狂乱の宴(1/6)縦書き表示RDF


急に作品消去してしまい申し訳ありませんでした。
置換した部分のみを消すつもりが作品すべてを消してしまっていました。
以後気をつけていきます。

狂乱の宴
作:チーグ



第一章 逃亡


ひっそりとした裏路地を走っている二人の男女がいた。
一人は高校生くらいのまだ幼さの残る顔立ちをした若い青年、もう一人は同い年か少し年上ぐらいの女性であった。
二人は息もとぎれとぎれになりながらも必死になって路地を走っていた。
二人が路地を走っているのは、二人を追いかけてくるものから逃げているためである。
その者はうめき声をあげながら二人を追いかけていた。
もし、ここに第三者がいてその追いかけているものを見たら迷わずこう叫んでしまうだろう「ゾンビ」と・・・
二人は必死に走っていた。
「ハァっ・・・ハァハァ・・・がんばれ!」
走っている二人の内の青年のほうが女の子に向かって叫んだ。
「私は・・・まだ、大丈夫・・・」
女性はとぎれとぎれになりながらも返事を返した。
二人を追いかけてくる者は、最初は一人だった。
しかし、逃げるうちにその数は一人二人と増えていき、今では数十人にまで膨れ上がっていた。
狭く入り組んだ路地にいる数十人は、追いかけられている者にとっては数百人もの数に追いかけられているような錯覚を起こしてしまう。
しばらく走っていると、二人の前に突如一つのドアが現れた。
二人は迷わずドアノブを捻ってドアを開けて中に入ると鍵をかけた。
さらに二人はそばにあった机やら椅子やらを積み立てて即席のバリケードを作った。
暫くして、追いついてきた者たちがドアを叩くが、幸いにもドア自体が非常に堅固な作りになっていたためビクともしなかった。
二人は暫く呆然としていたが、疲れが一気に出たのか二人同時に床に座って息を整え始めた。
「助かったの?」
女性がおもむろに問いかけてきた。
「多分・・・」
青年はあいまいな答えを返した。
またしばらく無言が続き、聞こえてくるのはドアを叩く音と二人の息遣いのみだった。
暫くして気持に余裕ができたところでお互いのことを紹介することになった。
「あ・・・自己紹介がまだだったわね。私は雪里月姫、粉雪の雪に郷里の里に月と姫と書いてユキザトゲッキ。よろしく」
「僕は林風太、森林の林に風と太鼓の太と書いてハヤシフウタです」
「そういえばまだお礼言ってなかったわね」
「え?」
「私が囲まれそうになっていた時に助けてくれて本当にありがとう」
月姫は軽く頭を下げた。
「どういたしまして」
風太は月姫が道端でゾンビに囲まれそうになっているのを助けた後、彼女の手を引きながら逃げてきた道中を思い出していた。
その後、二人はしばらく自分のことや家族のことなどについて話し合った。
月姫は岐阜県から今いる東京に上京してきて今は一人暮らしをしている大学一年生で、風太は東京の出身で地元の公立高校に通う高校三年生であることなどを紹介し合った。
一通りの自己紹介が終わった後、二人はこの後どのようにしてここから逃げ出すかを考えることにした。
逃げ込んできた当初は混乱していたこともありここがどこかわからなかったが、車庫ほどの大きさの部屋と周りに積んである荷物の量からしてなにかの倉庫であることがわかった。
風太は何気なく箱の中身を見るべく、箱の封を開けてみた。
するとなかにはガス式のライターの補充用ガスボンベが大量に入っていた。
その隣の箱にはジッポー用のオイル缶が入っていた。
「・・・ここはアウトドア用具を売っているマウンテンの倉庫か」
風太はこの倉庫が自分の地元にあるサバイバル用品店マウンテンの店の倉庫であると確信した。
「そうなんだ・・・私は普段ここら辺には来ないから知らなかった」
「じゃあなんでこっちに?」
その言葉に月姫の体が一瞬ビクッと反応した。
「友達がこっちに住んでてね、たまたま遊びに来てたの」
風太はまずいことを聞いてしまったと後悔したが、ここで会話を中断したら余計気まずくなると思い思い切って続きを聞くことにした。
「その友達はどうしたんですか?」
「途中ではぐれちゃったの、携帯にかけたけど出なかった」
「そうですか」
「風太君の両親は無事なの?」
ここで急に切り返されて風太は焦った。
「え!あ・いや、その・・・両親は二年前に事故で亡くしまして、今は親戚の援助を受けながらこっちで一人暮らししてるんです」
その話を聞いて月姫は驚いていた。
「実は私もなの・・・」
「え?」
「私も両親を亡くしてるの事故で・・・」
二人の間に重い空気が流れた。
お互いにまずいことを聞きあってしまったため二人は必死に話題を変えようと頭を働かせたが、なかなか良い案が浮かんでこなかった。
その時、風太の目にガスボンベとオイル缶が飛び込んできた。
最初は何気なくそれを見ただけだったが、突然ひらめいた考えが頭いっぱいに広がった。
「そうだ!」
月姫はその声にびっくりして思わず飛び上がってしまった。
「ど・どうしたの?急に」
それに答えず風太はガスボンベ三本を近くの棚に置いてあったガムテープでオイル缶にくくりつけた。
そこにきて、月姫は風太が即席の爆弾を作っていることに気がついた。
ところが、くくりつけたところで風太の手が止まった。
「どうしたの?」
「点火装置をどうすればいいか考えてなかった」
風太は肝心の点火装置のことを考えないまま作っていたことに、月姫はあきれてしまった。
「肝心な部分が考えてないじゃだめじゃない」
「面目ないです・・・」
風太と月姫は点火装置に何を使うか必死に考えた。
しかし、なかなかいい考えは浮かばず時間ばかり過ぎて行った。
一時間ほど過ぎたところで、月姫からある案が出た。
「ねぇ、ここって花火売ってる?」
「季節関係なしに売ってますよ」
その言葉に月姫は疑問に思った。
「季節関係なしに?なんで?」
「ここの主人、花火が大好きで日曜の夜なんか一人で花火をやって盛り上がってるほどで・・・」
「じゃあここ2B弾ある?」
「もちろん売って・・・あ!」
そこで風太は月姫の考えていることがわかった。
2B弾とは、本体の下部に付いている着火火薬の部分をマッチの箱で擦って着火させた後、約十秒の間を持って爆発する手榴弾に似た細長い花火のことである。
二人はかたっぱしから箱を開けて中身を確認していった。
半分近く開けたところで風太が目当ての物を見つけた。
風太はオイル缶のキャップを外すと、別の箱に入っていた薄手のタオルを引き裂いたのを巻きつけることで太さを増させた2B弾を無理やりオイル缶に差し込んで固定し、さらに缶の口の部分にビニールテープを巻いて中からオイルが漏れないようにした。
「出来た!」
「一個じゃ足りないからもっと作ろうよ!」
二人は手分けして爆弾を作り始めた。
威力を増すためにガスボンベを追加したりするなどの工夫を加えたりしながら作ること一時間、作った数は十五個に達した。
「これだけあればなんとかなるでしょう」
「そうだね」
「でも、爆弾だけだと対処に困るかもしれないから他にも武器になりそうなのを探しましょう」
「そうですね」
月姫の考えはもっともであった。
爆弾は強力ではあるが、爆発するまでに時間がかかる上に下手をすると自分たちまで吹っ飛んでしまうかもしれないからである
そういったことから、爆弾以外の武器は必要になってくる。
再度箱を物色しようとしたとき、風太は既に開けた箱の中に武器になるものがあったのを思い出して月姫を呼んで、その箱の所までいった。
「これなんかどう?」
「いいじゃない」
二人の目の前にはロッククライミングなどでつかうピッケルが四本詰まった箱があった。
風太と月姫は二本ずつもつことにした。
さらに二人は、爆弾を半分ずつに分けると、近くにあった登山用の大きめのリュックに入れた。
風太は爆弾を入れる前に非常食のカンパンや缶詰に水をかさばらない程度に入れた後、その上に爆弾を入れ、ピッケルは両手に一本ずつ持ち歩くことにした。
月姫は、ピッケルを一本手に持ち片方は食糧と医療品と一緒にリュックに入れた。
準備ができたところで二人は移動することにした。
「行きますか」
「ええ」
二人はこの地獄から脱出するための一歩を踏み出した。












ケータイ表示 | 小説情報 | 小説評価/感想 | 縦書き表示 | TXTファイル | トラックバック(0) | 作者紹介ページ


小説の責任/著作権は特に記載のない場合は作者にあります。
作者の許可なく小説を無断転載することは法律で堅く禁じられています。




TOP | NEXT


小説家になろう