ファーストタッチ
こんな結果になってしまった。
あの日、電話で今日子に本当の事を言ってれば…
今さら後悔してもどうにもならない。
しげるは二人の女性を苦しめる事になった自分の行いを悔いていた。
「みなさん、各班に分かれて話し合いで決めてください」
文化祭委員の吉田が教壇に立って言った。
ここはS中学2−6の教室。
いよいよ文化祭の準備に入るために、各班での担当を決める話し合いが始まった。
机を班別にするため移動する。
6人で一班が出来上がるので、38人のクラスで6班に別れた。
しげるの隣には今日子がいる。
そして、今日子の親友の千恵、佐智子、ガリ勉の大木に、存在感の少ない吉田、この6名が集まる。
当時、野球部でエースだったしげるには、3年生の彼女がいた。
まだ中学2年で初心なしげると、3年生の由紀の交際は交換日記をする程度だった。
しげるの隣に座った今日子、彼女は本当に嬉しそうだった。
しげるの事が、好きで好きでたまらないからだ。
休み時間や放課後のクラブ活動の時は、常にしげるを目で追っていた。
しげるも今日子の視線は感じていたし、彼女が自分に気があるだろうという事は分かっていた。
そんな二人が隣同士に並んでいたのだ。
今日子の親友の千恵と佐智子が、彼女の為に協力体制を取っていた。
「しげる君と今日子が、ペアで材料の仕入れ担当ね」
千恵の一言で二人の役割が決まった。
「じゃ、二人は別に打ち合わせしててね」
6人での話し合いの場から、二人は弾き出される。
「しげる君、どうする?」
「何を仕入れなきゃいけないのか書き出そうか」
二人で打ち合わせが始まる。
その二人の成り行きを、千恵と佐智子が見守る。
仕入れないといけない物の書き出しも終わり、今日子が呟いた。
「指がすごく痛いの・・・」
「え? どこ、見せてみろよ」
そう言って彼女の手を取るしげる。
普段のしげるからは予測もつかない行動だった。
今日子は嬉しさと恥ずかしさで真っ赤になっている。
手を取り合っている二人をガリ勉の大木が目ざとく見つける。
「いい雰囲気作ってるな、しげる」
慌てて手を離す二人。
千恵と佐智子が大木に注意する。
「こっちの打合せに集中してよ、大木君!」
「はーい、分かりましたよ」
大木がふざけるように言いながら打合せに戻る。
この日、この時間の出来事。
しげるに手を握ってもらえた事が、今日子には忘れられない思い出になるのだった。
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