第五章 襲撃
風太達を乗せたトラックの一段は都庁に向かって順調に進んでいたが、車内の雰囲気はどんよりと思い雰囲気に包まれていた。
先ほどの通信のことが頭から離れないからである。
「隊長、間もなく都庁に到着します」
「わかった」
それっきりまた車内は沈黙が支配した。
そして、一団が都庁まで後三百メートルほどまで来たときにそれは起きた・・・
突然都庁正面が爆発によって吹き飛び、その直後!
「まだいたぞ〜!」
「殺せ!」
「獲者だ!」
なんと、暴徒が凄まじい勢いで都庁内部へと突入していったのである。
「な・なに!」
一団の先頭にいた装甲車両の隊員はすぐに近藤へ無線連絡を入れた。
『隊長!た・大変です!司令部が暴徒に攻撃されています!』
その報告に近藤は顔を青くした。
「な・なんだと!」
『ま・まずい!』
「どうした!」
『暴徒の一部がこちらに向かってきます!』
「くそったれ!仕方ない、責任は私がとる!攻撃しろ!」
『り・了解しました!』
隊員は多少ためらいおの声をあげながら、暴徒に向けて攻撃を開始した。
人間が人間を殺すということは並大抵のことではなく、精神的なダメージがはかしれないのである。
しかし、いまの異常な状態が人を殺すことへの罪悪感を薄らせていた・・・
それほど異常な世界と化しているのである・・・
「全車後退せよ!先頭車両は後退しながら足止めをせよ!」
『了解!』
近藤の指示で全車両が一斉にバックし始めた。
最前列の装甲車は、途中で方向転換をして先行し、退路を確保したのち後方車両にその旨を報告すると、その場で周囲の警戒に入った。
方向転換中の味方に攻撃されるのを防ぐために。
各車両は素早く方向転換を行い、速やかに撤退をしていった。
一方、都庁最上階臨時作戦司令部では、突然の襲撃に慌てることなく澤田が次々と指示を出していた。
「暴徒の侵入状況は!」
『暴徒は一階から三階までを完全に占拠しています!』
「わかった、全小隊はただちに十階まで退避しろ!そこで半数づつで東西の階段を軸に防衛線を構築しろ!」
『了解!』
澤田の指示により全隊員が一体となって素早く行動を起こしていく。
三十分後、陣地構築完了の報告と同時に無線越しに銃声が響きわたって来た。
「状況は!」
『こちら東階段!今は抑えれていますが、数が多くて・・・ん?』
「どうした?」
『奴ら!先の救助班襲撃犯です!その証拠にロケット砲を持ってます!撃たせるなー!』
直後、凄まじい爆発音と共に震動がビルを襲った。
「おい!どうした!報告しろ!」
しかし、何度呼びかけても応答はなかった。
澤田は、最悪のケースが頭に浮かんだが、直後に無線に再び通信が入った。
『澤田1佐!聞こえますか!』
「聞こえるぞ!何があった!」
報告によると、ロケット砲を撃とうとしていた連中に集中射撃を浴びせて暴徒を倒した際、暴発を起こして天井部を撃ち抜いたというものだった。
『奴らの自爆で階段が塞がれたため、もう片方の階段の応援に向かいます』
「頼む」
澤田は暴徒が襲撃してきた際、一つの不安があった。
それは、部下が暴徒とはいえ生身の人間を撃てるのかということだった。
しかし、それは杞憂に終わった。
隊員たちはやらなければやられるということを身をもって経験していたお陰か、なんとか撃つことができたのである。
『こちら西階段!』
「状況は?」
澤田は先の報告で気持に幾分かの余裕が生まれていた。
『暴徒の数は多いですが、なんとか抑えています』
「よし、東階段の部隊が殲滅を完了した。今そちらに向かっているそうだ」
『了解!』
西階段での戦闘も順調と聞き澤田はなんとかなると考えていた。
しかし、ここで予想外のことが起きる。
『緊急連絡!暴徒の中に人間離れした能力を持った人間が!』
「なに!どんな奴だ!」
『耐久力は生身の人間と変わらないのですが、身体能力が・・・まずい!撃てっ!撃てーーー!』
直後、凄まじい銃声と悲鳴が響き渡って来た。
澤田はここにきて自分の油断を呪った。
案の定、連絡は途切れてしまった。
五分ほどして今度は東階段の小隊から連絡が入った。
『こちら東区担当班!応答願います!』
「こちら澤田!状況は?」
『西階段の小隊が全滅しています!!』
「くそ!」
澤田は近くにあった机を思いっきり蹴り飛ばした。
『・・・鈍器や刃物で殺されています』
「弔い合戦だ・・・君たちは急ぎ奴らを追え、こちらにいる部隊とで挟み打ちだ」
『了解』
澤田は通信を終えると、周囲の隊員に指示を出し始めた。
「これより挟撃作戦を始める、まず敵の進入路を限定するために東階段を潰す」
澤田は通信兵とその護衛の計五名を残し、残りの十五名で作戦区域へと向かった。
澤田は事前に監視カメラで暴徒の位置を確認。
どうやら、東階段を利用している輩はいないようだが、念のために澤田は東階段の破壊を部下である斉藤伍長に任せた。
「では行ってまいります」
「気をつけろ」
斉藤は部下二名を引き連れて東階段へ向かった。
暫くして、爆発音とともに震動が一瞬フロアを揺らしたことで、東階段の爆破を知らせた。
斉藤たちと合流したのち、西階段へと向かった。
階段に着くと同時に通信が入る。
最上階にいる部下からであった。
『澤田1佐、敵が二十八階に到達しました』
「了解した」
澤田達は近くの部屋から長机やパイプ椅子を持ってきて、臨時のバリケードを構築した。
「こちら澤田、準備完了」
『こちら追撃班、こちらも敵を視認。いつでも行けます』
そして、戦いの幕が上がる。
最初に現れたのは日本刀を持った青年であった。
しかし、その眼は血走っており、全身から殺気を放っていた。
「まだいたぁ!」
「殺せーー!」
「ひぃはぁーーー!」
次々と暴徒が現れ、澤田たちめがけて襲いかかって来た。
「撃てー!」
澤田の号令とともに一斉に隊員たちの銃から弾丸が吐き出される。
「ぎゃぁああー」
「ギャンギャンギャンギャン!!」
撃ち抜かれた暴徒は次々と断末魔の悲鳴をあげながら息絶えていった。
しかし、銃弾などものともせず、残りの暴徒が死んだ者たちを乗り越えて次々と襲いかかってくる。
「なんで引かない!」
隊員は撃たれても撃たれても逃げない暴徒たちに恐怖の念を抱き始めていた。
「追撃班やれ!」
『了解!』
直後、追撃班からの攻撃が開始され、暴徒は一気に鎮圧されていく。
しかし、暴徒はやられるだけではなかった。
「な・なんだ!」
暴徒の隙間を縫って、なにかが一気に距離を詰めて澤田たちに襲いかかった。
「報告にあった化けものか!」
それは一見人間のように見えるが、よく見ると腕と足だけが異様に発達しているという奇妙な体をしていた。
そして、西階段の小隊を全滅させた張本人であることを澤田は悟った。
「貴様らのせいで!」
直前で大きく飛び上がり、手前の隊員に向けて拳を振りおろそうとしている暴徒に澤田は容赦なく銃弾を浴びせた。
「ギャァアアア!」
全身を打ち抜かれた暴徒は撃たれた反動で失速し、バリケードの目の前に落ちた。
そして、戦闘開始から約十分ほどして敵は全滅した。
「ふぅ・・・」
澤田は思わずため息を漏らした。
暫くして、追撃班が階段を上って来た。
「お疲れ様です」
「そっちもな、被害は?」
「三名ほどやられました・・・」
「そうか・・・」
澤田と小隊長は歯を食いしばっていた。
しかし、そこへ悪夢のような通信が入る。
『1佐!応答願います!』
「どうした!」
『ぼ・暴徒の大群が再び都庁に侵入!先ほどの倍の人数がいます!』
「なに!」
澤田たちに緊張が走る。
『先ほどの奴らはたまたまあの人数で行動していただけのようです!』
先の戦闘での疲労や被害が大きかったせいもあり、これ以上の戦闘は不可能に近かった。
「仕方ない・・・コード・デッドエンド発動!緊急避難ヘリを要請!」
『了解!』
「総員!四十階へ退避!斉藤!階段を爆破!」
「了解!」
数分後、階段を爆破した澤田たちは四十階に移動した。
『一佐、三十分後にヘリが屋上に到着します』
「了解だ」
『続いて、暴徒ですが、ロープを使って階段を上ってきています』
「そうか・・・君たちもこちらにきて防御を手伝ってくれ」
『了解しました』
澤田たちの最後の戦いが幕を開けようとしていた・・・ |