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初恋
作:MIYABI



セカンドタッチ


今日子からの年賀状…

「あけましておめでとう」
「ひじの具合はどうですか?お見舞いに行きたかったけど…」
「よかったら連絡下さいね」


少しうるっと来た。
私の事を心配してくれていることに感激した。

しかし、さすがに元旦から彼女の家へ電話は出来ない。


3日になった。
卒業名簿を見ながら彼女の家へ電話をかける。

プルプルプルプルプル、プルプルプルプルプル…

呼び出し音がなっている。
心臓がドキドキしている。
3回目のコールで受話器を取ってくれた。

「あ、あの、こんにちは…、石川さんのお宅ですか?」

「はい…」

電話を取ったのは今日子だった。


「しげる君?…、しげる君なの?」

「うん、今、電話いいの?」

「もちろんよ、嬉しい」

彼女の弾んだ声、急にテンションが上がったのが解かる。
まずは年賀状のお礼を言い、嬉しかったことを素直に伝えた。

二人で色々な話をした。
肘の事は少し説明したが、彼女はそれ以上聞いてこなかった。
誰かに野球が出来なくなったことを聞いていたようだ。


30分ほど話し込んで会話が途切れた。

「じゃ、そろそろ切るよ」
私が切ろうとすると、

「あの…、明日は予定あるのかな?」
今日子の問いかけに

「野球出来なくなったから暇なんだ…」

「じゃ、会ってくれないかな…」
今日子が恥ずかしそうに言う。


翌日、お昼に駅で待ち合わせ。
私が10分前に待ち合わせ場所に行くと、すでに彼女が待っていた。
電車に乗り、向かった先は神社であった。
4日にもなるとさすがに初詣に来る人はまばらである。

二人で並んで歩く。
高校1年生の男女である。
お互いに照れているので、少し間隔があいている。

賽銭箱の前。
私は特に願い事も無く、手だけを合わせた。
今日子はなかなか終わらない。
一生懸命願い事をしている。

ようやく終わり、私の方を振り返りニコリと笑顔を見せた。

いい笑顔だった…

野球が出来ないことなんて、どうでもよくなるような笑顔だった。
境内の自販機でコーヒーを買って、ベンチに腰掛ける。


「しげる君、何をお願いしたの?」

「別にお願いすることなんて無いし…」

「私はこの気持ちが続きますようにってお願いしたの」

「・・・」


正直、願い事なんて無かった。
野球が出来なくなった時点で、夢が消えたのだから…

「ねえ、中2の時の文化祭の話し合い覚えてる?」

もちろん覚えていた。
あの時、今日子の手を握ったことは強烈に印象に残ってた。
普段なら絶対に有り得ないことをしたのだから。

「ん? 二人で仕入れ担当になった話か?」

私はとぼけた。
今日子が聞きたいことは解かってるのに、恥ずかしくて…

「あの時、ものすごく嬉しかったし、恥ずかしかったし…、それに身体に電気が走ったみたいだったの」

今日子の目は遠くを見ていた。
私はベンチを立った。
恥ずかしくて座っていられなかったからだ。

「しげる君、お願いだから座ってよ」

私は腰を下ろす。

「私の手を握って言ってくれた言葉は忘れられない」

今日子が手を差し出す。
私の目を見つめる…、あの日の目だ。
今日子の手を握る…
あの日に時間が戻った。

今日はガリ勉の大木はいない。
この続きを止めるものはいないのだ。


今日子が私の手に、もう片方の手を重ねた。







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