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狂乱の宴
作:チーグ



第四章 希望にむかって


月姫の運転する車はエヴァ初号機並みの暴走を続けながら都庁へと向かっていた。途中道が塞がっていたら迂回していたが、道を塞いでいるのがゾンビの場合は猛スピードで突っ込み、普段からは想像できない程素敵な雄叫びをあげながらひき殺していった。
一方助手席の風太はあまりにも危険な運転に悲鳴をあげたりしながら取っ手を必死に掴んでいた。
ちなみに平均速度90キロで狭い道を走り抜けている。
まさに破竹の勢いで都庁へとばく進していった。
ところが、都庁まであと七キロほどの大通りで運悪くゾンビの集団に出くわしてしまった。
その数約100体、さすがに車でひき殺すにしても無理がある。
しかも、迂回しようにも迂回できそうな道がなかった。
「どうしよう・・・」
月姫は普段の口調にもどって風太に問いかけた。
「どうしましょう」
風太は急に普段通りの月姫に戻ったことに軽い不満を抱きつつも返事をした。
二人はとりあえず来た道を戻ることにした。
そして月姫がギアをバックに入れた時、どこからかヘリコプターのプロペラ音が聞こえてきた。
「もしかして!」
二人は大急ぎで車から降りて空を見上げた。
数分後、二人の上を一機のヘリが通過した。
風太はダッシュボードに入っていた発煙筒に火をつけて声を出しながら大きく手を振った。
「おーい!こっちだ!」
すると、ゾンビたちの上空を旋回していたヘリのパイロットが気がついたのか二人の元へ駆けつけてきた。
そして二人の真上にくるとスピーカーから声が聞こえてきた。
『今無線で救援部隊を呼びました!申し訳ありませんがここは危険なのでここから一キロほど離れたところにある中学校に向かってください!』
風太は両手で丸を作って合図をした。
それを見たのか、ヘリは急速に離れていた。
「行きましょう!」
「うん!」
月姫は来たときの二倍の速度で走り始めた。
それに比例して風太の悲鳴も二倍になった。
風太の案内をもとに中学校に向かった。
月姫の驚異的な運転技術のおかげか、わずか五分で目的地に着いた。
「は・速ぇ〜」
「私に不可能はないわ!」
月姫は車をグラウンドに移動させると車を止めた。
「どれぐらいできてくれるかな?」
エンジンを切ると同時にスイッチが切り替わったのか普段の月姫に戻った。
「さすがに五分じゃこないでしょう」
そう言った瞬間自分たちの入ってきた正門前に装甲車が止まり、後ろにはトラックやジープが追随していた。
「来たみたいね」
「ふつうこういう場面だともっと遅くに来ない?」
拍子抜けしている風太をよそに、自衛隊員たちが車に近づいてきたので二人は荷物を背負って外に出た。
「大丈夫ですか!」
「はい、二人とも大丈夫です!」
風太が答えた。
「どこか噛まれたり、引っかかれたりしていませんか?」
「大丈夫です」
「私も」
自衛隊員は念のため二人の体をじっくりと観察し、嘘ではないことを確認すると口を開いた。
「失礼しました、奴らに傷をつけられるとウイルスに感染してしまうので」
「いえ、気にしてませんから」
「ではトラックへと案内します」
二人は自衛隊員に囲まれながらトラックへと移動していった。
トラックのところに着いたところで風太は案内してくれた自衛隊員にひとつ言い忘れていたことを思い出した。
「すみません」
「はい?」
「実はその・・・ゾンビだけが敵じゃないことはご存知ですか?」
「!すみません詳しく聞かせてくだ・・・」
その時、後方から銃声が響いた。
「どうした!」
『大変です!一般人が武器を持って襲ってきました!』
「なに!」
風太と月姫は暴徒が来たことを悟った。
「さっき言いたかったのはこの事です!彼らは事件のせいで正気をなくし、目に見えるものすべてがゾンビになっているんです!」
「な!」
それを聞いた自衛隊員は絶句してしまった。
しかし、すぐに気を取り直して無線連絡をいれた。
「小池から三尉!応答願います!」
どうやらこの人は小池というらしい。
『どうした!』
「実は!」
小池は風太から聞いた詳細を素早く伝えた。
「どうしますか!」
『化け物でない以上攻撃は許可できない!とにかくここは一旦引く!全隊員に通達攻撃は禁ずる!ただちに撤退せよ!』
風太たちは急いでトラックに乗り込み、小池もトラックの助手席に乗り込むと全車両が一斉に動き出した。
近藤は最後尾の装甲車に連絡を入れた。
「三宅!聞こえるか!」
『はい!聞こえます三尉!うわっ!くそ!離れろ!』
「どうした!」
『何人かに取りつかれました!』
「やむを得ん!振り落とせ!」
『了解!』
会話終了後、後ろのほうから甲高い音が響いてきた。
恐らく蛇行して振り落としているのだろう。
『三尉!振り落としに成功しました!奴らも追撃を諦めたみたいです!』
「了解した。引き続き後方警戒に当たってくれ」
『了解しました』
近藤は肩の荷が下りたのか、深いため息をついた。
「三尉いかがいたしますか?」
となりでジープを運転にしている隊員が聞いてきた。
正直近藤も困惑していた。
今まで本部から何度か通信が入っていたが、あのような集団に関する報告はなかった。
よく考えれば暴徒がいてもおかしくはないが、なぜ今まで報告されなかったのかが気になった。
「とにかく暴徒について知っているという一般人から話を聞こう」
そう言うと、近藤は無線で小池を呼び出した。
「こちら近藤、小池一等兵応答せよ」
『こちら小池、なんでしょうか?』
「先ほどの一般人に先ほどの暴徒について詳しく聞きたいから、どこかでこちらのジープに乗せたい」
『了解しました、場所はどこにいたいますか?』
近藤は地図を広げた。
すると、都庁につながる大通りがあった。
「この先にある大通りで行う」
『了解』
そこで無線を終了した。
しかしそこはさっきまで風太たちがいた大通りだった。
暫くして、先発隊が大通りに差し掛かった。
『近藤三尉!大変です、ゾンビの大群が道をふさいでいます!』
「なに!しかたない!攻撃を開始しろ!」
『了解!』
直後、先発隊の装甲車に備え付けてある機関銃がゾンビを次々と撃ち抜いていった。
さらに、装甲車から降りた兵士からの手榴弾やロケット砲によりゾンビは完全に殲滅ができた。
「近藤三尉、ゾンビの殲滅に成功、安全確保完了しました」
『了解した』
暫くして近藤三尉達の乗ったジープが大通りに着いた。
そして小池に命令して風太と月姫を自分のジープに乗せると、先ほどまで乗っていた自分の部下を小池のトラックに移動させた。
これは単純にジープの定員の関係上しょうがないことであった。
近藤はその後すぐに部隊を都庁に向かわせるよう指示を出す。
「初めまして、私はこの部隊の指揮官で近藤勇いさむという」
「林風太です」
「雪里月姫です」
簡単な自己紹介の後、近藤は早速質問を始めた。
「先ほど中学校で襲ってきた連中を前々から知っていたというのは本当ですか?」
「はい」
「本当です」
「そうか・・・実は今のところ暴徒に関しての報告が入っていないんだ」
その事実を聞いて二人は驚いた。
あれだけ派手に暴れていた奴らが今だに見つかっていないなんて・・・
「そんな・・・」
「とにかく、このことは上に報告しなければならないから詳しいことを教えてほしい」
「わかりました」
二人は今まで体験したことすべてを隠さずに近藤に伝えた。
近藤は話を聞いて顔をしかめている。
「・・・ありがとう、ご協力感謝します」
一言お礼をいうと近藤は無線機を取り出して司令部に連絡をいれる。
「こちら近藤、澤田1佐応答願います」
『こちら澤田、どうした?』
「先ほど救出した市民からの情報で、暴徒の存在が確認されました」
『なに!そんな報告今までなかったぞ!』
「はい、ですが事実のようです」
『・・・わかった、他の部隊にも報告しておこう。君はとにかく救助した市民を都庁の屋上まで誘導してくれ』
「了解しました」
近藤は無線連絡を終了すると再び風太たちの方に視線を向けた。
「とにかく私たちは任務どおり君たち一般人を都屋上で待機中のヘリで洋上の船に避難させます」
「わかりました」
二人はこればかりはどうしようもないと感じ、素直に従うことにした。
その後は特に障害もなく進み、都庁まであと一キロの地点まで着いたころ、一本の通信が入った。
『誰か・・・誰か応答してくれ!!!』
「こちら近藤!どうした!」
『謎の暴徒に急襲された!応援!応援を!うわ〜〜〜〜〜!』
そこで無線が切れた。
「おい!大丈夫か!おい!」
何度も呼びかけるが応答がなかった。
「くそ!こちら近藤!澤田一佐応答願います!」
『こちら澤田!どうした!』
「救出部隊のいずれかが先の暴徒に急襲されたもよう!至急応援を!」
『まて!何班とは言わなかったのか?』
「かなり緊迫していたらしく・・・」
『わかった!とにかく急いで都庁に来てくれ!詳細を聞きたい!』
「了解!」
近藤は部隊の進行速度を早め、急いで都庁へと向かった。
しかし、彼らに少しずつだが確実に魔の手が歩み寄ってきているのであった。












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