連れてくるよ」



母には自分の病気が分かっていて、余命も知っているかのように

「孫の顔が見たいんだよ・・・」


この時に結婚を意識した。
しかし、相手がいない。

一番に顔が浮かんだのが今日子だった。


今日子の家へ電話を掛ける。
高1の3月に彼女の自宅の近所で会って以来の連絡だ。
すでに結婚して実家にはいないかもしれない。
しかし、掛けずにはいられなかった。


彼女の弟が電話に出た。
中学の同窓会の件で連絡が取りたいと、嘘をついてしまった。
弟は「帰ってきたら連絡させます」と言ってくれたので、こちらの電話番号を伝える。


ドキドキしながら電話を待つ。
2時間後に今日子から電話が入った。


「ごめん、同窓会って嘘なんだ」

「うん、分かってる。でも、急にどうしたの?」


彼女と会う約束だけをして、細かな話はしなかった。

約束の当日、待ち合わせの場所に行く。
15分前に着くと、やはり彼女が先に待っていた。

あの日と同じだった。
初めて二人で会った日も、彼女は私を待っていてくれた。
8年前にタイムスリップしたようだった。


すっかり女になった今日子。
気合いを入れてお洒落しているのが伝わる。
車に彼女を乗せる。
ものすごく照れる二人。
狭い空間の中で、お互いの心臓の音が聞こえそうなくらい緊張していた。


「久しぶりだね。急に呼び出してごめん」

「ううん、電話、嬉しかったから」

少し和んだ空気になった。
ドライブしながら色んな話をした。
二人の8年間の空白が少しずつ埋まっていく。

二人で食事をする。
向かい合わせに座ることで、再び恥ずかしさが・・・
それを隠すように懸命に話す今日子。

すっかり遅くなったので彼女を送る。
あの時出会った喫茶店の前を通り、彼女の家を過ぎたところで止まる。

「今日はありがとう。楽しかったわ」

今日子がそう言って車から降りようとした。


彼女の手を取り、引き寄せて抱きしめた。

そして・・・

キスをした。

「俺と付き合って欲しいんだ」


この言葉を言うのに何年かかったのだろう・・・

彼女の返事を待つ時間が、とてつもなく長く感じられた。







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