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作品リストは「月夜茶会」掲載の時間軸を元にしました。
作品リストとヒロインと内輪もめと
作:鷹嶺 綺羅


 でっちの助六の日記より

 夜のことだ。
 お店から買わされた賞味期限切れのキャットフードを肴にお酒を飲んでいたら、誰かが僕のネコ小屋のドアを開けた。
 「助六さん!」
 「あれ?誰かと思ったら綾乃ちゃん。どうしたの?―――ぐぇっ!?」
 そう。
 訊ねてきたのは綾乃。
 こんな夜に忍んできてくれるとはうれしいなぁ。と思ったのもつかの間、綾乃は僕の首根っこを掴んで小屋の外へ引きずり出した。
 「お店にいないと思ったら、こんな掘っ建て小屋に住んでいたなんて!」
 「掘っ建て小屋じゃないよ!」
 僕は抗議した。
 ちゃんと3LDKの立派な家だぞ?
 ドアって名前のムシロだって高かったんだぞ?
 「……3LDKって意味わかってます?」
 「3枚のレーザーディスクがならべられる規模、略して3LDK」
 「……」
 「で?どうしたの?」
 「あっ!それですそれ!」
 あきれ顔の綾乃はポンッと手を叩いた。
 「どうするんですか?」
 「何が?」
 「“小説家になろう”のページ、どれをどう読めばいいのかわかんないって抗議が!」
 「あれはご主人様のページ。僕の管理している“月夜茶会”は専用ページつくってあるもん。文句はご主人様に言って欲しい」
 「どうにもならないんですか?」
 「うーん。僕達にはどうしようもないのが現実だね。
 ご主人様だって気にされて、“月夜茶会”へのリンクは何度も後書きには書いているんだけど、さすがに作品数が数だけに無理があるよ」
 「あらすじに書き加えるっていうのは?例えばシリーズ第何話とか」
 「うん……それならご主人様に許可もらわなくても出来るけど。わかってもらえるかな……あ、ダメだ」
 「何故です?」
 「シリーズは“小説家になろう”と“月夜茶会”の両方の発表作品で成立しているでしょ?だから、これやると両方の読者が混乱する」
 「……だめ、ですか?」
 「だめ」
 「それでは、せめてお願いがあります」
 「何?」
 「あの小娘が出てくる作品をすべて削除してください」
 「小娘?綾乃ちゃんのこと?」
 「……ぐーとモップと、どっちで殴られる方がお好みですか?」
 「め、メイドのスキルまで身につけるとは……でもさ綾乃ちゃん。そんな文句ならご主人様にいうべきだよ。何で僕のトコに来るの?」
 「鷹嶺さん、また続きをどうするか躓いて発狂寸前なんです。部屋にいったら、“脱げ!それがだめならせめてバニーにでもなれ!”って襲われて」
 (こんな貧乳にバニーだ?ご主人様もかなりキてるな)
 「……なんです?」
 「ううん。なんでもないよ!とにかく、せめてここを借りて、作品の流れのおさらいしておこう。今、綾乃ちゃん達は高校一年生。シリーズ作品もすべてこの一年在学中に起きたことになっている。だから、現時点(平成19年3月20日時点)で時系列順に無理やり話数を割り当てて、それをリストにすると」
 「リストにすると?」
 「こうなるかな」


 「美奈子ちゃんの憂鬱」シリーズ全話(平成19年3月時点)
 (●小説家になろうのみ未発表、★完全未発表)


4月頃の事件
 第一話   壊れたココロ
 第二話   詩乃先生の憂鬱●

5月頃の事件
 第三話   怪談話はお好きですか?
 第四話   暴露話はお好きですか?
 第五話   お姉さんはお好きですか?
 第六話   何が原因!?
 第七話   お酒はお好きですか?●
 第八話   銃と中学生と小姑と●
 第九話   ケンカはお好きですか?●

6月頃
 第十話   呪われた姫神

7月頃
 第十一話  綾乃のお騒がせ体験搭乗記●
 第十二話  はっぴーばーすでぃ!
 第十三話  緑ちゃんの憂鬱●
 第十四話  熱血男はお好きですか?●
 第十五話  ショタコンお姫様はお好きですか?●
 第十六話  過去と赤提灯と雑談●
 第十七話  選びし乳●

8月頃
 第十八話  カップと嫉妬とお引っ越し●

9月頃
 第十九話  転校生は世界最強!●
 第二十話  最初のお酒と最後のお酒●
 第二十一話 最強騎士のお騒がせ初デート?★
 第二十二話 秋篠君の幸福? 災難?●
 第二十三話 ひみつのかなめちゃん ●
 第二十四話 刀と嫉妬と看板娘

10月頃 
 第二十五話 胸と着物とお茶
 第二十六話 未亜ちゃんの日記●
 第二十七話 南雲教諭のありがちな(?)災難●
 第二十八話 歯医者さんはお嫌いですか?●
 第二十九話 ホットなお味はお好きですか?●
 第三十話  水瀬、風邪をひく●

11月頃  
 第三十一話 演技と料理と大失恋
 第三十二話 暗黒の天使達
 第三十三話 僕たちの甘くせつないミッション
 第三十四話 悠理ちゃんの災難
 第三十五話 お嬢様達のナイトメア

12月頃
 第三十六話 白銀と小学生とドナドナと●
 第三十七話 がっこうのかいだん
 第三十六話 プリンセス・ワルツ
 第三十七話 副会長の割とヒマな一日
 第三十八話 子羊ちゃんのお願い 狼さん達の誤解

 3月頃
 第三十九話 桜と卒業式と独房と

 番外
 第四十話  プリンセス・クエスト!
(●小説家になろうのみ未発表、★完全未発表)


 「あれ?“小説家になろう”さんのページに収録されていない作品も」
 「うん。●がついてるのが“小説家になろう”さんのページ未発表作品。★は完全未発表だよ。しかもこの“小説家になろう”さんのページだからリンク張れないのも残念だね」
 「どうすれば見えるんですか?」

 「月夜茶会にアクセスしてもらいたい。アドレスは
  http://plaza.rakuten.co.jp/ayanominase/005001
 になる。
 他にも設定集「美奈子ちゃんの憂鬱Wiki」がある。こっちのアドレスは
 http://www28.atwiki.jp/ayano01/pages/1.html
 だよ。
 こっちは作品のアカシックレコード的存在だから、綾乃ちゃんは見ない方がいいけどね」
 「ふうん?……それにしても、上のリストですけど、「小説家になろう」さんでの発表が少なくないですか?四十話書いて二十一話が未収録、一話が未発表……いいんですか?」

 「しかたないよ。元々、このシリーズは僕が勤めていた会社の猫小屋で書き始めたのが始まり、つまり、“月夜茶会”より前からはじまっているんだもの」

 「結構、古いんですね」

 「そりゃもう。もう3年くらい前」

 「あら、もうそんなに?」

 「そう。去年初めて登録した“小説家になろう”さんの初登録作品は、確か三十五話目にあたるナイトメアだよ?
 これじゃ、順番もへったくれもない。
 長編は読者の利便向上を考えて何話か移設してるけど、これ以上は混乱するだけだよ」

 「うーん。じゃ、景気よく第三十五話から以降はなかったことで」
 「なんでそうなるの?」
 「これを発表したせいで私のメインヒロインの地位が危ういじゃないですか!」
 「だって、今年の秋、ご主人様と取引したんでしょう?」
 「鷹嶺さんと?」
 「メインヒロインの地位と引き替えに盤石のアイドルの地位が欲しいって」
 「う、ウソです!」
 「あれ?美月唯香ちゃんや他の新人アイドルに押されて人気が危ういって焦った挙げ句だって聞いたけど」
 「それは鷹嶺さんじゃなくて、あの骨董品店の女の子にだけこっそり告げたことで」
 「……」
 「どうしたのです?そんな死にそうな目で」
 「そのお店って、もしかして“天原骨董品店”?」
 「そうです。よくご存じですね」
 「あれ、水瀬のおばあさんだよ?あの人、ご主人様とは蜜月の関係だから、神音さんから言われたことなら、そのまんまシリーズに反映されちゃう」
 「……うふふっ。助六さんったら、ご冗談がお上手ですね」
 「本当だよ?ほら」
 手持ちのキャラクターリストを渡してあげる。
 綾乃ちゃんの顔が一瞬で凍り付いた。
 「あーあ。青くなってる」
 「や、やだ。あれは」

 神音「へぇ?アイドルとしての人気が危ういと?」
 綾乃「はい。オリコンでついにベスト5から脱落しちゃって、事務所も対策を」
 神音「ふぅん……ねぇ」(ずいと顔を寄せる神音)
 綾乃「はい?」
 神音「仕事って、そんなに大切?」
 綾乃「それはそうです。お仕事は、何をおいても大事なことです」
 神音「何をおいても?」
 綾乃「そうです」
 神音「ふぅん。じゃ、何をおいても大切なお仕事での成功がほしいということね?」
 綾乃「そうです」
 
 「思い出した?」
 「わざわざ書き出してくださってありがとうございました。けど、これが?」
 「だから、取引なんだって」
 「?」
 「神音さんは、“何をおいても”大切な仕事での成功を保証してくれたんだよ」
 「確かに、あれ以降、仕事は大成功続き。クリスマスイブのコンサートはアイドルコンサート史上の動員記録塗り替えでしたし、海外公演に映画にドラマ」
 「でもナイトメアの頃は仕事が」
 「あの時だけ、ガクンッて仕事がなくなったんです!びっくりしました。人がそんな思いしているのに、悠理君は浮気してるし、メールも携帯も連絡出来なくなるし」
 「さすがだな……日菜子殿下。神音さんが褒め称えるわけだ」
 「そう!あの女狐!ちょっと悠理君と近づいたからって、何ですか!?デートはする、全裸は見られる、抱きつく、キスする!」
 「水瀬を欲情させもするし……はっ!?」
 綾乃の怒りのボルテージがMAXハートです。
 これはまずい。
 「そうです……あの女狐、人の夫をたらし込むとは何事ですか?」
 「……人聞きの悪いこと言わないでくださいな」
 突然の声に振り返ると、そこにいたのは、
 「え?ひ、日菜子殿下!?」
 「なっ!」
 「助六様、ご機嫌よう」
 「は、どうも!」
 「……来ましたね。九尾の狐」
 「あの狐は桜井美奈子さんの使いサーヴァントでしょう?喩えというなら、それは言いがかりと答えます。―――全く、人聞きの悪い」
 「言いがかり?」
 (うっわー。睨み合い……コワ)
 「大体、何ですか?その後ろにいる人達の手にしているのは?」
 日菜子殿下の後ろ。メイドさん達が紙袋を抱えています。
 「お酒とおつまみです」
 「えっ!?」
 ラッキー!!
 早速熱燗で!
 「助六さん!賄賂を受け取る気ですか!?」
 「賄賂?何のことです?作品を書き続け、さぞお疲れでしょうから、こうして労うのも、キャラクターの務めです。違いますか?」
 「それが賄賂じゃなくて何なんですか?―――あっ!まさかそうやってクリスマスイブやホワイトデーに!」
 「何のことですか?」
 つんっと突っぱねる日菜子殿下。さすがツンデレと呼ばれるだけある。
 貫禄が違う。
 「クリスマスイブ、ヴァレンタインデー、それにホワイトデー。すべてイベントやコンサートでお忙しかったのはあなたの事情でしょう?」
 「か、関係ないです」
 「それに、あなたの事務所は宮内省とも繋がりが深いのです」
 「ど、どういうことです?」
 「宮内省の所有する株式には、あなたの事務所の株もあるのです。言い換えれば、私はあなたの事務所の株主。その従業員が株主にケンカを売るとは何事ですか?」
 「くっ……」
 「私は正々堂々、水瀬にデートを申し込んでOKしてもらったのです。水瀬が拒むことはありませんでした。それを権力の濫用のようにいうとは何事です?」
 「あなたが自覚していないだけでは?」
 「あら?今度一緒に美術館巡りするんですけど、申し出は水瀬の方ですよ?」
 「なっ!?」
 「しかも泊まりで―――きゃっ(はぁと)」
 「なっ、なっ!」
 「ち、ちょっと殿下?」
 さすがに止めました。
 「何です?」
 「そ、それ―――むがっ!?」
 殿下は突然、僕の口を鷲掴みにするなり、耳元へささやきました。
 え?
 そこまでして下さるのですか?
 ええっ!?ほ、本当に!?
 よし、任せて下さい!殿下!
 プロットも何もありませんけど、書きましょう!
 「これはもう決定事項ですよね?助六様?」
 「はいっ!」
 「う、嘘です!何か裏取引が!」
 「だから、いいがかりです。なにより」
 殿下は勝ち誇った目で言いました。
 「あなたは、ヒロインとしての地位より、アイドルとしての成功を選択したのでしょう?」
 「し、していません!アイドルやってるヒロインとしての成功を望んでいます!」
 「上はそう判断してませんよ?」
 「上?お上はあなたでしょう!?」
 「……この場合、上とは作者のことです」
 「鷹嶺さんが!?」
 「そう。あなたは神音さんの前で、シリーズのメインヒロイン、つまりはいずれ水瀬の妻となる女性という、定められた地位を自ら放棄したのです。あなたはそれに気づかず、水瀬を従わせることに汲々としてばかり。大体、ナイトメアまでのあの態度。何ですか?特に十九話。水瀬がああも冷たい態度に出るのは当然です。女として恥ずべき態度だと、そうは思いません?」
 「だ、だって……ですけど」
 「あなたはメインヒロインの地位を追われたのです。今や、美奈子さんや私と同じ立場。そして、水瀬の中における女性としてのランク付けだって、風間中尉はともかく、私より下なのは確実」
 「嘘です!」
 「本当です。設定がそうなっています」
 「私がこんな貧乳に!?」
 「ひ、貧乳はお互い様でしょう!?」
 あーあ。お互い響く所へ。
 「私はこれでも80は余裕でオーバーしてます!三十三話であんな無様なサイズを公表したあなたに比べれば!」
 「ぶ、無様!?それこそ関係ありません!胸で女がはかれるはずが!」
 まぁ、洗濯板2枚並べてどっちが凸凹してるかって聞かれた方が答えやすいなぁ。
 「何か!?」(×2)
 「いえ何でも」
 危なかった。
 「読者の方々は、いまだに私がヒロインだと認識して下さっています!世論こそが正義です!」
 「それは秋までの流れ。ナイトメア発表で、流れは変わったのです。これ以降は、私がメインヒロインとしての地位を獲得してみせます」
 「あり得ません!大体、こんな話を掲載すれば、読者が混乱するだけです!」
 「この話は、これからは流れが変わるという、いわば宣言です」
 「宣言?」
 「そう。あなたがもうメインヒロインとして安穏としていられないという。それはこの作品に恋愛要素がはっきり加わるという意味でもあります」
 「あなただってかなり」
 「作者の中におけるヒロイン競争、私が現在トップ独走中です。―――あなたは脱落寸前」
 「なっ!鷹嶺さん、裏切ったのですか!?」
 「あなたが悪いのです。あなたが動かなないから、作者の中のあなたへの熱意も醒めていく。……ライバルとして申し上げましょう。もっと努力なさい。作者の中で動くのです。それでもあなたは私のライバルですか!」
 「いつの時代のスポコンマンガですか!そんなこと言って!どうせあなたのことだから、魔導師でも使って鷹嶺さんを洗脳させたのでしょう!?」
 いや。違う。
 僕は知っている。
 作者の心変わりが、日菜子殿下のモデルになった某キャラの初の笑顔にあることを。
 あの陛下がたった一コマ見せたあの笑顔が作者を洗脳したといえばそれまでだが。
 ご主人様、本当に何も考えてないからなぁ。
 「何のことです?」
 殿下も怒っちゃってる。
 「とにかく、私は正々堂々、体を張って戦い、今の地位があるのです。今までのあなたのように、与えられた社会的地位に甘んじるつもりはありません。それに、あなたにはお仕事を山程差し上げたじゃないですか。ささやかな引導ですが、どうぞお受け取りやがりませ」
 「あ、あなたの仕業だったのですね!?」
 綾乃が殿下につかみかかるが、メイド達に押さえつけられる。
 「は、離してください!」
 暴れるけど、多勢に無勢、どうにもならないな。
 まったく、この二人、「美奈子ちゃんの憂鬱Wiki」ちゃんと読んだのかな。
 ネタバレでご主人様が密かな野望を明らかにしてるのに。
 「なんです?それ」
 だからさ?二人とも、シリーズの最終的ヒロインにはなれないってこと。
 ……あれ?
 僕、独り言言ってたつもりなんだけど……?

 ち、ちょっと二人共!?

 「シリーズの最終的ヒロインって……誰ですか?」
 ビシンッ!
 綾乃ちゃん、いつの間にムチなんて!?
 や、やめて!僕は下請けなんだから!

 「綾乃さん。やめなさい」
 
 そ、そうです!殿下、助けてください!
 
 「栗須、自白剤の投与を」
 
 そっちの方が厄介だって!

 「だめです。後遺症が残ります」

 ムチもいやぁぁぁっ!

 「軍隊流の拷問は楽しいですよ?」

 動物愛護団体に電話してぇぇぇっ!!

 「仕方ありませんね……栗須、メイド流で助太刀を」

 僕痛めつける前に「Wiki」を読んでよぉ!

 (PCでWikiを読む二人)
 
 そ、その前に僕を三角木馬から降ろしてよぉ……。

 「な、何でこの女が……」
 綾乃は真っ青。
 「に、人間でもないのに」
 日菜子も呆然。
 
 で、でもさ。この人がヒロインになってる時、二人とも生きてはいないはずだし、ご主人様、そこまで話を続けられるはずも……。

 「いえ!」
 綾乃が叫ぶ。
 「これで私の優位が確定しました!」
 へ?
 「彼女は私の半身ともいうべき身!なら最後は私が!」
 いや、正しくは君が彼女の半身というべきで、しかも君、裏設定ではそうなると……。
 「何か!?」
 いえ。
 
 「まぁ、いいんじゃないですか?」
 あれ?殿下?
 「あら?もう敗北宣言ですか?で・ん・か?」
 「私は、今の水瀬に愛されればそれでよいのです」
 「あら。投げやりですこと」
 「だって、このキャラ。子供作れないのでしょう?なら、愛の結晶たる子供を作るのは私がいただきましょう。あなたはこのキャラと共に石女(うまずめ=子供の産めない女性)にでもなって永遠にいればよいのです」
 「そ、それはそれでイヤな気が」
 「このキャラは人間ではないので、そのヘンはどうでもいいのかもしれませんし」
 「ら、埒があきません!こうなったら鷹嶺さんに直談判してやります!」
 「栗須。近衛に緊急連絡。作者の身辺警護。近づく敵はすべからく排除。瀬戸綾乃は最優先攻撃目標。抵抗するなら二度とお日様の下を歩けない体にしなさい」
 「それで、念のため」
 栗須さぁん。……助けてぇ……お尻とおまたが痛いよぉ……。
 「綾乃さんのご実家へ連絡いれまして。すぐに御母様が」
 ギクッ!
 おーお。綾乃が真っ青に。
 「ふふっ。よくやりました栗須」
 「恐れ入ります。それでは殿下」
 がしっ!
 栗須率いるメイド達が日菜子を羽交い締めに。
 「ど、どうしたのですか!?」
 「麗菜殿下からの勅命です。お話があるので、速やかに連れてこいとの由」
 「ちょっ!?く、栗須!?そんなことされたら私がどんな目にあうか!」
 「はい。存じております。コトが済み次第の殿下の看病は我らが命に代えても」
 「その前に終わってしまいます!」
 
 「ううっ……水瀬ぇ。お前のせいだぞ。さっさとどっちか本命にしないから」

 「そういえば悠理君は?」

 「パラレルワールド」

 「パラレルワールド?」
 「ほら。君達が大暴れしたことになってる“プリンセス・クエスト”の世界。祷子さんとの新居のある」

 「なっ!」
 「えっ!」

 おや?二人がお互いの顔を見たぞ?

 「綾乃さん?殿方が現実世界から逃げ出すなんて、あってはいけません」
 「はい。天誅が必要です」
 ガシッ!
 二人はダイヤより硬い握手を結んだ。
 やる気!?
 「さぁ、行きましょう!」
 「ええ」
 逃げようとしたけど、ダメだった。
 「助六さん?パラレルワールドへの入り口はどこです?」
 ……そこです。

 周囲から逃げるように旅立つ二人を呆然とした顔で見送ると、栗須さんに解放してもらった僕は、隣の家のドアを叩いた。
 トントン
 ガチャ
 「あら?助六さん」
 ドアから顔をのぞかせてくれたのは祷子。
 「どうしたのです?」
 家に入った僕は、祷子にさっきの話をした。
 「まぁ―――クスッ」
 「おかしいこと?」
 「二人とも、本当にその男の子のことが好きなんだなぁって」
 「うん。君の記憶が戻せればいいんだけど」
 「?」
 「ううん。それだとあの二人を登場させた意味がないし」
 「いろいろ、あるんですね」
 「うん。―――あっ!」
 忘れてた。
 パラレルワールドからの帰り方。
 あの二人、無事に帰れるかなぁ。

 「はい。助六さんの大好きなマグロのぶつ切りわさび付き青葉巻き」
 「お酒もね?」

 ま、こいつを食べて忘れることにしよう。

 おや?

 あーあ。

 パラレルワールドから逃げ出して来たのは水瀬か。

 パラレルワールドの水瀬と綾乃&日菜子コンビにやられたらしいな。

 ボロボロだ。

 「どうしたの?」祷子に訊ねられるけど、教えてたまるか。
 「ううん。何でもない」

 ふん。

 主人公のクセに楽したいと思うからだ。

 ざまみろ。

 僕は祷子の膝枕の上でお酒を飲み干した。

 うん。
 
 おいしい!
  


作者の法則。
「作品を制作すると役人が来て多額の金を奪い去られる」
 これも例外ではありません。アップ寸前で税務署が金持っていきやがりました。
 明日から10日間、作者が使える生活費は一日換算で千円ありません。これで三食その他賄わなければなりません。生きていくのがイヤになりました。
 











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