ブックリスト登録機能を使うには ログインユーザー登録が必要です。
アナザーのラストです
ゆっくりお読みください
Last Another Episode 桜舞い散る頃に……
春……

桜が舞い散る……

風に乗って舞う桜吹雪……


穏やかな春の陽射しが心地よい昼下がり
俺達は今、そんな情景を眺めながらお花見をしている最中であった。
明日から新たに始まる学校生活……
その鋭気を養うためなどと、大義名分を飛鳥が掲げ
皆が集まり開かれたちょっとしたイベント
最初は乗り気ではない俺ではあったが、この散り行く桜の光景を眺めていて
心が安らぎ、無常なる悲しさの中に幻想的な思いを感じずにはいられない。


「綺麗……だな」


ありふれた、けれど決して嘘偽りの無い本音の思い
毎日世話しなく日々が過ぎ去っていく中で
こんな静かな時間は、俺をセンチメンタルな気持ちへと誘って行くようだ


「あれからもう、一年も経ったのか」


それは一年前、俺はアメリカと言う広大な地から
この街、俺にとって故郷となる扇山へと帰ってきた。
それもなぜか、17歳という年齢で先生という役職に付くために……


「驚きの連続だったな。それにいろんな人々と再会し、新たな出会いも……」


慣れない仕事、生徒からの不審な目
だけれど、俺は誰かに引っ張られるかのように懸命に頑張った。
そして、その仕事を通して出会う人々……
数年振りの再会を果たした飛鳥と蓮
俺と似た境遇に悩んでいた奏
運命の歯車に乗せられ、運命的に出会う沙希と泉
お姉ちゃんのような伊織、橘、葉月お姉ちゃん
薫、須藤、佐藤………沢山の人々と俺は出会い、日々を駆け抜けていった。


「本当に、本当に忙しくて、辛くて……楽しくて」


思い出される、この一年の記憶
たった一年だけれど、大学時代の数字と格闘する時間とはまるで違う
充実した、何か心が満たされた……そんな一年だった
しかし、その中でも印象的だったのは


「麻衣さんとの、過去への葛藤」


俺は真実を知った
己が封じ込めた、忘れてはいけない思い出と記憶の事実を……
抱えていた過去の代償、真実に向き合うのが怖くて
大切な、掛け替えのないモノまで捨て去ってしまった自分
今から考えても、俺は馬鹿なことをしてしまったのだと良く思う
そんなことをしても彼女は喜ばない、彼女の死の代償にはなりはしないというのに……
数年間、あの事件から止まっていたままだった
頑張って勉強をし、様々な経験を積んでいったとしても
俺はあの日から、一歩すら前へ進むことすら出来なかったのだ
この街へとやって来るまでは……


「だけど、俺には大切な仲間がいたから……」


俺には飛鳥がいた、蓮がいた、奏がいた
過去を閉じ、忘れ去ってしまった俺でも信じてくれた沙希がいた、泉がいた
一緒に立ち向かってくれる、そう言ってくれる恭介がいた
俺は気づいていなかったんだ


こんなにも俺を支えてくれる人達がいることを……


こんなにも俺のために動いてくれる人がいるのだと
想って、考えてくれる人がいるのだと
だから俺は一生懸命生きていかなくちゃいけない
それに……


『私は、先生になることが夢なんだっ♪』


麻衣さんが残した、俺に残してくれたその思いを……


「さぁ……明日から頑張りますかっ!」


俺は雲ひとつ無い空に向け、明日に向けた言葉を放つ

明日から始まる、新しい生活

俺にとっては2年目となる時

何が待っているか分かりはしないけれど

日々をただ、一生懸命に生きていこう

それが俺に出来る最高の恩返しだと思うから……


こうして、サクラに未来と夢を乗せて、2年目のシーズンへと――――


「かっずやさ〜んっ!何、しけた表情してるんですか!お花見なんですよ〜!!
ドンドン飲まないとっ!」


綺麗に終わりたかったんだけどなぁ……
真っ赤な顔をして、俺へと突っ込んでくる委員長奏
言葉は明らかに呂律が回っておらず、明らかにアレを飲んでしまった雰囲気に
周りを眺めれば


「和弥……なんで、なんで私の気持ちに気づかないのよ〜!バカ、バカ、バカッ!」
「うわぁ〜凄いよぉ、カズちゃん!刻が見えるお〜」


良く分からんが、ずっと文句を言い続ける蓮とかなりヤバイ感じの飛鳥の姿が
お花見だから、ほんの少しくらいは……
その甘い考えがダメだった


「ふふっ……カズ、この頃私も体の発育が良く―――」
「沙希っ!?くっ付くんじゃないっ!止めろ、離れなさいぃぃぃぃいい!!」


頼みの綱であった沙希までもが、絡み酒というか
てんで使い物にならなくなってしまっている。
まるで、天国と地獄……上を見上げれば、サクラの姿が目に入り、晴れやかな気持ちになるが
ふと、冷静になれば地獄へ逆戻り……
現実逃避をしようと試みて、昔の事を振り返ってみたのだが
ただの時間の無駄だったようだ。

目の前にいる4人の女性

今はアメリカへといる我が妹、泉

今年もこいつらに振り回されるんだろうな……

そう思い苦笑い、多少の微笑みの意を込めながら


「助けてくださぁぁぁぁぁぁああいっ!セバスチャ――――ンっ!」


先ほどまで、そこにいたはずの専属執事へ向け、ヘルプを送ったのであった




某空港前


「………ふぅ、やっと来れたわ、日本に」


彼女は大きめの鞄を携え、初めて見る日本の空を眺めていた。
アメリカに比べれば、何か物足りなさを感じる国ではあるが
こじんまりとした空気は、なんとも言えない心地よさを感じないでもない。
空港を降りれば、飛び交う日本語……
彼女は日本に来た事実を己の五感を持って今、確認していた


「さて、いつまでもボーッと立ち尽くしている訳にはいかないわ。明日から学校も
始まるのだし」


少しの間、感慨深い思いに浸りながらも、彼女にはそれほど時間に余裕がないようだ。
持ってきた鞄の中から地図を取り出し、書かれた行き先の名を見つめる


「扇山……そして、私の通う扇山高校」


彼女の手に握られているのは、扇山高校の生徒手帳
そこには彼女の写真が貼り付けられ、正式な生徒であることを証明している。
学年には最高学年を示す、3の数字が……


「そして、アイツがいる場所……やっと、やっと会える」


彼女の表情は、可憐な少女が微笑む優雅な光景ではなく
標的を見据えたスナイパーのような、不適な笑み


「伝馬……和弥に」


彼女は一歩を踏み出した

彼に、伝馬和弥と出会うために

理由など分かりはしない

だけれど、確固たる意志と表情を向けて

様々な人達の思いを乗せ、幕を上げていく

新たなる日々の一ページが今、紡がれようとしていた………

キャラ紹介に続きます


+注意+
・特に記載なき場合、掲載されている小説はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
・特に記載なき場合、掲載されている小説の著作権は作者にあります(一部作品除く)
・作者以外の方による小説の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この小説はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この小説はケータイ対応です。ケータイかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。
小説の読了時間は毎分500文字を読むと想定した場合の時間です。目安にして下さい。